拓さん。こんにちは。
最近、この板で自衛隊問題について「論陣」を張っている「前衛」と申します。拓さんのご質問は、多分、多くの国民が抱いている感情と共通すると思いますので、私なりに共産党の自衛隊政策の特徴について、できるだけ簡潔に申し述べてみたいと思います。
なお、私は1月7日以降、何回か自衛隊問題について述べておりますので、過去ログを参照していただけると、問題の全貌がよくご理解いただけると思います。また、共産党に直接質問することもお奨めいたします。
共産党の自衛隊政策はズバリ言って、
①憲法と自衛隊の「矛盾」を憲法違反の自衛隊の「解消」の方向で実現する。
②同時に、国民の安全を守るという責任を明確にする。
という二つの方向を「統一」したものと理解しております。
昨年、行なわれた第22回大会で決定した決議では、自衛隊問題は「憲法を生かした民主日本の建設を」という項目に出てきます。
ここでは、日本国憲法、特に第9条についてつぎのような評価をしております。
「昨年、オランダのハーグでおこなわれた世界市民平和会議での『行動指針』が、各国議会に『憲法九条のように戦争放棄宣言を採択すること』をよびかけるなど、いま世界でも見直されつつある。それは二十一世紀にむけてわきおこりつつある平和と進歩の国際的な流れを反映している。二十一世紀は、軍事力による紛争の「解決」の時代でなく、"国際的な道理にたった外交"と"平和的な話し合い"が世界政治を動かす時代になる。この新しい世紀には、憲法九条の値打ちが、地球的規模で生きることになる。とりわけ平和と進歩の力強い潮流がわきおこりつつあるアジアでは、憲法九条の値打ちは、いよいよ精彩あるものとなるだろう。」
憲法9条については、よくご存知のことと思いますので、省略いたしますが、素直に読めば分かるように、「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」を放棄し、また、「陸海空軍その他の戦力を保持しない」としております。
共産党は、この憲法9条の規定が、社会主義や共産主義の理想と合致する方向を示しているとしています。ですから、21世紀のうちに、こういう方向を実現できる社会状況をつくり、現実問題として自衛隊を解消できるようにする、というものです。
こういう「最終的」な目標を定めておいて、現実政治の下で、「段階的な解消」をかなり明確に提示したのが、今回の自衛隊政策であると思います(私自身は、今回の自衛隊政策について「批判」も持っているのですが、まず、正確に共産党のいうことを理解した上で議論をすることが重要であると考えています)。
そこで、「段階的解消」について纏めておきます。これは、大会決議を読んでいただけると、大筋、理解できると思います(以下は、大会決議を踏まえ、私なりに敷衍したものです)。
①第1段階(日米安保条約廃棄前)は、「戦争法の発動や海外派兵の拡大など、九条のこれ以上の蹂躙を許さない」ことが中心になり、軍縮への転換も急務です。
(解説)
現在、「日本(国民)の安全」という問題から見て、一番大きな危険は、一昨年ガイドライン法(戦争法)が成立したもとで、自衛隊がアメリカが行なう戦争や国際紛争により主体的に参加(後方支援という軍事行動です)することです。
日本は憲法9条の存在や、国民の根強い運動によって、自衛隊が海外で殺人を行なうということを許してきませんでしたが、戦争法によって「戦争をしない国」から「戦争をする国」へと変質をしてきました。これは、日本の国内にいると分かりませんが、アジアから見ると、未だに、戦前の侵略について明確な反省と謝罪をしない国が、アメリカとの軍事同盟の下で、一層積極的に軍事力を整備し、後方支援という名の「参戦」を行なえるようになったことは、本当に脅威だと思います。
日米安保体制の下で、日本はアメリカの引起す戦争(日本からアメリカの戦闘機が出撃するだけで、攻撃された国は日本を敵国と認識するのが国際法の常識ですね)によって自動的に交戦状態になります。憲法9条で戦力や交戦権を放棄しているにもかかわらず、安保体制は、こういう本質をもっているわけです。
また、安保条約と同時に締結されている「日米地位協定」では、「全土基地方式」と言って、アメリカに基地(施設という法律用語を使用)を提供する義務を負っています。沖縄での「基地のたらい回し」に見られるように、日本政府はアメリカの基地を拒否できないわけです。
今年のアメリカの防衛計画では、アジアでの10万人のアメリカ軍のプレゼンス(存在)という言葉は消えましたが、依然として日本(特に沖縄)は世界的にアメリカ軍が展開する前線基地といえます。
拓さんが言われるように、アメリカとの軍事同盟が一見すると、日本の安全に役立っているように思えるのですが、実際は、その反対で、アジア諸国の国民と日本国民に、大きな不安材料をもたらしているのが実態です。
ですから、第1段階では、全体として軍縮に転じる課題やガイドライン(戦争法)を発動させないこと、憲法の改悪を許さないことなどがが中心的な課題となります。
(補注)
この段階で「急迫不正の主権侵害」があった場合(というより、実際にはアメリカによる「急迫不正の他国への主権侵害」の危険、及び、それによって日本が紛争に巻き込まれる危険が大きいのですが、多国からの「侵害」に対しては、アメリカ軍と他国が交戦状態になるということです。その指揮下で自衛隊も「活躍」(多国への事実上の侵害)することになりますから、「国民の安全」という方向での自衛隊活用はありえません。
私の理解では、一致する課題に基づいて成立している『野党連合政権』の下では共産党の「参加」の条件として「ガイドライン法の発動を許さない政府」というのがありますので、これを厳密に行なえば、アメリカに危害を加えられている?国の国民と、日本国民が連帯して運動を進めることが可能となります。これが、自民党政府と異なる点でしょう。
