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一般投稿欄

共産党の原子力政策は何か(いまだ揺れ動いている)
「さよなら原発」一千万人署名が原発反対の運動の主導権を握る。

2012/6/17 エガリテ 60代 退職後アルバイト

 3.11の震災に伴う福島原発のメルトダウンは、原発を54基も有する日本 の国家の在り方に大きな警鐘をもたらした。この時点でどのような方針を出すか で政党の真価が問われていた。
 日本共産党は震災後に行われた一斉地方選挙で、「安全優先の原子力政策」と いう「訳の判らない政策」を発表し、具体的には「原発の安全点検」を訴えてこ の選挙戦を戦った。(結果は見事に惨敗した。)
 その後共産党は5月1日のメーデーで「原発ゼロ宣言」を行い、6月13日に は志位委員長が「原発ゼロ宣言」の中身を記者発表した。現在の共産党の原発政 策はこの時発表されたものを踏襲していると思われるが、共産党は国民の原発反 対の世論に押され、じわじわとその政策を変更(スライド)している。

<共産党の「原発ゼロ」とは何か>・・・・原発からの段階的撤退論
 「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を」「国民的討論 と合意を呼びかけます」(2011年6月13日 日本共産党)の内容は、 「1.福島原発事故が明らかにしたものは何か、」、「2.原発からの撤退の決 断、5~10年以内に原発ゼロのプログラムを」としています。その「(3)で 「原発ゼロ」にむけ、原発縮小にただちに踏み出す。」といています。ここで確 認しておく必要があるのは、共産党は「原発絶対反対の立場」を取っていないこ とです。
 共産党の主張する「原発ゼロ」は、5年から10年かけて原発をゼロのしよう というものです。いうならば「原発段階撤退論」です。(共産党はこれを隠して いますが。)

<さよなら原発運動は我々に何を突き付けているか>
=人間は核と共存できない=
 これに対して「さよなら原発」1千万署名を集めている市民団体(以下「さよ なら原発派」という)の主張は「人間は核と共存できない」です。この違いは何 を意味するのか。「さよなら原発派」は、核問題を原発という矮小化した次元で 捉えるのではなく、原子力爆弾を含むすべての核に反対しているのです。
 この違いはさよなら原発集会での主催者側の主張を見れば判ります。

鎌田さんは、このさよならは、「もう絶対に会いたくないという意味での「さよ なら」が、原発に対する私たちのメッセージです。」と主張しています。

大江さんは、原子力によるエネルギーは必ず荒廃と犠牲を伴います。と主張して います。

内橋さんは、「技術が発展すれば安全な原発は可能である」とする安全神話の改 訂版が新たな装いを凝らして台頭しつつある点に注意しなければなりません。原 発を持ち続けたいという意図の裏には何があるのでしょうか?それは、私たちの 国が「核武装」、「核兵器で武装」することが可能となる潜在力を持ち続けたい とする政治的意図だと思います。

落合さんは、容易に核兵器に変るものを持つことを、恒久平和を約束した憲法を 持つ国に生きる私たちは決して許容してはならないはずです。

この4名の主催者の主張を見れば、共産党の主張と明らかに違います。彼らの主 張の根本は、「人間は核と共存できない」という思想に根幹に「核物質」を人間 が利用する(いじくる)ことに反対しているのです。
 さらには、原子力爆弾に反対する運動の延長線上に「さよなら原発」の運動を 捉えています。
このことが簡単にわかるのは「さよなら原発派」のビラを見れば明らかです。 2011年9月7日発行のビラは、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマとキノコ雲を書き、 大きな「×」を付けています。今回の福島の原発メルトダウンによる放射能汚染 による住民の被害(命の安全を脅かされた事象)を原爆と同じ次元で捉え反対し ているのです。
 このビラはなかなか面白いです。共産党が封印している言葉が多数出てきま す。「避難・移住の権利を!」「子どもたちを放射能からも守ろう!」(子ども に原発や病院の放射線管理区域の1.6倍も多く被爆しても良し、とする方針は許 せません!)、「津波より地震のゆれが事故の原因」(配管を問題にすると運転 再開できなくなる!?)、「2012年を全原発停止年に!」と書いています。 彼らが原発絶対反対派だと良くわかります。

