金子満広共産党副委員長の二男の方の「離党手記」が月刊現代の今月号に発表された。詳しいいきさつに関しては第三者にはわからないこともあり論評することは避けたいと思う。しかしこの件に関して、かつて自分自身も党を追われた経験を持つフリージャーナリストの有田芳生氏のホームページ「有田芳生の今夜もほろ酔い」、9月4日付け「酔醒漫録」欄に金子満広氏に関する興味深いエピソードが語られている。
それによると1983年ごろ、小田実氏を「全国革新懇」の世話人にするために(このエピソード自身も興味深いが)、小田実、上田耕一郎、金子満広、有田芳生の4氏によるしゃぶしゃぶを食べながらの会談が行なわれたという。その席上話題が自衛隊のことに及び、そこで金子氏が自衛隊について「われわれが政権をとれば合憲だといえばいいんですよ」と発言したというのだ。さすがに小田氏が「それは無茶だ」発言したとあるから面白い。今から17年ほど前のこの発言、その責任が問われるかどうかは知らないが、果たしてこれはジョークなのか、それとも本気だったのか、本気だとするなら、金子氏個人のアイデアなのか、集団的に検討されたものなのか等々想像の輪は幾重にも広がっていく。またこの発言が事実だとすれば、「やっぱり共産党は一旦政権を取ったらなにをするかわからない」という「攻撃」もあながち的外れだとはいえなくなる。
しかし一方では、他の政党(特に自民党)では幹部が自党の政策と違う政策を述べることは間々あることであり、共産党にも実は個人的見解の相違が存在することの例としてもっと早く世に知らされていれば面白かったとも思う。この金子氏の発言はずいぶん乱暴で、場合によっては責任問題にもなりうるものだが、個人の「発言」が聞こえることは共産党にとっても決して悪い事ではないと思う。様々な問題で党幹部の「個人的見解」はこれからも明らかにされる必要があるのではないか。そこで政党幹部というのは試されるのではないだろうか。そういった個人の「顔」が見えてこそ人々はその人、その「党」を判断できるのではないか。
有田氏は共産党を追われたが決して「反共」の人ではなく同党の民主的再生を願う良心的ジャーナリストとして発言を続けている。氏には引き続き氏の知りうる限りの共産党幹部の「個人的発言」を公表してもらいたいし、現職の政治記者、ジャーナリストには他党同様共産党に関しても党幹部の「個人的見解」をまでつかむ取材を期待したい。