4月13日、北朝鮮は「衛星」(ロケット)を発射し、失敗した。この事実を 赤旗と一般紙はどのように報道したかを見ていく中で、共産党がこの問題に関し ていかに異常な立場をとっているかを検証したい。
まず、各紙の一面は何か
◆朝日新聞は、
「大飯原発に安全宣言」政権「再稼動は必要」経産省きょう福井訪問、
2番見出しで「北朝鮮ミサイル」「継ぎ目付近爆発か」「発射認定 混乱40
分の末」
◆毎日新聞は、
「大飯原発再稼動「妥当」」「安全・必要性確認」「経産省きょう福井へ」
2番見出しで「「発射」発表米韓に後れ」「北朝鮮ミサイル確認手間取る」
◆読売新聞は、
「大飯再稼動「必要」」「福井県へきょう要請」
2番見出しで、「北ミサイル」「食料支援を中止」「安保理は緊急会合」
◆産経新聞は、
「大飯再稼動は「妥当」」「政府、安全性を確認」「きょう福井に協力要請」
2番見出しで、「北ミサイル失敗」「体制引き締めへ挑発活発化」
◆赤旗新聞は、「北朝鮮「ロケット」失敗」「発射強行に各国批判
2番見出しに、「北「ロケット」発射に強く抗議」「志位委員長が談話」
3番見出しに、「大飯再稼動認める」「閣僚会合 事故原因究明ないまま」
以上から分かることは、共産党のみが1面トップが、北朝鮮の「ロケット」を取
り上げ、原発を3番見出しにしたことです。「発射強行に各国批判」と北への批
判を強調したことです。しかもご丁寧に、志位委員長の談話まで載せて、北朝鮮
に対する批判(のみ)を行っています。
この共産党の主張は、各紙の論調に比べても北朝鮮への批判が前面に出ている
ところに特徴があり、その根拠を安保理決議に求めて、世界の国々が北朝鮮を批
判しているように演出しています。注1
注1:「発射強行に各国批判」、「安保理の決議」をまず上げ、「各国」という あいまいな概念を持ち出し、すべての国が反対しているようなイメージ作りをし ています。
本当にそうなのか、各紙の記事をもう少し詳しく見ていくと共産党の記事のお
かしさが浮き上がってきます。まずその前に共産党が金科玉条のように大切にし
ている「「国連安保理決議」1874号」(2009年6月)とは何か、どうい
う意味を持つか整理しておきます。これについては、元外交官の浅井基文氏の主
張を参考に以下に記述させていただきます。
この決議がなされた2009年は、米ソ冷戦体制が終わり、安保理で米国主導
の大国協調体制(大国の馴れ合い政治)が動き始め時期である。この年に朝鮮は
宇宙条約に加盟の上で2月下旬から人工衛星打ち上げを進め、4月5日に打ち上
げた。ところがその日に「核のない世界」を売り物にプラハ演説をしたオバマ大
統領がこの演説で、北朝鮮の長距離ミサイルを攻撃し、「今こそ・・すべての
国々が・・北朝鮮に・・圧力をかけ・・なければならない」とぶち上げて、安保
理を舞台に北朝鮮に対する国際的圧力をかけた。これに中国、ロシアも同調して
安保理議長声明が出され、これに激しく反発した北朝鮮(4月14日付外務省声
明)が5月25日に核実験を行い、それに対してさらに6月12日に安保理決議
1874ができた。
この決議は、5大国がつるむと、安保理が如何に理不尽な(国際法無視・違反)
で危険な行動に走るかを如実に示した。(注2)
注2:この安保理決議は、国際法(宇宙条約)が明確に主権国家に認める権利を 北朝鮮からだけ取り上げるという理不尽なものであり、そもそもその決議の正当 性のないものである。さらに国際法、特に条約は、主権国家が同意し、受け入れ る時に限ってその国に適用があるという原則がある。
つまり共産党のいう安保理決議違反は、この決議の正当性そのものが疑わしい のである。共産党自身も2004年6月9日 日本共産党幹部会委員長 志位和 夫名で「声明」を出し、のイラクに関する安保理決議に対しては、多くの問題点 を指摘し、その正当性を否定している。(注3)
