丸氏より膨大な投稿をいただいたが、膨大な返答を書く時間的余裕にかけるた め、いくつかの要点に絞って反論と見解を出すもので、丸氏の見解への反論がな かったから、丸氏の見解を容認したとかの理解はやめていただきたい。
まず「97年の消費税増税が」「97年以降の景気低迷と所得税・法人税の落
ち込み」に影響を与えたかどうかに関してであるが、元財務副大臣の峰埼直樹氏
によれば、97年を細かく4期に分ければ、97年1~3月は引き上げ前の駆け
込み需要で実質GDP成長率がプラスとなり、4月に消費税引き上げがあり、
4~6月期はその反動で大きな落ち込みが生じたが、7~9月期は元に戻ってお
り、消費税引き上げは景気に対しニュートラルとの見方を示している。(峰埼直
樹「民主党はなぜ消費税増税に舵を切ったのか」『世界』2012年3月号、岩
波書店)しかしその年の夏秋から内外の経済情勢が一変する。
7月にタイのパーツがヘッジファンドに空売りをかけられ通貨が暴落するとい
うアジア通貨危機が勃発し、インドネシア・韓国などに飛び火し、アジア諸国が
経済の大混乱を招き(韓国ではこの時の危機を朝鮮戦争以来の国難というようで
ある)、日本のアジア向け輸出産業が大きな打撃を受けることとなる。
さらに11月には日本の銀行などの不良債権問題が顕在化し、三洋証券・北海
道拓殖銀行・山一證券などが経営破たんすることとなった。
さらにBIS規制問題が生じた。BISとは国際機関である国際決済銀行であるが、
そこの取り決めで国際取引をする銀行は自己資本比率が8%なければならないと
いう国際規則があり(98年3月発効)、日本では金融庁が、国際取引をする大銀
行は自己資本比率8%・国内取引のみの中小銀行は4%を守るように銀行を厳し
く行政指導していた。バブル崩壊による不良債権問題や株価の暴落で、ほとんど
の銀行で大きく自己資本比率を割り込んでおり、銀行が金融庁の定めた自己資本
比率を回復させるため、融資の大幅削減の必要が生じ、多くの銀行が貸しはが
し・貸し渋りを精力的に取り組んだ。その結果、貸しはがし・貸し渋りを受けた
中小企業などの倒産が激増し、失業者が増大した。
さらに橋本政権は、公共事業の大幅削減もこの時期に行い、建設業従事者の失
業も増大させた。
上記のような97年の経済状況からは、4月に消費税増税後一時は景気が低迷
した。しかし、夏には景気が持ち直したが、秋以降のアジア通貨危機の影響・不
良債権による大銀行や証券会社の破産・BIS規制による銀行の融資の貸しはが
し・貸し渋りによる中小企業の倒産の激増・公共事業削減による失業者の増大と
いうように、消費税が景気後退の主要因ではなく、秋以降多くの経済状況を悪化
させる消費税に直接関係をしない経済要因が重なり97年以降の不況・税収減が
生じたと結論づけることができよう。
丸氏は詳しい97年当時の経済情勢を知らなかったかもしれないが、共産党・赤
旗はそれを知らなかったでは済まない話で、上記で述べたような97年当時の経済
情勢を知りながら、故意に隠ぺいし、97年の消費税引き上げで、景気が悪くな
り、税収減が生じたと主張するのは、ペテン以外の何物でもない。
次に、「97年の消費税増税」前後の比較においての公債発行額と歳出の増大
については、「景気対策のための財政出動」が大きな要因のひとつであろう点、
その他ここで私が述べた主要な点については(何も反論がないようなので)、日
本に福祉国家を氏も異論はないものと解してよいのであろうか?」に関してであ
るが、
このような不良債権問題の深刻化を受け、国会は98年7月から10月まで金
融国会を開催し、金融再生法を成立させ、不良債権処理のため銀行などへ約22兆
円の公的資金の注入がなされている。 ここでの問題は、不良債権問題はバブル
期の銀行の融資の焦げ付きが要因となっており、消費税増税は不良債権問題には
全く関係がない問題と指摘しておきたい。
次に「日本に福祉国家を氏が「消費税がデフレ不況下では消費・内需の縮小を
引き起こす」ということを暗に前提としながらその上で、“社会保障の充実が同
時に行われるならば”、消費税増税による消費・内需の縮小を相殺して上回る消
