私は、近年の日本共産党の決議・決定を逐一読んではいませんでしたので、最近の論調の変化やその兆候に、うかつにも気がついていませんでした。
ところが、8日付け「朝日新聞」報道:有事自衛隊容認発言および13日付け「しんぶん赤旗」弁解にあきれたため、ひょっとして最近の変化がどこかにあるのかなと思い、20回および21回大会の決議を読んでみました。すると、21回大会決議に、巧妙に今日の自衛隊政策の伏線が忍び込まされていたことに気が付きました。確か、この点は、貴誌HPでも論及があったことを思い出し、改めて、党の計画性?に愕然としているところです。
慧眼なる諸氏は既にご承知のことと思いますが、21回大会決議(「前衛」693号18ページ上段)の次のくだりが、党の政策転回の布石と思い当たりました。
「同時に「あらゆる戦力の放棄」という方策が、安保条約を廃棄する政権ができたからといって、ただちに実行できる方策でないことは、明白である。安保廃棄での国民的合意と、自衛隊解消の国民的合意とは、おのずからちがいがある。安保廃棄とともに自衛隊の大幅軍縮、米軍との従属関係の解消、政治的中立性の徹底などにとりくみつつ、憲法九条の完全実施―自衛隊解消は国民的な合意の成熟によってすすめるというのが、わが党の立場である。」
このあとの記述で、独立・中立の日本による真の友好と平和の関係の樹立が、日本の安全を保障し、憲法の平和原則の完全実施への国民的合意を促進し、「恒常的戦力」によらないで平和と安全を確保することを可能にしていくとする展望は示されてはいます。しかし、このような論旨から前掲の記述だけを切り離してみると、今回の有事自衛隊容認の立場へはわずかな一押しで可能となる、極めてあやしげな記述であることが見て取れます。
20回大会決議からのこうした変更とその意味合いについて、21回大会当時どのような―あるいは、どの程度の―認識が党員にあったのでしょうか。いずれにしろ、今回の有事自衛隊容認発言に結びつく重大な記述になろうとは、おそらくほとんどの党員は予想できなかったのではないでしょうか。
もとより部外者たる私の知るところではありませんが、もし、この観測が正しいとすれば、党執行部の今回の政策提示は、党員や党支持者に対するだまし討ちといって過言ではないでしょう。
最高法規たる憲法を誠実に擁護する立場から、憲法に明白に違反した存在たる自衛隊のすみやかな解散・解消を具体的に進めていこうとする政策を掲げるのに、どんな遠慮がいるというのでしょうか。
現実的な展望もない連立政権への参加「資格」に汲々とし、原則的立場を放棄して、提携をへだてる敷居を相手に合わせることにだけに専念し、臆病風に吹かれている執行部の姿は、まったくみじめというほかありません。
党員諸氏はご自身の頭で考え、ご自身の信条に照らして、今回の不破発言をどう受けとられているのか、投稿はともかくとして、少なくもこの際真摯に考えていただきたいと思うものです。
なお、この問題を考える上で、和田進「戦後諸政党と憲法・憲法学―日本共産党の憲法論の展開」(日本評論社「講座憲法学 別巻」所収。1995年)が参考になります。