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一般投稿欄

護憲派・改憲派融合の「96条の会」と脱原発統一候補

2013/5/24 櫻井智志

 参院選を控えて、安倍政権は憲法改定の国会通過を現在の三分の二から過半数 に変えようと、憲法96条の改憲を目論んでいる。そんな中で、5月23日に、 先行96条改憲に反対する憲法学や政治学の研究者が結集し「96条の会」を発 足させた。代表の樋口陽一東大名誉教授らが、都内永田町で記者会見を行った。 った。

 この動きで注目に値するのは、護憲派の学者にとどまらず、改憲派の論客とし て有名な小林節慶応大教授も発起人として参加していることである。
 いままで護憲派改憲派という議論はあったが、憲法96条をめぐって、双方の 立場の学者が統一して96条改憲に反対する共同の立場にたったことは画期的で ある。

 東京新聞5月24日金曜日朝 刊は、一面トップでこの記事を報道している。更 にこの日に、超党派の議員連盟「立憲フォーラム」も会合を開くなど、改憲手続 きの緩和を阻もうとする動きが活発になってきた。立憲フォーラムは、一般公開 で小林節教授の講演会を開き、民主党、日本共産党、社民党の国会議員らが約百 人参加した。幹事長を務める辻元清美衆院議員は、「立憲主義という言葉が広が り国会の空気は変わってきた」と話したという。

 これらの国会内外の動きに、山口二郎北大教授は、「96条の争点化は前代未 聞で、保守政治の劣化だ」と話し、広く国民の間に沈殿してきた危機感が「96 条の会」の発足につながったと強調した。
 国政選挙で憲法問題と実は内在的に連なっている脱原発問題で、大きな動きが 進展した。生活の党、社民党、みどりの風は参院選で青森、岩手などの七選挙区 で候補者を一本化し、相互に支援することで合意した。

 合意を伝える東京新聞の記事によると、生活の党が青森、岩手、社民党が福島、 埼玉、大分、みどりの風が山形、島根の各選挙区にそれぞれ党公認や無所属とし て候補擁立、残りの二党が支援する方向。埼玉など一部選挙区をめぐる調整が残 っているそうだ。

 幹事長間で交わす確認書には、脱原発とともに96条改憲、TPP(環太平洋 連携協定)への参加反対や格差是正などを共通目標として銘記する。
 みどりの風と日本未来の党もともに合流し、当面は「みどり」として行動し、 前代表の嘉田滋賀県知事が顧問格として協力し、脱原発運動が形骸化せぬよう共 に手を携えて参院選に臨む。
 また、脱原発政治連盟(緑茶会)は、政党はそのままで脱原発で参院議員とし て投票するに信頼する候補の第二次発表を行っている。これはメルマガに掲載さ れたものを私がそのまままとめたものであるが、以下の通りである。

Ⅰ選挙区
▼北海道
未定(調整中)
▼東北
秋田県(1) 松浦大悟(民主党) 山形県(1) 舟山康江(みどりの風)
宮城県(2) 岡崎トミ子(民主党) 福島県(2) 金子恵美(民主党)
▼北関東
茨城県(2) 藤田幸久(民主党) 栃木県(1) 谷博之(民主党)
群馬県(1) 加賀谷富士子(民主党)◆
} ▼南関東
埼玉県(3) 行田邦子(みんなの党) 山梨県(1) 米長晴信(みんなの党)
▼東京
東京都(5) 大河原雅子(民主党)
▼北陸・信越
新潟県(2) 森裕子(生活の党)
▼東海 未定(調整中)
▼近畿
兵庫県(2) 松本なみほ(緑の党)◆
▼中国
鳥取県(1) 川上義博(民主党) 島根県(1) 亀井亜紀子(みどりの風) 広島県(2) 佐藤公治(生活の党)
▼四国
未定(調整中)
▼九州
熊本県(1) 松野信夫(民主党) 沖縄県(1) 糸数慶子(無所属)

Ⅱ 比例代表 計31 名 ※50 音順
相原久美子(民主党)
東祥三(生活の党)◆
井上さとし(共産党)
大島九州男(民主党)
大野たくお(緑の党)
紙智子(共産党)
神本美恵子(民主党)
鴨桃代(社民党)◆
川田龍平(みんなの党)
木村ゆういち(緑の党)◆
小池晃(共産党)◆
しまざきなおみ(緑の党)◆
すぐろ奈緒(緑の党)
杉原こうじ(緑の党)
平智之(みんなの党)
田口まゆ(緑の党)
谷岡郁子(みどりの風)
ツルネンマルテイ(民主党)
仁比そうへい(共産党)◆
長谷川羽衣子(緑の党)
はたともこ(生活の党)
広野ただし(生活の党)
藤谷光信(民主党)
藤原良信(生活の党)
又市征治(社民党)
三宅雪子(生活の党)◆
山岡賢次(生活の党)◆
山下よしき(共産党)
山シロ博治(社民党)
山田正彦(みどりの風)
山田みち子(緑の党)
※◆は 第二次候補推薦を今回追加した候補者

これらは決定ではなく推薦と叩き台としての案の段階である。
現在 埼玉支部と東京支部が活発に運動を進めている。他の地域も地道に動い ている。
「民主党」「みんなの党」や「生活の党」が名前を挙げられているが、現実に 参院選結果によっては、96条改憲派=自民党、維新の会、公明党が獲得する 議席数が強く政治を激震させる。公明党は96条改憲には慎重な意向を示して 実際に自民党に突出を抑制させる働きも示している。ただ政治戦略として自民 党と政権与党を占めている現状と民主党政権の前も含めて長く自公共闘を保っ ていることから、護憲派と目するのは、やはり厳しい政治的現実の前では甘い。 「みんなの党」は維新の会と一部で選挙協定を結んでいたが、維新の会共同代 表の橋下徹氏のあいつぐ問題発言と発言姿勢に国際的な広がりで批判が高まっ ている。ここでは共闘しないと選挙協定を破棄した「みんなの 党」に、期待は しないが、一定の支持の余地はあると「緑茶会」では考えたのだろう。
 政党政治では政党が基盤になるが、あえて個人推薦形式としたのは、私は価 値があると思う。共産党には改憲派はいないと思うが、たとえば自民党に護憲 派あるいは「96条護憲派」がいた場合に、参院選後の政治情勢でどのような 政治的言動をとるかは、必ずしも政党即個人と意見が同義となるまい。決定的 な党議拘束がかかる案件が大きいことは私も認める。

 しかし、自民党の安倍総理や麻生副総理の政治的言動は、とても公式なここ に書くのがはばかれることが少なからずある。宮沢喜一、大平正芳、三木武夫 これらの自民党出身の総理には、広い見識とおだやかな大局眼があった。今は 総理、副総理、維新の会共同代表と、公職にある者の短絡的直情的失言が続く が、 これらは失言ではなく、政治家個人としての人間的資質に関わる問題であ るようだ。それが私が政党以上に個人を重視するゆえんである。