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一般投稿欄

大企業と「うまくやっていきたい」共産党?

2000/6/1 プロテストマン

 いつも楽しみに読んでます。みなさんがきっと興味を持つであろうごく最近のエピソードを以下に紹介します。

 6月1日の『しんぶん赤旗』の1面に、志位書記局長が大企業の経営者を中心とした団体である経済倶楽部で講演をし、参加者から「90%まで一緒にやっていける」という感想が出たという記事が出ている。たしか共産党は「大企業中心の社会を国民中心の社会に切りかえる」という立場でこれまで活動してきたはずだから、財界人と90%以上同意できるというのはどういうわけだ、と思い、中央委員会の本部に電話をかけた。
 電話交換手は赤旗の政治部に回してくれた。最初に出たのは、Mという名の記者である。私は彼に、「共産党はこれまで大企業中心の社会を国民中心の社会に切りかえると言ってきましたよね。どうして、財界人の集まりで講演をして90%以上いっしょにやっていけるという感想が出て、それが大々的に赤旗で肯定的に紹介されるんですか? おかしいじゃないですか?」と聞いたところ、M記者は何と、「共産党はこれまで一度も、そんなことは言ったことはありません」と断言した!
 私「えっ! 共産党はこれまで、大企業中心を国民中心に切りかえるという政策を一度も出したことがない、そんなことを一度も言ったことがない、ということですか! 冗談じゃない! これまでそう言ってきたでしょう、だから私は支持してきたし、赤旗だってとってるんです。本当に、共産党は大企業中心を国民中心に切りかえると言ったことがないとおっしゃるんですね」。
 M記者「ええそうですよ。そんな単純なこと言ったことはありません」。
 私「単純なこと? 大企業中心を国民中心に切りかえると言うのは単純な政策だ、そんな単純なこと共産党は言ったことがないと、いうわけですか?」。
 M記者「そうです。共産党は、資本主義のルールを守れとか、大銀行とゼネコン中心の政治はやめろと言ったことはありますが、『大企業』というような一般的な言い方はしてません」。
 私「あなた、本当にそんなこと言っていいんですか? 私はこの発言をインターネットに流しますよ。いいんですね」。
 M記者「じゃあ、共産党がそんなことを言ったことがあるという証拠を出してくださいよ」。
 私「証拠も何も、これまで何度も何度も言ってるじゃないですか。そう言って支持を集めてきたわけでしょう」。
 M記者「じゃあ、こちらでも調べておきますので」(もう切りたそうだった)。
 私「調べておくって、あなた赤旗記者でしょう。党員でしょう。そんなこと、調べないとわからないんですか? 後で調べるんではなく、いま調べてくださいよ。インターネットだってあるでしょ」。
 M記者「ちょっと待ってください。じゃあ、いま調べますので」。
 しばらく時間。私はその間に手もとの5中総の志位報告を確認。その中で「大企業が主役の経済から、国民の家計・暮らしが主役の経済への転換をはかるべき」と書いてあるのを確認。
 M記者「いちばん最近出した政策では、そういうことは言ってませんね」と、5月31日発表の総選挙政策を持ち出す。
 私「あなたは、これまでそんなことは一度も言ったことがないと言ったんであって、一番最近の政策では言っていないなんて言ってないでしょう。5中総で志位書記局長は『大企業が主役の経済から、国民の家計・暮らしが主役の経済への転換をはかるべき』って言ってますよ。あなた5中総読んでないんですか?」。
 その後、さらに多少のやり取りがあったのち、今度は、この記事を書いた張本人であるY記者に電話が代わった(最初は名前を聞いていなかった)。
 私はM記者に対してした話をもう一度繰り返すと、Y記者はあっさりと「ええ、大企業中心から国民中心に切りかえると共産党は言ってますよ」と認める。あらま。
 私「そうですよね。さっきのM記者は、そんなことは一度も言ったことがないと言ってましたよ。じゃあさらに質問したいんですが、大企業中心から国民中心に切りかえるという政策を持っている共産党が、どうして大企業の経営者の集まりで『90%以上いっしょにやっていける』という感想をもらうことになったんですか? で、それをなんで、肯定的に赤旗で紹介しているんですか? 大企業の利益と国民の利益は対立しているんでしょう? 大企業の経営者と90%以上一致する政策なら、そんな政策は国民の90%以上と一致しない政策なんじゃないですか? それとも、大企業の経営者たちは、志位さんの話に感動して、心を入れ替えて、これまでの大企業中心の政治から脱却してもよいという考えになったということですか?」。
 Y記者「いえそういうことじゃなく、当面する政策に関して、つまり、経済の行き詰まりを打破するという政策に関しては、大企業とも一致する部分があるということです」。