<共産党の原発政策は、なぜ分かりにくいか>
=それはごまかし続けているから=

 共産党の政策「原発ゼロ」は段階的縮小論です。しかしこれでは戦えないこと を共産党も理解し始めています。現在共産党は「原発ゼロ」という言葉を「2012 年全原発停止年に!」という内容に摩り替えて、あたかも共産党も原発絶対反対 勢力だと踏ん張っています。
 しかし、すでに国民は共産党のこうした胡散臭さを見抜いています。本日(6 月16日付)赤旗一面トップは、「大飯再稼働許すな」「官邸に1万人包囲」とい う記事があります。そのリード部分に「思い思いのゼッケンやプラカードなどを 持ち寄った人たちが」と書いていますが、写真を見る限り「原発ゼロ」は一枚も ありません。読み取れる範囲で読んでみますと「・・・・やめろ」、「原発と東 電最終処分場行」、「大飯原発再稼動に断固反対」、「大飯原発稼働阻止」、 「原発はいらない」、「福島第一原発20キロ県内に取り残された動物たち、この 悲劇を二度と繰り返してはならない」などです。共産党の掲げる「原発ゼロ」は 一枚もありません。なぜならこれは運動方針にはなりにくいですから。(何時ゼ ロにするのか曖昧さを残している)ついでに、赤旗15面にも「この瞳守って」と いうすばらしい写真がありますが、この写真のゼッケンも「大飯原発再稼働絶対 反対」です。
 ところが、赤旗2面の衆院経産委員会での記事は、事故前の不作為未解明“再稼 働は論外”という記事が載っていますが、記事の最後は「「これで“安全”といっ て再稼働に走るのは論外だ」と批判した」と書かれていますが、この論理は安全 なら良いになってしまいます。原発反対の国民の姿を伝えながら、国会では「安 全神話」の議論をしている。これが共産党の限界です。
 さらにとんでもない記事が見つかりました。またもや大阪民主新報(6月17日 付)一面です。ページ一面を使って原発再稼働も消費税もノー!!という記事を 載せています。上半分が原発の記事です。この見出しが「原発にメリット何もな い」というものです。この見出しを見ておかしいと思わないものは、全くの政治 音痴です。
今、原発問題は人類の生存に関わる問題として戦われているのです。大江健三郎 さんは、さよなら原発集会で「原子力によるエネルギーは必ず荒廃と犠牲を伴い ます。」と主張しています。「何かメリットがあるか否か」の戦いをしているの ではありません。国民の半数以上はすでに絶対反対です。(注1)共産党がいく ら原発反対を叫んでもこんな見出しを出している限り、誰も信用はしません。

注1:本日付(6/17)毎日新聞は社説で、「脱原発の流れを止めるな」という記 事を載せている。(大阪民主新報より反原発の立場を取っている)その記事の中 に、毎日新聞が行った世論調査を載せている。大飯3,4号機の再稼働を「急ぐ 必要はない」と答えた人が71%に達した。「夏までに原発が稼動せず、家庭や職 場で電気の使用が制限された場合、あなたは我慢できますか」との問いには、 77%が「できる」と答え、「できない」の19%を大きく上回っていた。と発表し ている。

<日本共産党の平和運動の理論の原点>
=共産党に突きつけられている課題=

 平和運動及び核兵器反対運動で、共産党の理論を振り回し、平和運動に分裂を 持ち込んだ経緯があります。以下はその当時の理論的支柱であった上田耕一郎氏 の主張を紹介し、共産党は今も引きずっているのか、それとも清算したのか問い ただしたいと思います。この点を明確にしない限り、平和運動での共産党の足場 は確保できないと思われます。

