こんばんは。
「保守」の地域経済分科会です。
1.「川田当選」は低投票率の枠内
昨日投票が行われた東京21区補選。
無所属の川田悦子さんが自民、公明、保守の推す加藤さん、民主党の長島さん、社民党の工藤さんを押さえ、初当選。
新聞は大きくこの事を取り上げています。
しかしながら、これは低投票率の枠内に過ぎません。4割そこそこ。
いままでの投票率の推移とその要因を大胆に分析致しますと以下のようになります。
2.バブルに乗っただけの80年代末の社会党
89年参院選では、自民党から離れた層が日本社会党に大量に流れた。90年衆院選でも、大分自民党に戻ったが、社会党への追い風は続いた。
しかしこの層は、92年の参院選では多くが棄権し、投票率低下、社会党の不振を招きました。結局、社会党は「反自民」の雰囲気に乗っただけの「バブル」だったのです。
かといって、自民党の支持層も腐食が進んでいます。バブル経済が89年を頂点に崩壊し、91年からは景気が後退します。そして、経済の伸びが小さくなると、自民党はいままでのようには幅広い支持は得られなくなってきました。したがって自民党も絶対得票率ではさほど伸びなかった。
93年総選挙では、多くが日本新党やさきがけ、新生党などに向かい、社会党は歴史的敗北を喫しました。自民党も過半数割れ、政権から転落しました。
3.「自民党不信」から「既成政党不信」、「日本共産党躍進」時代へ
その後政権は「非自民細川→非自民非社会羽田少数内閣→自社さ村山」とめまぐるしく変わり、有権者の政治不信はつのった。新党へも不信がたかまり、95年春の統一地方選挙では、ついに青島=ノック現象となりました。
そして夏の参院選では、投票率は4割そこそこへ落ち込みました。自民は伸び悩み、社会は惨敗。公明の基礎票にのっかた新進党と、筋を通してきて、信頼を得ていた日本共産党が議席を伸ばしました。
96年には景気が少し上向き、同年の総選挙では自民党が過半数には届かなかったが、善戦しました。日本共産党も唯一連立騒ぎに関与しなかったので不信の対象とはならず躍進。
97年夏までは自民党も調子はよく、橋本内閣は「六大改革」に着手。一方で、規制緩和などで自民支持層は腐食の度合いを深めていました。かといって、新進党などは有権者から不信の目で見られており、与党による「一本釣り」もあって後退。都議選では自共躍進という結果になりました。
同年秋、消費不況と金融恐慌が深刻化。自民党の支持率は激減。有権者も翌年の参院選では久しぶりに投票所に足を運びました。そしてその増えた分はそのまま日本共産党と民主党に流れ、橋本内閣は退陣する羽目になりました。
その後、「なんでもあり」の小渕内閣となり、財政も積極財政に転換。99年1月自由党、10月には公明党を取りこみ「自自公」体制が出来あがりました。
しかし、自民党の腐食は覆いがたく、99年春の都知事選挙では石原慎太郎が当選し、自民党は知事選三連敗となりました。
4.2000年に入って――自民腐食続くも政権ちらついて野党も自滅
2000年に入り、自由党はこのままでは埋没してしまうと言う危機感から連立を離脱。この混乱の中で小渕さんは倒れ、森内閣となります。
ご存知の通り解散総選挙となります。
神の国発言などで、森総理は株を下げまくりました。にもかかわらず、野党も精彩を欠きました。民主党は「加藤紘一総理」を示唆し、有権者の信用を失いました。日本共産党は民主党がいやがっているのに政権参加を狙い、却ってみっともなく映りました。結局、自=公が物量と組織力でなんとか過半数を維持したわけです。
野党は民主も共産も政権が目の前にちらついて少し戦略を誤りました。せいては事を仕損じるとは、このときの鳩山代表と不破先生のためにあったと愚考せざるを得ません。
5.自民支持層腐食の要因――経済成長率低下と規制緩和――
自民党支持層は、なぜ自民を支持してきたかと言えば少々汚くても、経済成長を約束してくれる。だから、財界、農協ばかりでなく、本来革新系を支持してもおかしくない中小零細企業や労働者までウイングを左へ伸ばしたと愚考致します。
ところが、経済成長鈍化はこの構図を崩します。規制緩和などをやれば今度は農民、中小企業を敵に回す。こんなことで、どんどん基盤が崩れ、いまのていたらくとなったのが自民党です。投票率4割で勝てなかったとは、「自民党も落ちたものだ」と言わざるを得ません。
民主党もしかりです。旧社会党と同じで「バブル」の上に乗っている「砂上の楼閣」的政党である事が今回露呈した。
6.ナショナリズム・衆愚政治の火はいつついてもおかしくない
では、川田さんはといえば、結局無党派といっても、「投票に行った」無党派の上に乗っているに過ぎません。もし、例えばもう少し演説のうまいファシストが現れたとしたら。。
今回の選挙で投票に行かなかった無党派まで浸透し、大量得票するかも知れません。反農村、反社会保障、反外国。これをうまく訴えると結構馬鹿受けする可能性はあります。
なにしろ、今の大都市の住民、とくに若い層は、自民党によって収奪を受けていると感じている。年よりのために税金を使われ、農村のために税金を使われている。外国はなんか「ムカツク」。こんな空気が充満してますから、火は、ちょっと演説がうまい人間がいればすぐ付きます。
民主党がそれに部分的に成功しています。石原知事もしかりです。しかも、その「ファシズム」は軍国主義と言う形は取りません。偏狭なナショナリズムとか、弱者への切り捨て、都市と農村、また労働者同士の対立を煽る政治などの形で出てくるでしょう。また、インターネットなどが発達した今、想定外の形のナショナリズム、ポピュリズムが多くの人を巻き込む可能性は否定できません。
「保守系の人間も革新系の人間もこのままではマジで危ないですよ」と言わざるを得ません。この予言が当たらない事を祈るしかありません。