②第2段階(日米安保条約廃棄後、つまり、実際には民主連合政府が成立した後)では、まず自衛隊の民主的な改革を行ないます。
(解説)
現在の自衛隊は、指揮権もアメリカ軍に実質的に握られ、アメリカの引起す戦争に自動的に参戦するような性格の軍隊です。装備一つとっても、空母ももっていないのに、護衛艦を持っていたり、対米従属の軍隊です。この性格や国民「弾圧」的な性格を除去するような「改革」を行なうというのが共産党の政策です。
「米軍との従属的な関係の解消、公務員としての政治的中立性の徹底、大幅軍縮などが課題になる。 」ということですね。アメリカ軍の後方支援・援護の必要がなくなれば、それだけでも、大幅な軍縮が実現できるでしょう。
この時期は、日本がアメリカの支配から抜け出る重要な政治段階ですから、国民世論がどれだけ、この方向を支持し、自衛隊の縮減に賛成するかということが成り行きに大きな影響をもたらすと考えられます。
まだ、この段階では、自衛隊は「立派」に存在し、憲法9条との「矛盾」はそのままということになります。
共産党はこの「矛盾」について、自分たちが好きでもたらした矛盾ではなく、憲法違反の自衛隊を増強してきた歴代の自民党政府にその責任があると、その「矛盾」のよって来るところを規定しております。
(補注)
この段階では、自衛隊の民主的改革の進展状況にもよりますが、「急迫不正の主権侵害」が「万万、万が一」あった場合、改革後の自衛隊を国民合意の下で、「活用」することになるというのが共産党の考え方と理解しております。
平たく言って、対米従属の軍隊という性格を脱却して、「平和、中立」の国際的な信任を求める段階ですから、アジアの平和も一層拡充しているハズということです。
憲法違反であるという点はそのままですから、自衛隊を「活用」する場合は「有事法制」(侵略の具体的な定義などを含む)が必要です。この点は、大会議案をめぐる議論でも随分と問題になったことです。
私の理解では、日本は法治国家ですから、なんの法律もなく、イキナリ自衛隊を活用することはあり得ないと判断します。従って、「自衛隊の改革、縮小、活用の条件」など、将来的には明確に憲法9条の精神によって、自衛隊を「解消」する方向を確認する立法が必要と思います。この「自衛隊縮小・改革・活用」法(仮称)に基づいて「事態」に対応します。この場合でも、国会との関係や国民世論との関係は、何らかの方法で配慮・制度化しなければなりません。
③第3段階(国民の合意で、憲法九条の完全実施――自衛隊解消にとりくむ段階)
「自衛隊解消の国民的合意の成熟は、民主的政権のもとでの国民の体験をつうじて、形成されていく」ということですから、国民が「平和」を実感し、自衛隊が無くても問題がないという「確信」に基づいて、解消に向かうということになると思われます。
共産党の政策(大会決議)では、このスパンは21世紀中というかなり長い期間を想定している(というか、どの位のスパンになるか予想できないのでしょう)ようです。
私の理解では、憲法9条の「理想」を実現する段階ということですから、戦争一般が廃棄されるような、人類史上の新たな段階が想定されなければならないということです。
共産党のこれまでの「理論」では、核の廃絶などはアメリカ「帝国主義」が厳然と存在するもとでも、国際世論の高揚によって実現できるが、戦争一般は資本主義の下では廃絶できない、というものでした。
従って、この「理論」によって情勢分析を行なう限りは、戦力の放棄というのは、かなり長い期間を経て実現できるものと判断できます。結局、戦争・紛争というのは、国際間或いは国内の政治の延長であり、「別の手段をもってする政治」であるので、そう簡単にはなくすことはできないものです。
拓さんの議論の直感は、結構良い線を行っていると思います。マルクスの『共産党宣言』でも、国際紛争は国内の紛争の根がなくならなければ、消滅しないと述べられているように、階級関係の「止揚」が最終的には必要ということになります。但し、この辺の問題は、観念的に行なうべきでなく(現に、旧ソ連は、階級関係がなくなっている「ハズ」なのにアフガンをはじめ「社会帝国主義」的な侵略を広範に行なって、自滅したわけですから)、新たな「理論」も必要でしょうし、また、紛争を防止する方向での国民の知恵の発展なども、多角的に検討しないとならないでしょう。
現在、ヨーロッパで問題になっている「劣化ウラン弾」の人体被害問題なども、核兵器廃絶や、残虐兵器の禁止などを含め、広い意味で戦争への国民の「動員」が簡単に出来ない状況を拡大するものと思います。
イタリアが徴兵制を廃止し、また、ドイツやフランスなども事実上徴兵制は空洞化しつつあります。NATOによるユーゴの爆撃なども、少数民族への弾圧と国際的な利害関係が絡み、複雑な様相を呈しているものの、「正当性」を主張する国の内部から、戦争行為そのものへの批判が出てきている点は、注目に値します。
まだまだ大国による「覇権主義」、ある意味で大国連合的な「身勝手」が国際平和をかく乱する要因になり、また、イラクなど(その他にどこがあるか、突っ込まないでくださいね)アメリカが言う「ならず者国家」(最近はこの言葉は止めて「懸念国家」)と見なされても「納得」してしまうような国もあるわけですし、そう簡単ではないでしょう。
というわけで、最後は少しオシャベリになってしまいましたが、拓さんの疑問にはホボお答えできたのではないか、と思います。
過去ログなどをみると、とても参加する気が起きないような「あげあし取り」の「論争」(泥試合)などもあるようですが、拓さんのような率直な議論が行われると、こういう板の存在意義もあると、つい、思ってしまいます。
「さざ波通信」を目の敵にしている「しんぶん赤旗」さん、ごめんなさい<笑い。