費促進・内需拡大効果が得られる、と主張しているように受け取れる。」
という丸氏の見解に関してだが、デフレ不況下の消費税増税が景気に悪影響が
あるかどうかは、経済学者でも見解が分かれるかもしれないが、私は小野善康教
授の「消費税増税自体は景気に悪影響を及ぼしません。」(小野善康『成熟時代
の経済学』 岩波新書、2012年、117ページ)の見解に依拠したいと考え
る。また、2月25日付け朝日新聞の記事では、世界的格付け会社ムーディーズが
「社会保障と税の一体改革」が遅れ、消費税増税ができない場合は、日本国債の
格付けを引き下げる意向とのことである。日本の国債の格付けが下がり、そこに
ヘッジファンドが日本国債への空売りを浴びせれば、ギリシャやイタリアのよう
な日本国債の暴落・金利の上昇という可能性も否定できない。
朝日新聞の記事によれば、今日本国債を大量に保有する日本の大銀行が国債暴
落対策を真剣に検討してもいるようである。今消費税増税をせず、財政再建へ方
向性を示せないという事態に遭遇すれば、世界の市場から日本売りが浴びせら
れ、極めて深刻な恐慌状況に陥る危険性も排除できない。また国連の専門機関で
あるIMF(国際通貨基金)からは、日本は早期に消費税率を15%まで引き上
げ、財政赤字縮小の方向性を示すべきという提言を受けている。世界のマーケッ
トからは、社会保障と税の一体改革が失敗に終わり、消費税増税が挫折した場合
は、日本に財政赤字解消に向けた方向性を示せないという評価が下されよう。
スウェーデンは、付加価値税(消費税)が1960年に税率4.2%で導入され、80
年23.46%・90年25%まで何段階かに分かれ増税されてきたが、福祉の
拡充と消費税増税がセットとして提起され、増税が確実に国民への行政サービス
の向上という見返りを国民が感じられれば、消費税増税が消費・景気に悪影響す
ることはないと考える。
税とは、北朝鮮のような軍事独裁国家でない限り、税の多くは国民の福祉や教
育など国民生活に還元されるものであり、スウェーデンのように消費税が25%
(食料などへの軽減税率あり)でも大学の学費が無償で、国民が学費を払う必要
がない国(公助)がよいのか、日本のように税負担は低いが、大学学費を多く国
民が自己負担しなければならない国(自助)か良いのかという選択の問題で、高
福祉高負担(大きな政府)か、低福祉低負担(小さな政府)かという選択肢の問
題となろう。家計にしてみればスウェーデン方式では多くの税を納め、その代わ
り家計が大学学費を負担しなくてよい。日本はその分を税として負担しない代わ
りに家計が学費を負担しなければならないという違いである。ただ日本の大学学
費は所得に関係なく均一料金で、年収1500万円の高額所得者にとって私学の
学費年間100万円はそれほどの負担ではないが、年収300万円の家庭にとっ
ては年間100万円の学費負担は極めて重いという逆進性が最も強いともいえ
る。ただ現在の日本の社会保障支出が高齢者に偏りすぎ、若い世代・現役世代へ
の支出がきわめて少なく、最近のワーキングプア問題のような若い世代の貧困に
対応する社会保障プログラムは生活保護ぐらいしか存在しないのも現実である。
(生活保護も所得の再分配という観点からみた場合重要な制度と言えようが)最
近生活困難者が急増している若い世代・現役世代向け社会保障の拡充も重要課題
であり、消費税増税がそういう人々の社会保障・生活保障の拡充に確実に結びつ
くなら、消費税増税が国民の暮らしを破壊するということはないであろう。
次に丸氏は「私と日本に福祉国家を氏の対立点は、社会保障充実の財源を確保
する上で、消費税増税を最優先の手段と位置づけるか否か、にほぼ絞られている
ことは明らかである。」また丸氏は「直接税である所得税・法人税の税収変動が
きわめて大きい」ということと、応能負担原則・累進課税制度・税における所得
再配分機能の後退、を放置・拡大していいのか、ということは分けて考えなけれ
ばならない。「直接税である所得税・法人税の税収変動がきわめて大きい」事を
持ってして、応能負担原則・累進課税制度・税における所得再配分機能の後退、
