>構造的=産業循環的失業、つまり労働過程からの強力的放逐と社会的疎外を「超克」するためにも、いよいよ資本制企業からの決別が始まった。
「決別が始まった。」学生さんの熱意はわかりますが、共産党員であるならばこの機会に、次の2点をご勉強下さい。
1. スペインのモンドラゴンやイタリアのレガを真似て、日本でも生産協同組合の運動がある。産業循環的失業の犠牲者であった日雇い労働者の組合「全日自労」が、構成員各自の出資で自ら事業を興し、労働者協同組合を結成し、事業団として、民医連病院などの清掃下請けに入っている。創設者は左派労働運動の著名人・中西五洲氏だが、現在の幹部は、永戸祐三氏を始めとする70年前後の全学連幹部たちで「新日和見主義者」。私は偶々ここの事務職員(党員)と知り合い、実態を聞いた。労働過程からの強力的放逐と社会的疎外を「超克」するどころか、幹部の風俗遊びへの出資金使い込みを指摘した職員に対し、新日和見主義時代の査問を思わせる脅迫を行ない、「業務命令」によって口を割らせようとしたり、ビラまきに対し集団暴行を加えたり、それはそれはすごい「超克」ぶりですぞ(日本労協連鹿児島事件)。倒産企業が丸ごと労働者協同組合形式で加入したりと、積極面もあるけれど、あなたの言うようなバラ色の生産協同組合ではないことは知っておくと良い。
2.柄谷行人氏も、「共同体から一度脱落した者による」協同組合を提唱している。この含意はわかりますか? 組織に先行して、諸個人の権利があることを認めないと、戦前の「協同主義」に陥る危険性の方が大きいということだ。三木清や賀川豊彦という、左側のビッグネームが、資本家-労働者という二項対立を「超克」するものとして、戦前「協同主義」を唱え、結局は官僚による統制経済と侵略戦争に道を開いたことは、銘記しておこう。つまり、構成員出資による協同組合は、構成員個人の権利を十二分に保障し、ある程度個人主義・分権主義的に運営しないと、中央の理事者、理事会の暴走を生むのみならず、かえって社会ファシズムを招く要因になりやすい、ということ。WEBサイトもある「大阪いずみ市民生協事件」を学び、またなぜGHQは日本占領直後、農協および漁協の中央団体を解散させたのか、夏休みにその意味を学んでおいて下さい。
もちろん私は、今の日本共産党が、社会主義の青写真を有権者に問えないことを苦々しく思っている。「基幹産業の国有化」という貧困なモデルしか、なかったからだ。世界資本主義への対抗手段としてでもいいし「協同組合社会主義」でもいいから、共産党はあなたの主張(?)に耳を傾けるべきでしょう。ただ、新日和見主義事件以来の、協同組合論をめぐる共産党内のねじれが、あなたの最新思潮への直視・検討を妨げているのです。