上田耕一郎 マルクス主義の平和運動 大月書店 に収録されている論文

1. 社会主義における核兵器は「平和の手段」
 アメリカの核兵器はけっしてたんに「保有」によってのみ「政治の手段」であ るのではなく、まさに使用において最も危険な「政治の手段」である。
 ★他方社会主義の核兵器は、
第一に、帝国主義の核兵器「使用」を防止するために「保有」され、
第二に世界的な平和運動を結合して、全般的軍縮を帝国主義に強制する政治的、
軍事的前提を作り出すために「保有」される平和の手段である。
(1962年「前衛」11月号 「ソ連核実験と社会主義の軍事力の評価」)

【解説】帝国主義の核と社会主義の核は本質的に違う、社会主義の核兵器は「平 和の手段」であると言い切っている。・・・ここに共産党の平和運動や核に対す る考え方の基本がある。
 共産党はこの理論を現在どう発展させているのか説明しない限り、共 産党の原子力政策には常に疑心暗鬼に陥る。

2.「核兵器対人類の対立」
 ★社会主義の防衛的軍事力は、帝国主義の侵略的軍事力に対抗する必要な限り、 引きつづき、発展させられなければならない。「核兵器対人類の対立」という現 実を理由に、この努力を一切拒否することは、現実には平和のとりでとしての社 会主義と人類を無防備のままで帝国主義の侵略にさらされることを意味している。
(1962年「前衛」10月号 二つの平和大会と修正主義理論)

帝国主義を敵とするのではなく「核兵器を敵とする人類的立場からの平和運動」 が必要だとか、「いかなる国の核実験にも反対」すべきだとか等々のゴッタ煮 が、その根底にある帝国主義の侵略性に対する信じがたいほどの過小評価ないし は無視から発していることを示している。
(1063年7月9日、10日 「アカハタ」 核戦争防止と修正主義理論)

【解説】共産党は「核兵器対人類の対立」という考え方を「絶対的平和主義」、 「修正主義」として批判していた。現在「さよなら原発」派は、まさに「人間は 核と共存できない」という「絶対的平和主義」である。共産党はこの間、赤旗で 「核と人類は共存できない」という主張をしたことが無い。現状においても、共 産党は「人間は核と共存できない」という考え方に批判的なのか。これについて も明らかにしなければならない。
 また共産党は、綱領においても、原子力の平和利用を掲げていた。(注2)
注2:日本共産党綱領(1994年7月23日 一部改定)
 党は、原子力の軍事利用に反対し、自主・民主・公開の三原則の厳守、 安全優先の立場での原子力開発政策の根本的転換と民主的規制を要求する。  共産党は党の方針は一貫していると常に主張する。今現在、党はこの平和利用 について、どう思っているのか明言しない限り、党の原発政策は信用されない。
 現に一斉地方選挙の党の原子力政策「安全優先の原子力政策」は、上記1994年 綱領と同じ立場である。(この方針は、国民に受け入れられなかった。)