を放置・拡大することには必然性も整合性もない。むしろ、デフレ不況下での消
費・内需のいっそうの抑制・縮小を極力回避しつつ税収増を図る上では、応能負
担原則・累進課税制度・税における所得再配分機能の再確立・抜本強化こそをま
ずは優先しなければならないはずであろう。」と述べられている。
ここで、税の応能負担原則・累進性に関して検討したいが「人生前半の社会保
障の充実」を主張している著名な社会保障学者の広井良典千葉大教授の論は、
「消費税そのものに一定の逆進性があるとしても、その使途まで総合して考える
と、全体としてはむしろ中所得者以下の層に大きな恩恵があるという点だ。つま
り、たとえば1970年代頃までは政府支出に占める社会保障の比重が小さかっ
たため、富の再分配は(税率の累進性)による部分が大きかった。しかし現在で
は日本を含め先進諸国の政府予算の最大の項目は社会保障である。このため税を
『集める』段階より『使う』段階で強い再分配機能が働くことになる。これまで
の日本がそうだったように、消費税に反対して結果的に社会保障の充実を遅らせ
ることは低福祉となりかえって生活保障が弱くなる恐れがある。」(広井良典
「ポスト成長時代の社会保障」『世界』2012年3月号、岩波書店)とある。
広井氏の議論のように、昔社会保障の不十分な段階では所得の再分配は税で行
う割合が高く、税の応能負担の原則が強く求められたが、今日のように社会保障
が拡充し社会保障による所得再分配が大きな位置を占める中では、税の応能負担
の意味は相対的に低下し、福祉の充実した欧州福祉国家がどこも逆進性があると
いう消費税の税率が高くなっている。(消費税率スウェーデン・デンマーク
25% イギリス20% フランス19.6% ドイツ19%など)食料品など
軽減税率あり
OECDの貧困率データーでは、税を払い・社会保障給付を受けた後の貧困率が、
スウェーデン5.3%・フランス7.1%・イギリス8.3%・ドイツ11.0%に対し、日
本は14.9%に上る。(2000年代半ば)
貧困率データーを見る限りでは、税の応能負担の原則を踏み外し、逆進性が高
い消費率が高いスウェーデンの貧困率が一番低く、消費税率の低い日本の貧困率
がスウェーデンの貧困率の約3倍にものぼる。税の応能負担の意味が所得の再分
配であるとすれば、世界で消費税率が高いスウェーデンが最も平等で少ない貧困
率であり、消費税率の低い日本はスウェーデンの約3倍の貧困率にあり、広井教
授の主張は世界の貧困率データからも実証されている。税の応能負担の原則は、
社会保障による所得の再分配という問題を考慮すれば、消費税を否定する絶対的
理由には当たらないと考える。
次に法人税など直接税の引き上げは極めて難しい問題と指摘したい。共産党の
「消費税ストップ・社会保障拡充・財政危機打開の提言」2012年2月7日付でも述
べているが、「世界的な法人税引き下げ競争の有害性はOECDでも指摘されていま
す。各国に共通している財政赤字の問題を解決するうえでも、有害な法人税引き
下げ競争を止めることが必要です。」と書いているが、共産党も認めるようにい
ま世界では法人税引き下げ競争がし烈を極めている。その究極はキューバ近くの
西インド諸島に位置する英領ケイマン諸島で、法人税ゼロ・政府への年間法人登
録税600米ドルのみという究極の法人税回避地で、人口45000人の小さな島に世界
の多くの金融機関が登記上のみの本社を置き、世界34位の世界の金融センターと
統計上はなっている。 やはり法人税ゼロの国が存在すれば、世界の企業は登記
上だけでも本社を小さな島に移すことも企業はいとわない。共産党も認めるよう
に法人税の世界的引き下げ競争がある中で、日本だけ法人税引き上げをすること
は現実的でなく、結局財政危機の中で、社会保障拡充の財源を大幅に増やすには
消費税増税という現実的選択肢しか残されていないと理解するべきだ。
次に税収全体変動制・不安定性の問題であるが、財務省の税収データーで税収
の推移を確認したい。
2007年 法人税 14.7兆円 所得税16.1兆円 消費税10.3兆円
