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10月27日投票の神戸市長選・川崎市長選

2013/10/6 櫻井智志

 参議院選挙で自民党圧勝と日本共産党の躍進をうけて、東西の地方自治体の市長選挙が行われる。西の神戸市長選挙については、神奈川県に住む私には詳細なことはわからない。インターネット検索で革新候補と保守系候補2人とが立候補するらしいというくらいしかわからない。拙論では、告示前の段階でいい加減なことを書くのは避ける。地方自治体選挙の位置づけを述べたい。
 2012,3年の衆院総選挙と参院選挙を経て、2016年までは国政選挙はないと言われている。だが、この3年間にも地方自治体の首長選挙と議会選挙は全国のあちこちで行われる。政府は国政に直接は影響しなくても、都道府県・市町村の首長や議会の選挙の動向に現れる国民の政治動向に無縁ではいられない。
 茨城県の県議会補欠選挙で、三選挙区で選挙があったが、 筑西市で、日本共産党候補が、自民党系の無所属候補を破って定数1議席にもかかわらず、当選した。
茨城県議会議員補欠選挙 筑西市選挙区
告示日2013/08/30
投票日2013/09/08
有権者数 88,548人
投票者数 32,872人
投票率 37.12%
候補者一覧
16,728票 鈴木 さとし 共産党
15,036票 保坂 なおき 無所属(自民党系列)
 また日本維新の会の地元大阪府堺市長選挙では、「大阪都」構想をめぐり、2期目の現職市長と維新の会とが対立した。現職を民主推薦自民支持で、自主的に日本共産党と社民党が別個に支持をした。維新の会は議員を立てて争った。結果は、5~6万票の差をつけて、現職市長が圧勝した。
 さて、10月13日告示27日投票開票の川崎市長選について述べたい。
 前にも触れたことがあるが、全体の経緯を確かめる上で、戦後の川崎市政の変遷について述べたい。
 市長公選になってから、川崎市では、ずっと自民党の金刺市長が連続して当選した。しかし、高度経済成長に伴う全国的な公害が、京浜工業地帯の中核都市川崎市では、重化学工業の煤煙によって著しい大気汚染となって大きな社会問題となった。さらに資本の高度の蓄積に伴い「働く者のまち川崎」で、市民の社会福祉や住環境労働問題などあいつぐひずみに、社会党と共産党とが統一協定をむすんで「明るい川崎市政をつくる会」を選挙母体として、川崎市労連の委員長で社会党員伊藤三郎氏が党籍を離れ、無所属となって市長 選にたった。結果は伊藤市長が勝利を収め、川崎に革新統一市長が続いた。伊藤市長と統一戦線は、着々と住民の福祉と労働権を尊重する市政改革をおこなった。このことは、横浜市の社会党飛鳥田一雄市長とも連携して、社会党・共産党・民社党が提携して、横浜国大経済学部教授だった長洲一二氏を候補として県知事選を闘い、革新県政が生まれた。東京・川崎・横浜・横須賀・神奈川と革新自治体が東海道を占めた。
 伊藤市長が病気のために、引退すると助役の高橋清氏が伊藤氏の市政を継承した。

 しかし、高橋市長の2期目になんと自民党が相乗りする高等戦術に出た。共産党は独自候補を立て、やぶれた。この頃に高橋市長を支援していた民主党の松沢成文代議士は、高橋氏の3期目になると、永田町官僚で大学教授の阿部孝夫氏を担ぎ出してきた。市長選は、高橋氏と阿部氏と共産党独自候補の決戦となった。阿部氏が勝利を収めた。阿部氏が3期目を終えて、今回の選挙を迎えている。松沢氏は県知事になり、途中から都知事の石原慎太郎氏に後継要請を頼まれるが、石原氏の直前の心変わりではしごをはずされた形となり、都知事は石原氏が、松沢氏は浪人となり、神奈川県知事はフジテレビアナウンサーの 黒岩氏が当選する。今回、自民が擁立した官僚で川崎市の財政局長と東京都に出向などの役職を務めた秀嶋善雄氏が民主党公明党の推薦も集めて立候補した。前回松沢成文氏の私設秘書で県議会議員を辞職して立候補、次点を獲得した福田紀彦氏が「完全無所属」と名乗りつつ、自主投票のみんなの党や維新の会の支持も期待しつつ、参院議員になった松沢氏の全面支援を受けている。