 私「部分ではなく、90%以上でしょう? どうして90%以上も一致するんですか?  じゃあ、大企業と国民との利害対立はごくわずかということなんですか?」。
 Y記者「それは、単にそう発言した出席者がいたというだけのことですよ」。
 私「たまたまその出席者がそういう突出した発言をしたという記事の書き方になっていないですよね。あなたが記事を書いたんでしょう。『90%以上』云々は、中見出しにさえなっていますよ。もし、単にそういう発言をした人がたまたまいたというだけなら、何でわざわざ中見出しにしたんですか? 素人じゃないんですよ。あなた方はプロでしょう。どういう印象を読者に与えるのかを計算した上で、どういう記事の書き方をし、どういう中見出しをつけるかを決めるわけでしょう。ああ、今の共産党の政策は財界とも90%以上一致するんだな、そういう印象を読者に与えることを計算して、こういう記事を書き、こういう中見出しをつけたわけでしょう。それは、大企業向けのアピールなんでしょう。違うんですか?」。
 Y記者「そういう印象を持つのは、あなたぐらいでしょう。事実、そんな抗議の電話を受けたのは、今日あなたが初めてですよ」。
 私「他の人はあきれて抗議する気も起こらなかっただけでしょう。今の日本は大企業が支配者のわけでしょう。その支配を打破するのが共産党の目標なんでしょう? 打倒される対象である大企業が何で、90%以上共産党と政策が一致するんです?」。
 Y記者「大企業中心を国民中心に切りかえると言うのは、将来の課題であって、当面の目標は経済の行き詰まりを打破するということであって、その当面の課題では、大企業とも政策が一致するということですよ」。
 ついに、大企業中心を国民中心に切りかえるという目標ですら「将来」」に棚上げされてしまった!
 私「ちょっと待ってくださいよ。そんなことも将来の課題にしちゃうんですか? すると、共産党は経済の行き詰まりを打破するのに、大企業中心の社会を切り替えなくてもよい、そんなことをしなくても経済の行き詰まりを打破することができるという立場なわけですね」。
 Y記者「そうは言っていません」。
 私「じゃー、どういう意味なんですか? 大企業の支配なんてたいしたことではなくって、それを切り替えなくても当面はやっていけるということなんでしょう?」。
 その後、同じようなやりとりが何度か繰り返されたのち、Y記者は次のような驚くべき発言をした。
 Y記者「大企業とうまくやっていったらダメなんですか?」。
 私「えっ! 共産党は大企業とうまくやっていきたいんですか? その発言、インターネットで流しますよ。いいんですね」。
 Y記者「別にいいですよ。どうぞ」。
 私「わかりました。そうさせていただきます。共産党が大企業とうまくやっていきたいのなら、何で綱領に独占資本の支配を打破するって書いてるんです? そんなこと書いて国民をだますのはやめなさいよ」。
 Y記者「ああそうですか。わかりました。(ガチャン!)」。…
 一方的に電話を切られてしまった。むかついた私は、もう一度共産党本部に電話。もう一度、赤旗政治部に回してもらって、今度は、Kという名前の記者につないでもらった(電話を切ったY記者はどこかに行ってしまったらしい)。
 私「さっき抗議の電話をした者ですが、話の途中で一方的に電話を切られてしまったんですけど、電話を一方的に切った記者の名前を教えてください」。
 K記者「いや、名前はそのまあ言わなくてもいいんじゃないでしょうか」。
 私「どうしてです? 警察みたいに身内をかばうんですか。こちらは名乗ってるんだから、そちらも対応した人の名前を教えるのが礼儀でしょう」。
 K記者「いや、その、本人はもうどこかに出かけていないし、本人がいないところで名前を言うと、密告したようになるし…」。
 たぶん、この記者はY記者の後輩なのだろう。かわいそうだが、追及の手を緩めるわけにはいかぬ。
 私「いや、密告とかそういう問題ではなくて、電話での質問に対して正式の応答を共産党の赤旗記者としてやってるんだから、その発言に責任を持つべきだということですよ」。
 このやり取りをかなりやった挙句、ようやく名前を教えてもらった。同じ質問で問答を繰り広げるのは疲れるので、K記者には別の質問をした。
 私「同じ記事に、次のような一節があるんですよ。読みますよ。『出席者が「天皇制の問題は『凍結』するということだと思うが、いつ解除するのか」と質問。志位氏は『「凍結』解除を決めるのは国民の合意です…」』。この部分なんですが、暫定連合政権で安保条約廃棄の政策を一時的に凍結するというのは、以前に聞いたことがあるが、天皇制の問題について『凍結』するという表現は今回はじめて聞きました。これまでにいつ共産党は正式な場でこういう表現をしたんですか」。
