おっしゃる通り、もともと、ジニ指数は2国間の比較で導き出されるものでは
ありません。
あくまで、同一国内での同時期あるいは、異なる時期の比較です。(70年代
と2000年代など)
同一国内の異なる時期の比較の場合、戦前からの100年間くらいの比較(推
移)データもあるようです。 そうなると、社会構造がまるで違う戦前との比較を含みますので、異なる二国間の比較にも似てきますが、そこからどのような議論を導き出すかは、また別問題でしょう。
私の議論の中心問題は、ジニ指数の改善の原資は同一国内のどこに求めている のか? つまり、誰が拠出しているのか?です。
ですが、その前に、文中字句の間違いがあるようですので、確認させてください。
はと様
>ジニ係数が高いということは貧富の差が小さいということなのでしょう。
これは、ジニ係数が「低い」の誤りか、あるいは、ジニ係数の「改善度が高い」
ということでしょうか。
以下の文中から察しますと、ジニ係数の「改善度が高い」ということのようで
すが。
さて、以下、異なる二国、A国とB国の比較をされておりますが、私の意図は、
あくまでも同一国内でのジニ指数の改善についてですので、異なる二国の比較を持ち出したのは、スエーデンの国内データを持ち合わせていないからに過ぎません。
ですので、およそのイメージと申し上げた次第です。
なぜ、高い国と低い国が存在するのか?についてははと様のような指摘もありう
るかもしれません。
ですが、その改善が、同一国内(の同年度)に起こっているのはどこからその原
資が拠出されているのか?
ということを論じているわけです。
そこで、議論のスタートとなるデータを持ち合わせておりんませんので、代替 のデータを提出しておきましょう。
まずは、以下のデータを見てからの議論としましょう。
データ1、スエーデンの場合
A, 社会保険料率の推移
企業 個人 合計
98年 33,03 6,95 39,98
99年 33,06 6,95 40,01
00年 32,92 7,00 39,92
(藤井威氏、福祉国家実現に向けての戦略p75)
注目すべきは個人、つまり、労働者の負担と企業の負担の割合が1対4,7 となっていることです。
企業の拠出はすなわち資本家からの拠出です。
因みに、日本は1対1です。
スエーデンの企業(資本家)からの拠出が日本に比べてはるかに高い
ことが分かります。
95年当時ですが、日本とスエーデンとの社会保障負担率(対国民所得比)
は13,2% 対 22,2% 現在の日本の国民所得350兆円で換算しま
すと、
日本、46,5兆円 対 スエーデン 77,7兆円であり、そのそれぞれを 労働者と企業の負担割合で示しますと、
日本 労働者 23,25兆円 対 企業 23,25兆円
(1対1だから)
スエーデン 労働者 13,63兆円 対 企業 64,07兆円 (1
対4,7だから)
となるわけです。 企業=資本家ですからスエーデンは資本家が40.8兆円も 多く拠出し、労働者は9,6兆円も日本の労働者より少なく負担しているわけです。
次に、限定的な福祉受給と税負担による再分配の実例です。
あくまでも限定的です。 もっと広範囲の福祉支出がありますが、
現物給付だったりして(医療費など)ファジーな部分を排除した
データです。
片親(母子が主)子供二人の標準世帯
税込収入 15万SKR
税金等 64900skr
税引後収入 80600skr
児童手当受給 22800skr
保育所公費負担 136000skr
合計 158800skr
税負担ー福祉受給額
89400SKRの所得改善
結果 15万skr+89400skr
=239400skrの収入
比較的裕福な家庭(子供二人両親)
税込収入 65万skr
税金等 334800skr
税引後収入 315200skr
受給 同じく 158800skr
税負担ー福祉受給
176000skrの拠出
合計 474000skr
このように、個人の税負担レベルでも、裕福な層から貧困家庭への 税負担を通じた拠出・提供が見られます。
その結果、当初分配 15万skr(3人世帯) 対 65万skr(4人
世帯)は 1対4,3倍、、
家族一人当たりでは、 1対3,25 の所得格差だったあのが、税負担と福
祉受給後は
234900skr 対 474000skr 1 対 2,01倍、、
家族一人当たりでは、 1 対 1,513倍とかなり改善されるわけです。
もちろん、福祉受給は、児童手当と保育所公費負担だけではなく、医療費の
負担や、住宅手当や教育の無償化・平等受益などまだまだありますので、以上の実例はほんの一部の改善に過ぎません。
また、最初に示しましたように、高い企業負担は資本家からの拠出に他なりま せん。
データ2は日本の場合ですが、それは、次回にしましょう。