東京都知事選がたけなわである。桝添か、細川か、あるいは宇都宮かと、マスコミの論評は主要候補者の足どりを追ってやまない。
だが、意外と泡沫候補なみのレベルと見られている田母神俊雄元航空幕僚長の危険性について小論で考えたい。田母神氏の主要政策はほとんど安部晋三総理を支持している内容である。東京新聞1月25日朝刊を参考にした。原発問題では、「電力の安全性は必要、完全を確保して再稼働すべきだ」。経済政策では、「政府の方針は正しい。都も積極的に公共投資する」。外交では「外国とは仲良くするが、日本の立場は毅然と主張すべきだ」。安倍総理が最も自分の政策に近い候補を選べば、多分田母神候補の名前があがるだろう。
さらに、インターネット会社関連役員が田母神氏に肩入れするなどの効果もあり、「都知事にふさわしい人調査」では、田母神氏が一位となる。告示前のラジオNIKK EIの調査では、田母神氏は80%の支持率を集めている。2ちゃんねるの「ドクター・中松に投票しよう」という運動が発生して、中松氏が約35%を獲得した時に田母神氏はそれに急迫していた。
今回の都知事選が行われる直接の原因は、石原慎太郎氏が後継者にと指名して当選した猪瀬直樹氏の汚職疑惑である。同じ石原氏は今回、政党政治の枠組みを無視して、所属する「日本維新の会」の意向なと゛無視して単独で田母神氏を積極的に応援し続けている。
石原慎太郎氏は、安倍総理の別働隊である。安倍氏では総理という職務柄言えないきわどい問題発言を、石原氏に言わせている。最も石原氏自らが戦略上自覚して次々に不規則発言を連続してきた。欧米では、石原氏は、極右のファシストとみなすのが常識である。ファシストが政局のイニシアティブを握っていることが、どれくらい日本の国際的信用を失墜させていることか。
後世から見れば、あと半世紀後に歴史家は石原慎太郎は国民的人気を得た作家・政治家で東京都知事を三期つとめ、四期目の途中で再び国会議員として活躍した、とでも記すだろうか。石原氏の小説については、何も言わないが、政治家としての石原氏の特徴をひとことで言えば、「議会制ゴロツキト」である。それをうまく 利用している安倍晋三は、「議会制独裁主義」である。議会制独裁主義と議会制ゴロツキストの間にいる田母神氏は、都知事になった時に、どちらかに似たり寄ったりする言動をとるだろう。なぜなら田母神氏の公約そのものを読めば、そのような政治的立ち位置にいることを銘記しているからだ。
いままで石原氏は批判されつつも、4度の当選を果たした。その石原氏がマンツーマンで応援している田母神氏が、まさかの当選を果たすこともありうることを想定内に入れておいたほうがよい。私の1月25日現在の予想は、桝添、細川、宇都宮、田母神、中松の順である。宇都宮氏と細川氏のどちらかが当選するためには、お互いを批判するよりも、桝添、田母神を絶えず牽制しておいたほうがよい。当選しなくとも、田母神氏の得票結果は、極右勢力を勢いづかせて、安倍総理の急速な改憲策動を成功に導く有力な応援となるだろう。
細川氏と宇都宮氏は、どちらかが当選するための批判や非難のやりとりよりも、反安倍、反原発、反改憲のイニシアティブを安倍にいっそう強く持たせないために も、桝添、田母神両氏の政策的原理的批判に集中したほうがよい。
願わくば、宇都宮健児氏か細川護煕氏の明確徹底した反原発候補が当選してほしい。お互いが同じ反原発陣営を批判して力を殺ぐよりは、原発推進候補・軍国主義推進派を徹底して批判して、野心に燃える安倍議会制独裁主義者を、同じ自民党など保守勢力の中から、打倒させるための批判を徹底してほしい。
名護市長選でなりふりかまわず500億円の札束で当選させようとしたが、沖縄県民の志は、「武士は食わねど高楊枝」という点で「武士」をきどる石原慎太郎や安部晋三などをはるかにうわまわる精神的高潔さにあふれている。あやつり候補が落選したら、500億円融資は約束反故でどこかに消えてしまった。最低最悪あきれかえるようなショックを受けた安倍=石破執行部の退廃である。都知事選は、細川でも宇都宮でも当選者はどちらでもよい。桝添か田母神が2人とも当選せずに、宇都宮か細川が当選したら、安倍の首はふっとぶ。自民党内部から、総裁交代の声が背景の財界の強い要望に添って出てくるだろう。
議会制独裁主義者には草の根民主主義候補を。