 K記者「いや、私も初めて聞きました。たぶん、その場の雰囲気というか、相手の発言に合わせて志位さんがそういう言い方をしたということでしょう。それに共産党は、綱領でも君主制の廃止とは言ってないんですよ。私も言ってると思っていたんですが、実は言ってないんです」。
 議論が思わぬ方向に行ったのでびっくり。
 私「いや、あなた、それはとんでもない勘違いですよ。共産党は綱領でちゃんと言ってますよ。行動綱領の部分には書いてないけれど、綱領の中でちゃんと君主制を廃止するって書いてますよ」。
 K記者「いや、書いてないんですよ。いま、綱領持ってきますから、待ってください」。
 その間に私もいちおう綱領を確認。というか、確認しなくても常識なんだけど、いちおう確認し、「君主制を廃止し」という一文があるのを確認。
 私「綱領にやっぱり書いてありますよ」。
 K記者「えーと、それはどこですか?」。
 私がその該当部分を読み上げる。
 K記者「あっ、ありますね」。
 私「君主制打倒という言い方はしていないというのは、これまで何度か強調されてますけど、君主制の廃止はちゃんと言ってるんですよ」。
 K記者「はい、そうですね」。
 あまり追及するのは気の毒なような気がして先に進む。
 私「先ほどの話に戻しますが、赤旗の記事でこういう書き方をすると、読者の中には、『共産党は、天皇制の問題についても「凍結」という言い方をしているのか』と誤解する人が出てきますよね。志位書記局長が、その場で相手の発言を訂正しなかったとしても、記事にするときには、やはり何らかの注釈が必要だったんじゃないですか?」。
 K記者「そうですね。その疑問にはたしかに当たっている面があると思います。ただ、われわれとは立場の根本的に違う人々の集まりで発言されている事情と、すぐに天皇制を廃止するわけではないというのはその通りだという2点を理解していただきたいんですけど。でもたしかに、読者の一部は、あなたのおっしゃるような誤解をする人もいると思うので、私の一存では決定できませんが、少し相談してみたいと思います」。
 私「そうですか。それではよろしくお願いします」。
 最後は、なんとなく、平和のうちに終わったが、このやり取りを通じていくつか重要なことが明らかになったように思う。
 一つは、赤旗記者の中に、明らかに、共産党の当面する政策は大企業や財界とも一致するものであり、大企業の支配を打破するという目標ですら将来の課題として棚上げされているのだ、と思っている者がいること。そして、そう思っている赤旗記者がいるということはけっして偶然ではなく、おそらくは、党本部の雰囲気として、大企業とも仲良くやっていくのが今の共産党の基本姿勢であるとみなされていること、そしてそれに対する違和感が、赤旗記者のようなエリート党員の中には見られないこと、である。
 そういえばたしかに、最近になればなるほど、不破委員長の発言の中や、赤旗記事や、党の基本政策においては、大企業の支配の打破とか、大企業中心の政治を切りかえるという表現が後景にしりぞいて、単に大銀行とゼネコン支援に反対とか、資本主義のルールを守らせるといった、はるかに穏健で後退した表現が中心になっている。今回、抗議の電話をしてみてはじめて、党本部を支配している空気、あからさまには言われないが、党の中枢部分ではおそらく暗黙の了解となっている現在の基本路線というものを知ることができたような気がする。
 もう一つは、「君主制の廃止」をめぐるやりとりで明らかなように、赤旗記者のようなエリート党員でさえ、自分の党の綱領についてまともに知っておらず、君主制の廃止を書いていないという信じられないような思いこみさえ存在可能だということである。綱領に君主制の廃止が書かれていないという勘違いが成り立つということは、共産党が永遠に天皇制と共存してもよい、そんな共産党でも自分はよい、と思っている党員が、赤旗記者の中にさえいるということである。
 政権欲しさにとめどもなく現状と妥協し、現状を追認し、「国民の多数が同意するまで」という口実のもと、次から次へと綱領や基本政策の水準を後退させ、将来に棚上げしていくという現在の路線が、いったいどこまで進行可能であるかを、この一連のやりとりは示しているのではないだろうか?

 <追伸>以上の投稿をした後、偶然だが、[JCPウォッチ!]の掲示版に、K記者と同じたわごとを書きこんでいる人がいるのを発見してびっくりした。その人も、「ちなみに共産党は、未だかつて『天皇制廃止』を綱領にかかげたことが一度も無いのはご存知か。まあ、『一度も』と言っても、今まで綱領を変えたのは1回しか無いが、ね。そもそも共産党は、天皇制問題は『未来の国民の選択することだ』として完全に棚上げしている」などと、知った風なことを書いている。この人は、共産党本部に知り合いがいるそうだから、どうやら共産党本部に蔓延しているドグマをそのまま信じたらしい。まあドグマを信じるのは自由だが、一度でいいから党綱領をきちんと読んでから、掲示版に書きこむべきだった。