1.はじめにーーポスト総選挙こそ天下分け目の戦い
総選挙が終わり1週間。しかし選挙が終わっても、常にしっかりした天下構想というものが磨かれ、訴えつづけられねばならないのです。とくにそれは民主党、日本共産党など野党陣営に言えます。政権獲得への甘い期待は捨て、しかし一方であきらめることなく、自分を磨いてアピールする努力をしつづけるべきです。
各野党がそれぞれの政策を懸命に主張し顧客を開拓する事で、結果として投票率を上げて自公保を次の都議選、参議院選挙、さらに森総理の失態次第では、あり得る総選挙で潰滅させましょう。せめて与野党伯仲にはもっていきましょう。今日この一刻一刻が天下分け目の戦い、勝負の全てであると愚考致します。
今回は、前回述べた愚見を少しづつこまかく分野に分けて考えてみます。一応三回のシリーズに分けて、セイフティーネットの張替えについて論議していきます。労働分野、生活分野、自然と人間の関係の三分野です。必要に応じて南北問題や都市と農村の問題も考えて行きます。本日は社会保障についての愚見を中心にのべさせていただきます。
2.日本の社会保障制度の歴史と概略、問題点
日本国憲法では「生存権」が規定されています。これが日本の社会保障制度の大元の大元といえます。戦前はこのような制度ははっきりとは定まっていませんでした。戦後、なんどかの改善を経て国民皆保険(医療)、年金制度が確立しました。しかし、1980年代以降は、社会保障分野は後退を迫られました。生活保護の「適正化」とか、老人医療費の有料化、さらに最近では医療改革、年金での幾度かの給付水準引き下げ「改革」などがあげられます。背景には経済成長率低下(これは年金財政を圧迫する)、財政悪化、少子高齢化、があります。また国民の間にも、不満感、とくに世代間や階層間、職業間での不公平感が広がっている事は事実です。将来への不安感が広がり、人々は自己防衛に走り、消費を冷え込ませています。これは、愚考致しますに日本の社会保障制度はお上主導(中央集権)で、国民による自治が及ばず、連帯感を育てるものではないからではないでしょうか?お上に無理やり年貢を納め、「弱者」にいわば権利ではなく「恩恵」として給付される。こういう精神構造が残っていますし、制度をとっても官僚主導の感がいなめません。そうなると、旧新進党や民主党、経済学者によく見うけられた官僚攻撃に名目を借りた、福祉切り捨ての主張が多くの人に受け入れられるようになってしまいます。連帯の精神が根付いていないから、社会保険料も消費税も全て国民個人個人には、うざいものにしか見えません。もちろん、企業側が社会保険料をうざいと感じるのはわかりますが。階級的利益としては当然ですから。都市と農村の間の問題も似ています。官僚が無理やり取った税金(年貢)を地方にばらまくと言う形を取る限りは農村の自立は望めず、また都市も不満がたまり、都市と農村が協力して発展する方向が見出せず、むしろ、対立が煽られるでしょう。
3.「官主主義、対立」から、「民主・連帯・自治」へ
いまの体制は「官主主義、対立」の制度です。これに対し、「民主主義、連帯、自治」の社会保障制度を確立すべきと愚考致します。社会保険の給付は「自分に責任がないのに稼げなくなってしまった人のためにみんなで賃金を代替してあげる」という精神で行うべきです。それは、「消費税で年金をまかなえ」とかそういう主張とは次元が異なります。権利としてまた連帯の成果として行うべきです。具体的には年金は「老齢のため稼げなくなった人のため、賃金を代替してあげる」 、失業保険は、「失業で働けなくなった人をみんなで助けて賃金相当分を助けてあげる」という精神にするということです。ドイツやフランスの制度はどちらかというと労働組合の相互の助け合いと言う精神が強いように聞いています。労働分野での「セイフティーネット」です。そのためには、年金をはじめ社会保険制度は政府から切り離すべきです。国家行政組織法8条にあるような独立性の強い行政委員会とし、その運営者は準公選で選ぶとかすれば大分違ってくると思います。こうして、「お上の恩恵」という伝統を打破し、連帯と自治の制度へ切り替えて行きます。その制度は、統合的に運営され、所得比例の保険料と給付とする、ただし最低保障は国が行う、とすればよいでしょう。国の役割はあくまで最低補保障です。また介護保険ですが、これは労働分野というよりは生活必需サービスを供給する仕組みと言えます。生活分野でのセイフティーネットといえます。これは地方自治体の役目です。それには下手な介護保険よりは、思いきって、地方に財源を移す。そして、中央政府は地方からの分担金で運営される。その分担金は応能原則で出していただくという形、こういう財政システムへの改革が先となります。最初は地方税で介護目的税も良いでしょうが、次第に一般財源を無駄な公共事業(例えば重工業型社会を前提とした基盤への投資など)からの脱却でまかなっていただく方向にすべきと愚考致します。国の財源がなくなるという懸念もありますがそこは例えばガソリン税を道路整備特別会計に回すのはやめて環境税にすればいいでしょう。いままでのようにいったん税金を国に入れて、その後地方に分配すると言うやり方では不満が出るばかりです。そうではなく主体的に国へ分担金を出す。都市のほうが例えば、外交や防衛と言ったサービスの恩恵は大きく受けていますから。あときめこまかく都市から農山村への自立支援策なども野党が首長を取った自治体ではどんどんやっていくべきでしょう。
4.官僚から大会社への権力丸投げを阻止せよ
今の民主党などの改革論議は、結局、いままで官僚が権力をもっていた体制はけしからん、だから大会社に任せろ、ということです。しかし結局それは本来国民にある主権を官僚が預かっていたのを大会社に丸投げすると言う事に他なりません。
断固「財政再建」「構造改革」には反対しましょう。官僚から大会社への権力丸投げが結局橋本政権いらいの方向でした。社会保障でも雇用でも金融でも、経済政策でも環境でも。しかしそれではいけません。「官主主義から大会社優先主義へ」が民主党であり、自由党はさらに社会保障分野では「自助」を前面に出しています。どの分野でも「官主主義・集権主義、対立主義(都市と農村、世代間、階層間の対立が激しくなるような悪政」から「民主主義、地方主権主義、連帯と自治」に変えていくことこそ重要であると愚考いたします。