注3:イラクに対する安保理決議に対する声明で、「イラクに戦火と混乱をつく り出した元凶であるアメリカが、その軍事行動を強く自制しつつ、速やかに撤退 にむかう措置をとることが、必要である。」また日本国政府の動きを捉え、「米 英中心の多国籍軍への参加は、従来の政府見解にてらしても憲法違反の何もので もない。」と批判している。
これらの事実経過等の確認の上、4月14日の各紙朝刊の記事に対して、日本 共産党の赤旗の突出ぶりが(アメリカ中心の世界観に埋没)如何に異常か理解さ れると思う。
以下各紙の紙面をみていきたい
◆ 朝日新聞(見出しを拾っていきます・・・上記に掲げた以外)
9面国際欄で、「日米韓を中国牽制」「安保理への決議提起警戒」「北朝鮮に
も批判の目」と大見出しを掲げ、中見出しは「ロシア「新たな制裁反対」」「中
国との強調姿勢鮮明」と書いている。
共産党は「各国批判」と世界が一致して北朝鮮の批判をしているような描
き方に対して、中国は「日・米・韓」の動きを牽制していることを伝えている。
また、ロシアも新たな制裁を反対していることを伝えている。国際社会は一枚岩
でない。各国の利害対立の中で動いている。
毎日新聞
やはり9面国際欄で、朝日新聞と同じように、見出しで中国が「冷静な対
応を」求めていることを報道し、同じく中見出しでアメリカが「厳しい措置
追求」と書き、各国の意見が違うことを載せている。さらに識者の見解を載
せ、その中に「日本が単独で制裁を強化するなどといった突出した行動を取
った場合、逆に国際社会で孤立する恐れもある。」という記事を載せている。
◆ 読売新聞
やはり、8面国際面で、大見出し「日米韓圧力強化目指す」、中見出しで「中露
の協力期待できず」「米:同盟国の安全守る」「中国:各国、冷静と自制を」
「韓国:関係国と対応協議」「露:追加制裁効果ない」と各国の違いを冷静に報
道している。
産経新聞
7面国際欄で、大見出し「北、経済苦境に追い討ち」外貨稼ぎの輸出へ影響と
掲げ、中見出しで、「中国:“最悪”阻止へ突き放せず」、「ロシア:対話重視
制裁強化に慎重」、「米国:食料支援の中止決定」、「韓国:軍事挑発懸念 緊
張高まる」と産経新聞でも各国の対応を冷静に報道している。
赤旗新聞
それに対して赤旗は、3面で大見出しで「北「ロケット」発射:国際社会は許さ
ない」、中見出しで「安保理決議に違反:人工衛星でも弾道弾でも」、「核開発
の放棄が先:衛星の権利主張するなら」「国際社会への挑発:自制もとめた米・
中・韓・ロ」「事態悪化させない:6カ国共同声明の立場で」と一方的に北朝鮮
を攻撃し、その根拠を「安保理決議と各国(米・中・韓・露)が批判している」
に求めている。
しかしこの報道が如何に一方的で偏っているかは、各紙の報道姿勢・内容と比較
すれば明確である。
共産党の怖いところは、2009年の北朝鮮のロケット打ち上げに際しては、
北朝鮮批判の国会決議にも反対しながら、今回は手の平を返したように北朝鮮批
判の国会決議に賛成し、賛成と同時に今度は北朝鮮に対する最大の攻撃者になっ
てしまうその政治姿勢の愚かさである。
共産党は国連の場で、アメリカ一国支配が完成し、安保理決議も全ての国の賛
成で決まった状況下で、日本共産党が一人反対することは難しいと言うかも知れ
ないが、中国やロシヤは一般紙の報道で見られるように、まだ全ての魂をアメリ
カに売り渡していない。そうした状況があるにも関わらず、共産党は、アメリカ
と中国、ロシアをひとまとめにして、「国際社会は許さない」と描き、そのお先
棒を担ごうとする。この姿は醜く、正にピエロのようにさえ見える。
橋下徹の批判者が「橋下氏が言うことは、ころころ変わる」と批判するが、共
産党の変節振りには目をつむってしまう、これでは国民に支持されない。
現在の共産党のおかしさから目を背けてはならない。