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日本共産党批判にあたって

2012/7/19 菅井良

隣の部屋に住んでいる共産党系組織の専従の人が、けっこう興奮して、インターネットにあるustreamで自分が番組を放送しているんですよ、と話していたのは去年のことだった。そのころ、菅井はustreamというのが何であるかも知らなかったのに。
今にして思えば、共産党にインターネットに対する見方とかかわりの変化が起こりはじめていたのだと思う。
その人は、観るにはどうすればいいのか、説明してくれることもなく、いまいちこちらがその話にのらないなと思ったのか、その話題はそれっきりになってしまった。どのくらいの人が聞いているんですか、と聞いたときの反応から、どうやら視聴者はほとんどいないように聞こえたのが記憶に残っている。

原発事故に抗議する共産党系のデモで、前を歩いていた労組系の二人が、たるい感じの会話をしながら、その中で、インターネットでいろんな情報がわかることを最近知っておもしろがっていることを話していた。

つまり、今までは彼らは、赤旗と、組織内の情報交換以外には、「たよりになる」情報源がなかったのだが、インターネットの中で、それらとは独立な「たよりになる」情報が手にはいるということを発見したのだ。

パソコンをつかう人が共産党員の中にも増えてきて、そういう発見をする人は確実にふえている。

体制的なメディアしかない状況のもとで、機関誌を発行してそれを武器に戦うというのは、レーニンが発見自覚した闘いの方法だが、それは100パーセント正しかったけれど、同時に、情報をまず中央にいったん集中させ、それをみなに上から流していくという情報拡散のしくみをつくることになった。多くの論者が指摘している「民主集中制の害」の原因になる情報の流れの基本パターンが作られた。それは、今にいたるも本質的に、同じだ〈った〉と思う。

日本社会の規模でみたときは、読売新聞やテレビを通じて多くの人々が「情報?」を得ているのと同じ構造なのだ。

赤旗のサイトに志位委員長の講演パンフ「日本の巨大メディアを考える」が載っているのを知り、読んでみた。菅井は、不破哲三氏や上田耕一郎氏の独自研究は読んだことがあったが、不勉強で志位氏の独自研究は読んだことはなかった。これは、まぎれもなく志位氏の独自研究であり、過去の、海外のマスメディアがいろいろな時点でマスコミとして正しい機能を果たしているのに、日本のマスメディアの現状はひどいものだということをよくわからせてくれる。結論は、だから赤旗の意義に確信をもって、増やそうというものだが、それはむしろつけたしであり、志位氏の「真の結論」ではなかったのかもしれないと思うのだ。

というのは、ここのところの脱原発のデモ、それは、共産党が組織したものでも、協力団体になっているものでもないのに、つづけて志位氏自身が参加しているばかりか、赤旗で予告、大きな報道までして、参加を促し、さらには集会の空撮写真を一面にのせた即日号外を集会の場で大量にまいているからである。また、別の市民主体のデモに、党本部の宣伝カーを貸しだしているなどという協力をしているからである。
これを赤旗の拡大のための宣伝とのみ見るべきではない。

今の共産党の大会決定(民主党のマニュフェストにあたるもの)からみて、はっきり間違っているということはできないのかもしれないが、どこか著しく違うものも感じるのだ。どなたか、その辺のところをすっきりと説明していただける方があればなあ、と思ったりする。だが、菅井は民主党のそれとは違って、こちらの〈マニュフェスト違反〉にはどちらかといえば好意的なのである。

今まで、日本共産党の問題を考える時、世界の共産主義運動の歴史や、宮本顕治氏や不破、上田兄弟の理論を的にしてきたような気がする。さざ波通信本誌にも、原仙作氏をはじめとする論客の投稿にもそうした文章は多くある。その人たちがよくも悪くも今の日本共産党をつくってきたことはまちがいないのであり、そうなるのも当然なのだが、志位氏を独自研究のない、不破氏などと比較すると独創性のない指導者扱いするのは、そろそろやめたほうがよいのではないだろうか。
今の共産党を批判的に検討するためには、志位氏に対する偏見を反省するところから始める必要があるのではないか、と思うわけである。

ご検討いただけるとありがたいです。