 これに対して、市内の市民・住民・労働団体が集まり「川崎民主市政をつくる会」をたてた。「会」の実行委員のひとりでもあった君島かよ子さんを候補者としてたてた。君嶋氏は、北大を卒業して厚労省(当初は厚生省)に入省、川崎市の職安、ハローワークなどに勤めた。退職後は法政大学大学院で修士課程を取得。中央大学大学院の博士課程で学んでいる。新婦人の会中原支部の支部長も務めている。

 まだ告示前ではあるが、君島ちか子さんに、革新統一自治体をつくった時の一方の政党である日本共産党も支持に回り、市民団体をフォローしている。
 神奈川県内に隠然とした政治力をもつ参議院議員松沢成文氏の応援を受けた福田紀彦氏は、市長選2期目41歳の若さを看板に精力的に動 いている。秀嶋善雄氏は、周囲がつくりあげたみこしにのって当選をめざしている。自公民三党の動員力は、川崎市経済界、連合、創価学会などの応援もあり、もし無党派層が棄権に多く回ったら、当選する。無党派層や若者達とリンクすると福田氏の当選もありえる。
 君島氏は、参院選や都議選などでの躍進が続く日本共産党への川崎市民の支持票がまとまると、新たな川崎型統一戦線として革新市政再生もありうる。
 私はインターネットで君島陣営の動きを追っているが、君島ちか子氏らの運動は、当選を目標にしているだけではなく、選挙運動そのものが政治的運動として、市民の学習会、講演会、イベントとバリエーションを工夫している。『川崎・阿部市政黒書2013年度版』は100ページを超えるそれ自体が現状分析として阿部市政の実態とそれへの対案を提示している研究書となっている。川崎市は、参院選挙選挙区で民主党で前々回百万票を超えるトップ当選を果たした牧野議員の得票を超えている。また区別に見ても北部の区以外は5つの区で民主党牧 野陣営を越える得票と得票率を獲得している。ひとつの区では60票ほどの差で牧野氏を追う結果だった。保守陣営が、福田氏か秀嶋氏に一本化すれば、君嶋氏当選の確率は低くなるが、保守陣営がともに新自由主義改革路線のバリエーション2人なので、票が割れる可能性がある。

 堺市長選で竹山市長は63歳、西林候補は43歳だった。今回、君嶋氏は63歳、秀嶋氏は44歳、福田氏は41歳。普通は若い政治家のフレッュなエネルギーということが有利に働くこともあるが、秀嶋、福田両氏とも、「革新統一市政かわさき」を全く経験していない。きわめて幼少の時期だろう。君嶋氏は「革新統一市政かわさき」を職場で雇用問題をリアルに直面して住民とともに担ってきた。その点では、竹山氏同様政治的識見が高い。秀嶋氏も新自由主義財政政策をかなり勉強されていると思うが、新自由主義政策の破綻にどう立ち向かい立て直すかというと、周囲のみこしかつぎを待っていてご自身の手腕を発揮できるのか。市民フォーラムでも、遅刻してきて20~30分で早退するように、 市民の声を尊重するのか疑問に感じた。福田氏は、最も若くエネルギッシュだが、松沢成文参院議員の援助だけでなく、自ら独立して政治的局面の判断をどうこなすか。

 これと同様のことが神戸市長選でも問われ激しい選挙戦となるだろう。大切なのは、選挙戦そのものが市民を啓蒙する政治運動であることだ。市民に絶望感を与える政治主義ではなく、市民に一緒に政治に取り組んでみようとする夢を与える選挙運動であることだ。
 ひとつひとつの自治体選挙によって、草の根が開拓されている。平和国家路線と「積極的平和主義=大国従属軍国主義」路線とどちらをあなたは選択しますか。 ひとつひとつの自治体選挙で、草の根で激しい護憲民主主義と改憲軍国主義の草刈り場の闘いが闘われているのです。