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一般投稿欄

出口調査、世論調査による公共性の変質

2012/12/15 櫻井智志

 東京新聞12月15日の朝刊に『世論調査が醸成する「空気」』という特集記事が掲載されていた。明日が衆院選投票・開票日というのに,世間にはもう自公圧勝で選挙は終わった気になる「空気」が漂っていることを戒め、政治理念、考慮も大切に政策比較サイトなどを活用して自分に近い政党を探して投票することが、大切な議会制民主主義の本旨を果たしていくというタイムリーな好企画であった。
 マスコミが自民公明で過半数、などと繰り返してあっちでもこっちで喧伝している。世論調査はサンプリングなど統計学的手法で全国の国民の意識を的確に把握している、はずだ。
 しかし、告示直前から、投票先の票読みがなされて、大新聞大手マスコミに「選挙結果」が掲載されること自体がおかしい。少なくとも1980年代近くまでそのような企画はあまり派手な扱いでなかったように思う。
 そのことで、実は投票を迷っている浮動層に大きな影響を与える。小選挙区制が敷かれ、有利な政党名が打ち出されて、「それなら私は苦戦している政党に投票しよう」という判官びいきは、残念ながら小選挙区で当選者がひとりとなると、成立しがたい。多数派に入っていることで、孤立感からは免 れたいという意識が現在の選挙制度では圧倒的である。あれだけ日本を騒がせた「子どもたちのいじめ問題」は、いじめられる少数の子といじめる子と、圧倒的に自分に災難がふりかかってくるのをおそれていじめを黙認して「多数派」のままの自分でいよう、という勢力図が子ども社会に続いている。
 まさに「いじめ問題」の構図は、少数派でいることの不安感から逃れ、多数派でいたい、そう、日本社会の構図のそのままの投影なのだ。
 告示前後に「自民党過半数を上回る勢いも」などと報道されると、どうせ自公圧勝なら、と無党派層は消極的になる。浮動層は、雪崩をうって多数派と呼ばれる勢力に投票する。そこに過去の都知事選で後出しした石原慎太郎氏が圧勝した遠因がある。
それが影響を与えるのは、都知事選で言えば、猪瀬候補を猛追している宇都宮候補に。
衆院選では、自公維新を追う共産、社民、未来の党など反原発派に。
 私たちは、大手マスコミの大新聞やマスコミによるいわば「大本営報道」によって惑わされるとどういう影響があるのか、もっと考え、吟味をすべきであろう。
 私は期日前投票にいったときに、投票したひとり前の助成が朝日新聞社の出口調査を受けているのを見た。朝日新聞社がおかしいといっているわけではない。
 おかしいのは、出口調査全般である。とくにNHKのような全国組織の出口調査は、もしも万一それが昼頃に放送されて、或る組織的団体のようなものが一斉になんらかの組織的行動をおこすと、大きく結果に影響がある。これは自民党にして翼賛体制や民主主義の危機を訴えて引退した自民党の大物政治家野中弘務氏が自伝の中で、ある選挙の時のことをふりかえった回想に述べられていたように記憶している。もしそのような実例がなくとも、まだ選挙中にほぼ投票結果傾向に、浮動層は「あ、決まった」と思い、投票行動そのものへの影響 があるだろめう。 私は若い二十歳の頃にこんな「出口調査」はなかった。 あきらかになんらかの政治的意図があるように感じ続けてきた。開票率ゼロパーセントで「当確」が出るような投票行動を軽んじた報道は投票そのものを貶めた一定の戦術的配慮としか最近思えなくなっている。
 選挙結果を見ると、「ほら、出口調査が正確だろ」というご意見もあろう。私は、世論調査や出口調査そのものに強い影響力があるから、それにひぎずられるように浮動層の国民の投票行動が誘導されるのだと考えている。

 もう一度念をおそう。
総選挙も都知事選挙も、終わった選挙ではありません。
投票日は12月16日。同日の夕方まで延々と激しい心理戦や選挙戦が激闘を続けているのです。まず自らの感覚と思考と心を信じて、堂々と「一票一揆」をめざして、投票というこれしかない国民の権力左右の権利を駆使しようではありませんか。