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可部線問題への見解――都市と農山村共存できるビジョンを高く掲げよ――

2000/10/16 地域経済分科会、20代、サラリーマン(連合組合員)

 こんばんは。「保守」の地域経済分科会です。

0.はじめに
 このたび、JR西日本は存廃問題で揺れる広島県北西部の可部線の可部ー三段峡間について、11月から試験的に増便しその結果を見て来年三月にも判断するとしました。
 亀井自民党政調会長の申し入れで決まったものです。
 現在421人の1日平均利用者数が800人を超える事が存廃の基準となるとのこと。
 今回は地方圏の交通網を「ナショナルミニマムを確保」する立場から検討したいと愚考致します。

1.バス代替は結局公共交通死滅へのステップに過ぎない
 バスにしても、規制緩和で結局撤退の自由が認められる事になりました。で、社会全体の便益を考えてみます。バスは、税金で維持する道路の上を走ってますが、列車はJRが設備を維持している。社会全体でみたコストはどれほど差があるでしょうか。
 鉄道からバスへの転換を認めれば(むろん、法的には規制緩和でそれを阻止する手段は無い。地元行政が補助を出すなどしない限りは)それは企業としての営業や効率しか考えていないことになります。で、結局それは、バスでさえも廃止してしまうことにつながります。

2.過疎地切捨ては都市住民にもマイナス
 しかし、過疎地をそうやって切り捨てる事は、結局都市住民にも大きな損失になることを考えるべきです。過疎地をうまく活用すれば都市の過密は緩和できたかもしれません。あるいは、自然豊かな居住空間を享受できるチャンスを無くしてしまうかもしれない。経済競争と言う点で考えても実は多様な地域を抱える国のほうが競争力があると愚考致します。
 むろん、過疎地へは、医療や教育などの条件整備をしないと人は戻ってきませんが。広島で考えれば、広島都市圏と近接する中国山地の農林業など様々な資源を結合して様々な発展の可能性が出てくるのではないでしょうか。そういう可能性も切り捨てて良いものか。
 例えば、山間部のバイオマスをうまく使って新たな循環型の都市づくりをするとか。観光でも、瀬戸内と山間部を統合したルートを開発するとか。さまざまあるでしょう。私のような者(広島でも安芸ではなく東京育ちの備後の人間で、やや県北西部の事情には疎い)が考えるよりもっといろいろなアイデアを持っておられる地元の人も多くおられるでしょう。

3.広島市や県、国も責任を持って総合的な都市と農山村共存型社会のビジョンを
 都市と農山村は共存できるようなビジョンを行政の責任として打ち出すべきです。県や広島市はいくつかの選択肢を市民に提示すべきです。
 とくに、今は東京などの大都市部で自分がゴミ処理や水などで農山村に依存している事も忘れて「公共事業は怪しからん」と叫ぶだけのポピュリズム、自己中心主義が横行している時代。しかもそれが、6月の総選挙での民主党の躍進や、昨年来の石原知事への喝采へつながっている。そういう時勢ですからなおさらです。
 その中で、山間部の交通も、教育も医療もナショナルミニマムとして、地域作りの中の一環として、しっかり守って行く。農業ももちろんです。今の農林省は食糧安保を言う割には、耕地が減って行くのを放置している。これでは行けません。しっかりと戦略的にこれだけの耕地は維持すると言う事を言うべきです。
 イギリスでも、ナショナルトラスト運動が盛んであり、そこで多くの農地を維持しています。イギリス人は保守的と言われますが、ここでは「良い意味での」「保守」性が発揮されています。
 もう一つ交通政策と言う事で注文をつけるなら、公共交通の維持には、駅からの交通手段も欠かせない。自転車や小型バスなど、いろいろ考えられますが、そこらへんもひっくるめた行政の支援が必要と愚考致します。
 また、鉄道と自動車の競争条件を同じにするため、線路は県や市町村で維持する「上下分離方式」も検討すべきです。いや、何年も前から言って来たのですが。。

4.革新陣営・及び「良い保守派」に期待
 とにかく、都市と農山村が共存できる社会へ。なんとしても移行せねば、21世紀の日本の、広島の未来はありません。
 私は、この点では日本共産党、社民党などの「革新」及び、農村を大事にする「良い保守派」に期待します。
 なお、私は、都市部での自民党の後退に慌てて表面を取り繕って都市住民に阿る「保守派」は「保守」とは呼ばず、ポピュリストとして批判します。ちょっと選挙で後退したくらいで、自分の信念を曲げるようでは実はその人は確固たる信念などないということです。さっきまではばらまきの先頭に立っていたのに、今度は公共事業見なおしと言う、某自民党大物などは評価できません。「君子は豹変す」とはいいますが。。ちょっと違うでしょう。意味が。
 ともかく、可部線問題は、革新及び「良い保守派」と「大都市の自己中心主義=(自由党、民主党、財界の一部など)」の戦い、さらには一見弱者の味方の振りをして地方に金をばら撒くのは良いが実はゼネコン奉仕の「自民党・公明党の大多数」との戦いの一環と愚考致します。
 「連帯」と「自治」、「共存」を前面に押し出して行かないと、自己中心主義者や効率主義者による「攻撃」に打ち勝つ事は出来ない事を認識しつつ問題に対処していきたいと愚考致します。