2008年 法人税 10.0兆円 所得税15.0兆円 消費税10.0兆円
2009年 法人税 6.4兆円 所得税12.9兆円 消費税9.8兆円
ちょうどリーマンショック前後の税収比較であるが、法人税収が2年で半減以
上しているのに対し、消費税収の落ち込みは小さく、消費税収がきわめて安定し
た財源であることは明白である。
丸氏は、「すでに97年の消費税増税時の事例でも見たとおり、税収全体が所
得・法人税収を含めて成り立っている以上は、そこに消費税を加味したとして
も、税収全体の変動性・不安定性は本質的に逃れようがない問題である。税収全
体を100パーセント消費税だけで担う(注、4)、という選択もあるのかもし
れないが(それでも、厳密に言えば消費の変動に伴う変動性からは逃れられない
だろう)、日本に福祉国家を氏も別にそういうことを言っているわけではないよ
うである。経済の変動性から隔絶された安定した税収、安定した財政、というの
は一つの理想ではあるかもしれないが、それはあくまで理想である。現代におい
て、経済・財政・税収は密接に関連するものであり、ゆえに、本質的にはこの三
者の安定性は一連・一体のものとして追及していかざるを得ないのではなかろう
か。税収・財政だけを切り離して考えようとすることに、そもそも大きな限界が
あるのではないだろうか?」かと述べられている。
企業活動でも・個人が預金などする際にもリスクの分散ということはよくおこ
なわれることである。例として、間接税収が減らないという仮定で直接税8割・
間接税2割の割合で直接税収6割減の場合は、税収全体で48%の税収減とな
る。仮に直接税2割・間接税8割なら、6割減でも税収全体の12%が減少するに
過ぎない。リスク分散の観点からは景気の影響を一番受け、税収が激変する法人
税や所得税の割合を減らし、消費税収の割合を上げることは、不況による税収の
激減・財政危機の影響を最小限化する一番の方法であり、税収の安定性こそ消費
税の一番の優位性でもある。
ここで美濃部革新都政(1967年から79年まで、社会党共産党支持による革新都
政)の経緯を見ておきたいが、美濃部都政の前半期は高度成長期で税収がうなぎ
上りに上昇し、それを財源に老人医療の無料化など福祉の拡充・住民サービスの
拡充を精力的に進め、選挙でも絶大の強さを美濃部氏は示したが、第一次石油
ショックで経済が大混乱し不況に突入し税収が大幅にダウンすることとなった。
(地方法人税は本社のある自治体で課税されるため、大企業の本社が集中した東
京都は法人税収のウエイトが高い。)
美濃部都政の終盤は、税収の大幅増に支えられた福祉などの拡充の結果、東京
都の歳出は大幅に拡大しており、そこに税収の大幅減が襲い掛かり、東京都財政
が未曾有の危機に陥り、計画していた学校や都営住宅の建設も滞り、最後には都
職員の賃金の捻出も苦労するようになり、予算編成は難渋をきわめてと聞いてい
る。このような革新都政の財政危機で美濃部氏引退後の79年の都知事選には社共
推薦で元総評議長の太田薫氏が出馬したが、保守の鈴木候補に敗れ、それ以降革
新都政は日の目を見ていない。
直接税に重心を乗せた財政構造では、美濃部都政のように景気任せの財政構造
であり、好景気の時は潤沢な税収に支えられ福祉や住民サービスの拡充など成果
を上げても、ひとたび不況による税収の急激な落ち込みになれば、深刻な財政危
機に陥りほとんど行政サービスの前進ができなくなり・行政サービスの後退も引
き起こし、都民・住民の革新自治体への支持を急激に失わせることとなったとと
理解している。
直接税・特に法人税に大きく依存した財政構造では、不況期には美濃部都政が
経験した財政危機による行政サービスの後退という事態を招来することとなるの
ではないだろうか。
常識的には好景気な時より恐慌・不況期の方が失業者の増
加などによる生活保護費の増加や失業対策費の増加など行政需要は拡大し、歳出
は増大するはずである。
ぜひ消費税増税に反対される丸氏には、美濃部都政の教訓を踏まえ、直接税依
存の税収構造で、恐慌・不況期の税収激減期にどのように行財政運営されるべき
