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一般投稿欄

民主主義と社会主義・共産主義について―日本共産党への手紙と回答―

2013/3/28 中村大輔 60代 翻訳家

 前回の手紙についての私の意見を以下の通り、共産党中央委員会に送ったところ、 以下のような返事が返ってきました。

 先の返信では最初に、「条件や意思のある政党があれば、私たちは当然積極的に協議 します」と書いてあるはずです。
 これを読んだうえで、「貴党自身に他の野党への共闘の意志があるのかという点に 一言も答えない」とおっしゃるのは、言いがかりというものではないでしょうか?  「なぜ他党から嫌われるのか、その原因の一つは共産党自身にあるのではないか」 などというに議論にいたっては、「いじめ」の被害者の側に「あなたにも原因はある のよ」というのと、どこが違うのでしょう?(3月29日付)

 共産党の伸び悩みを打開する方法を提案しているにもかかわらず、このような子ども じみて偏屈な、また支持者を敵に回すような不誠実な対応をするようでは、共産党は いつまで経っても国民から多くの支持を得ることは無いでしょう。わたしはもう選挙 で共産党に入れることは無いでしょう。

日本共産党中央委員会御中

ご返事いただきありがとうございます。以下、貴党の回答に対する私の意見を述べます 。

 貴党は私への回答で、貴党自身に他の野党への共闘の意志があるのかという点に一言 も答えないで、共闘ができないのはもっぱら社民党の右寄りの姿勢のせいだとしていま す。まず、共産党自身に他党へ協力・共闘を呼びかける意思があるのか否かについて明 確に答えるべきだと考えます。

 他方、共産党はなせ社民党が同党の方を振り向かないのかを考えて見るべきです。な ぜ他党から嫌われるのか、その原因の一つは共産党自身にあるのではないかと自らを疑 ってみる謙虚な姿勢が必要ではないでしょうか。言葉や政策でいくら民主主義を守ると 言っても、日頃の政党交渉などで他党の意見にも耳を傾けるなどの姿勢を見せなければ 、貴党が民主主義政党であるとは看做されないでしょう。そのような姿勢を示せないの は、端的に言えば、貴党の形骸化した民主集中制と党官僚による党の一元支配にあるの ではないでしょうか。これを改めずして、いくら正しい政策を提示しても国民は貴党を 他の政党とは違う特異な存在であると印象をもつでしょう。

 さらに貴党は日本が抱える当面の課題は、民主主義と真の独立を勝ち取ることだとお よそ半世紀前から主張してます。この点については大いに評価すべきだと私は思ってい ます。問題は、貴党はすでに崩壊したソ連などが標榜していた共産主義の実現を目標と しており、国民は「共産党」という名前から真の共産主義に対する無理解もあって貴党 を毛嫌いしている人たちが多く存在していることを認識しなければならないと思います 。ですから、「共産党」という党名を掲げるなら「共産主義」や「共産党」という名前 (これらはもともとcommunism, communist partyの訳語です)、つまり訳語を変えてみ ることも必要です。「プロレタリアート独裁」を「プロレタリアート執権」という見事 な訳語を考え出したのも貴党ではないですか。文字通り一党独裁だった旧「共産」圏諸 国の「共産主義」と貴党の目指す共産主義は全く異なるのだといくら言っても、「名は 体を表す」という言葉があるとおり、国民はそうは考えてくれません。

 ではこのような事態を打開するにはどうしたらよいでしょうか。わたしは、貴党が目 指す真の共産主義社会はどのような社会なのかを、その呼び方、「共産主義」という名 前の再検討を含めて、国民に率直に訴えてみることだと思います。共産党はいくら民主 主義を守るといっても所詮はあの恐ろしい共産主義を信奉しているのだから信用できな い、などと考えている国民はかなり多いと思います。それならば、思い切って国民に打 って出て、自らの目指す社会の素晴らしさを国民に訴えてはどうでしょうか。もちろん 、その際には貴党の目指す未来の社会主義・共産主義の社会は民主主義の徹底を通じて のみ実現するのだということを国民に分りやすく説明し、理解してもらう必要がありま す。何よりも共産主義・社会主義の社会が国民の共同と連帯と自由・平等、高い経済発 展を達成した社会であることなどを理解してもらうことです。そして、究極的には民主 主義の発展が共産主義の実現につながるのだという理解を国民に広めることが必要です 。

 このような努力は行っていると恐らく貴党は言うでしょう。でもそれは貴党を強く支 持している党員候補に対して行っているだけではないでしょうか。そうではなく、マス コミに向けて行うぐらいのことをしなければ効果はほとんど無いでしょう。例えば、貴 党が民主主義の擁護・発展に今まで力を尽くしてきたことや民主主義と共産主義との切 り反すことのできない結び付き、貴党の目指す共同社会の素晴らしい姿や特徴などを国 民に知らせる一面広告を新聞に出すことなどが考えられます。選挙毎に没収されている 供託金の額に比べれば、費用など気にしていられないでしょう。また貴党は社会主義・ 共産主義と民主主義の関係を真剣に研究し、民主主義の徹底が貴党の目指す社会主義・ 共産主義につながることを国民に理解してもらうことに一層の努力を傾けることです。 ともかく「共産党」という名前を掲げるなら、共産主義に対する国民の誤解を解き、真 の共産主義の素晴らしさを宣伝して国民に理解してもらうことが、貴党が選挙で躍進す るために絶対に必要なことです。

 わたしは、まだ貴党の今後取るべき道については別の考えがありますが、長くなりま したので、この辺で終わりにします。(3月28日付)

中村大輔