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不破自衛隊論再論ー12回大会決定に学ぶ

2000/6/13 大塩兵七郎、50代、会社員

 6月13日付け「しんぶん赤旗」紙上にて、8日付け朝日新聞報道についての弁明が出されました。読んでまたまた一驚、今回の報道で「理論的にいえば、侵略に対抗する手段として、自衛隊を活用するのは、当然」としたのは、第12回党大会以来の見解であると、あろうことか党大会決定を改竄して開き直っているのです。
 同記事によれば、同大会の「平和・中立日本」の安全保障政策の部分で「『可能なあらゆる手段』を使って、自衛の反撃をすることを明記しました。自衛隊が存在している段階では、この『あらゆる手段』には、自衛隊がふくまれることは、当然です。」と胸を張らんばかりの解説です。
 そんな解釈は寡聞にして今日の今日まで聞いたことがありませんでした。我々は騙されていたのでしょうか。
 12回大会決定「『民主連合政府綱領についての日本共産党の提案』について」四章2節を読み返しますと、上記引用部分だけを平板に引用した赤旗記事とは面目を異にし、その文脈に行き着く前に、かなりに説得的で周到かつ動態的な考察が行なわれていることが分かります。
 「ではなぜ民主連合政府は、すぐ憲法第9条を改正して、いまの自衛隊をつかうとか、必要最小限度の自衛措置をとるとかしないのか。」と問題提起の上、憲法改正問題というのは社会全体の歴史的発展に即して提起されてくる問題であり、第9条の問題だけで手をつけるべきでないとし、民主連合政府の安全保障上の最大の任務は現実に日本をおびやかしている日米軍事同盟を解消して平和・中立化を達成すること、アメリカ太平洋軍の一環にくみこまれて日本軍国主義復活の推進力となっている違憲の自衛隊の増強に正しく対処することにあると正しく指摘しています。
 詳細な引用は割愛しますが、このあたりの、前提として論じられている記述は十分に読み応えのあるものですから、是非、本発言にアクセスした方は、直接これに当たって下さい。ただし、第9条と自衛権についての理解は、かなりの問題を抱えており、その問題点は、「さざ波通信」を参照して下さい。
 さて、決定は、こうした前提に立った上で、「このような急迫不正の侵略にたいして、国民の自発的抵抗はもちろん、政府が国民を結集し、あるいは警察力を動員するなどして、この侵略をうちやぶることも、自衛権の発動として当然であり、それは憲法第9条が放棄した戦争や武力行使でもなく、同条で否認した交戦権の行使や戦力保持ともまったくことなるものです。」として、自衛措置のありようを節度をもって記しています。見られるとおり、実力の行使は警察力動員にまで抑制されています。自衛隊の存在は否定され、その縮小や隊員再教育の必要が説かれこそすれ、「あらゆる手段には自衛隊がふくまれるのは当然」だとは、どこにも記されてはいません。
 13日記事では、末尾に、「民主連合政府のもとでは、三つの改革をすすめる」として、自衛隊への「改革」を但し書きとして付け加えてはいますが、その論理は、12回党大会決定に比べてもはるかに歪小化されています。また、この「歯止め」さえ、朝日記事には明記されていないことも問題です。
 自党の大会決定の精神と文言を、かくまで自在に改竄する不破執行部の暴走・迷走をこのまま見過ごしていいのでしょうか。「王様は裸だ!」と声をあげようではありませんか。
 なお、8日付け、朝日記事のもう一つの柱である、天皇の問題については紙幅がなくなりましたので、ここでは、天皇という制度が果たしている、民主主義と人権への抑圧と統制にこれを動員しようとする、現実の政治動態に対する戦いなしに、これまた平板な「共存」では済まされないのだということを指摘しておきたいと思います。