かという見解をお聞きしたい。
次に丸氏は金融資産課税の問題も提起されているが、私は以前述べたようにど
のように金融資産を税務当局が把握し、タンス預金(今なら貸し金庫預金)を防
ぐのかの方法を編み出すことが必要であろう。現在所得税でクロヨン問題とよく
言われるように、自営業者などの確定申告の所得把握が十分に行われていない現
状からは、少ない税務署職員でどれだけの資産把握が可能か疑わしい。いずれに
しろ消費税増税は行なったうえで、金融資産課税は研究課題にすべきと考える。
次に丸氏からはスウェーデンなど欧州諸国での消費税引き上げの詳しい経緯へ
の質問があったが、詳しく述べるには一冊の本にもなるような膨大な分量に上る
ため、元スウェーデン大使の著書(藤井威『福祉国家実現に向けての戦略―高福
祉高負担がもたらす明るい未来』ミネルヴァ書房、2011年)を御参照いただきた
い。元財務官僚の著者がスウェーデンの消費税引き上げ過程と社会保障の充実過
程が財政経済状況も踏まえながら詳しく述べられている。
次に円高問題だが、丸氏は「円高の大きな要因の一つは日本のデフレ、より正確
に言えば、日本以外の主要国においてはおおむね緩やかなインフレ傾向が続いて
いる中で、日本だけが長期にわたるデフレ傾向の下にあったことが、主要通貨の
ほとんどに対して円ばかりが高くなる、円の独歩高の大きな要因ではないだろう
か。」と述べられているが、株式市場でも株価は業績がよい、将来性があるなど
の企業の株価が上昇するもので、逆の場合は下落するものと理解している。最近
の対ユーロでの円高は、欧州で政府債務の信用危機が進み、ギリシャやイタリア
などがデフォルトの危険があり、その危機が他の財政が悪い国(スペイン・ポル
トガル・アイルランド・東欧)などに飛び火する危険があっるという日本の現在
の状況より厳しい状況が、対ユーロでの円高要因と考える。
共産党の産業政策の問題であるが、私は共産党の地方議員が党中央の意向に公
然と反旗を翻し、中央からの指示や指導の反した行動をおこなうことは共産党の
民主集中制という組織原則らかしてありえないと認識する。当然共産党が与党自
治体での正規職員の大幅削減とワーキングプアの非正規職員増を共産党議員が推
進することは、地区委員会も県委員会も中央委員会も承認・黙認していることで
あろうと考える。共産党与党の自治体での党中央の方針との真逆の共産党議員に
よる行動は国保料・税問題でも見られる。党中央は前回の統一地方選挙でも国保
料の引き下げを重要方針に掲げているが、わが共産党与党の自治体では国保料の
引き上げに共産党議員が賛成している。また、朝日新聞の記事で読んだが震災で
死去した前の岩手陸前高田市の共産党員市長も、最初は国保税を引き下げたがそ
のあと国保税を引き上げたと述べていた。たぶん国保問題も地区委員会も県委員
会も中央委員会も共産党与党自治体では共産党議員が国保料引き上げに賛成して
いることは了解しているものと推量する。共産党の政策の多くは、民主党の前回
の衆議院選挙前のマニュフェストと共通するものを感じる。野党の立場では無責
任に実現不可能なことをいくらでも述べられるが、ひとたび政権につき・与党に
なれば、財政上実現可能な政策しかできず、公約と真逆のことをしなければなら
なくなるということで、共通しているのではないだろうか。与党の立場では真逆
のことをしなければならなくなる共産党の政策とは、真の意味での政策とは言え
ないのではないだろうか。
共産党中央が主張する、「正規雇用が当たり前の社会の実現」も、国保料の引
き下げ運動も、与党自治体では共産党議員が真逆の行動をしなければならない政
策が果たして本来の政策といえるのか、はなはだ疑問である。もし共産党として
真の政策と主張するのであれば、今の自治体の厳しい財政状況の下で、共産党が
与党自治体でも正規雇用が当たり前の社会の実現や国保料引下げを実現する具体
的方策を党中央は提起すべきであると考える。それができないから、共産党が与
党自治体の共産議員は、正規職員の大幅削減に賛成をし、国保料の引き上げにも
賛成しなければならなくなるという矛盾が生じるものと考える。