<「誤り」を認めない共産党は一人前の政党として成長していない>
 =「一貫性」と「無謬性」を放棄しない限り、国民は共産党を支持しない=
 共産党の最大の弱点は、政策の一貫性の主張と、無謬性の主張にある。共産党 が橋下市長を目の敵にするのは、橋下氏は思いつきで政策を語り、まずくなった ら撤回するからである。共産党の支持者は「嘘つきペテン師」と吠えまくるが、 所詮は犬の遠吠えである。国民(市民)を見方に付けたものが勝ちである。君子 豹変するという言葉があるが、政治の世界では一定こうした考えを容認する土壌 がある。
 これに対して共産党は「一貫性・無謬性」にこだわるため、間違いが認められ ずずっと引きづっている。その中でも典型的事例が原発(核)政策です。
しかし、福島原発のメルトダウンで、共産党の主張、「社会主義国の原爆(核) は平和の手段」だとか、「原子力(核)の平和利用」等の理論は吹っ飛んでし まった。原発のメルトダウンという、この現実を目の当たりにして国民は「人類 と核の共存」はありえないと直感した。
今回の事故後原水禁系の運動は盛んだが(さよなら原発1千万人署名など)、原 水協系の運動が全く見えない。(「人類と核兵器は共存できない」という主張を 「絶対的平和主義」「修正主義」と批判してきた。)運動論的には決着がついた のではないかと思われる。(注3)
 共産党は、従来の共産党の平和運動論、核兵器廃絶の戦いの運動論の清算を行 わずに、「さよなら原発」集会にもぐりこみ、自らの運動のように宣伝している が、先に見たように「さよなら原発派」と共産党の考え方は一致していない、 共産党は自らの政策の弱点がバレル事を恐れ、赤旗やビラ等で「「安全神話」を 打ち破ろう」と盛んに宣伝しているが、さよなら原発集会での内橋さんの、基調 提案、「「技術が発展すれば安全な原発は可能である」とする安全神話の改訂版 が新たな装いを凝らして台頭しつつある点に注意しなければなりません。」との 指摘は正に共産党の政策に向けられたものである。(注4)
 共産党が本当に、「人間と核とは共存できない」という立脚点に立って反原発 運動を進めるのであれば、過去の主張「社会主義の核は平和の手段」「核の平和 利用は必要」さらには「安全優先の原子力政策」、「原発ゼロは段階的縮小論」 等々は、基本的に誤っていたことを認めるところか出発しない限り、国民からの 信頼は得られないであろう。
共産党が過去の政策の「誤りを認める」大人の政治家にならない限り、もう二度 と花は咲かないであろう。

注3:共産党は、「さよなら原発派」の1千万人署名運動の意義を過小評価して いる。赤旗は13日付で報道しているが、その中に、呼びかけ人の鎌田氏の発言 「世の中が国民の力で動いているのを感じます。過ちを二度とくりかえさない決 断が政府に求められます」と話していたという記事を載せているがこの主張こ そ、国民を主人公にする政治の立場だ。共産党はこの記事を毎日新聞と同じベタ 記事にしている。(毎日新聞は見出しに脱原発署名780万人署名と運動を評価す る見出しをつけたが、赤旗は、国会に提出と事実のみを伝えた。)
 この間の赤旗の報道は、北海道で地元財界と経済懇話会行ったが、参加 者の感想として、共産党が「大企業と敵視しない」判って安心したというような 話や(6月10日赤旗1面)、赤旗の拡大が進んだという記事を載せているが、歴史 を動かそうとしているのは、さよなら原発署名に結集した780万人の国民であ る。決して財界が、共産党が「大企業を敵視しない」ことを聞いて安心したとい う話しの中にあるのではない。

注4:毎日新聞2011.08.25 東京朝刊 11頁
 ザ・特集:共産・志位委員長と社民・福島党首、反核の「老舗」対談とい う記事がある。この対談は共産党の原発政策を知る上で重要な記事である。
 福島― しかし、共産党は核の平和利用について認めてきたんですよね。社民 党は、核と人類は共存できない、いかなる国の、いかなる核にも反対、です。核 の平和利用はありえない、と訴え、行動してきました。
 志位― 私たちは核エネルギーの平和利用の将来にわたる可能性、その基礎研 究までは否定しない。将来、2、3世紀後、新しい知見が出るかもしれない。そ の可能性までふさいでしまうのはいかがかとの考えなんです。
 福島― 共産党は極めて安全な原発なら推進してもいいんですか?
 志位― そうじゃない。現在の科学と技術の発展段階では、「安全な原発など ありえない」と言っています。いま問われているのは、原発ゼロの日本にしよう ということでしょ。
 福島― 安全な原発はないし、核の平和利用と言って原発を肯定するのはおか しいです。
 志位― そこでは意見が違っても原発ゼロでの協力は可能だと考えています。
 ※ 志位委員長は、共産党は核の平和利用についてはあきらめていないと明言 しています。(2、3世紀後の可能性を、なぜ今発言する必要があるのか共産党 のセンスを疑う。・・・運動が全く判っていない学者の論議だ。)