この問題は、市川氏問題と同じように、どうしても「たら」「れば」の話になりますが、「緊迫不正の主権侵害」の言葉が一人あるきしているような気もします。こうした事態が想定されるのは、他国の陸軍による上陸ではなく、空軍か軍事衛星からのミサイルに限られると思います。
中台問題の際は、CIAも含めて、①直接の上陸②海底ケーブルの切断(情報の遮断)③台湾海峡に中国側が戦艦を配備する(食料もふくめた貿易の遮断)などのストーリが想定されました。①は現実には可能性は低く、③はアメリカとの衝突が避けられないので、②が有力だという見方がされていました(ちなみに、日本共産党は「ひとつの中国」を理由になんら北京を批判することはありませんでした)。
「急迫不正の主権侵害」というのは、実際にあるとすれば、北朝鮮等も含めたミサイルに限定されると思います。そうすると次に問題となるのは、「万万、万が一」ミサイルが飛んできたらどうするのか、という問いがうまれると思います。しかしながら、現在の技術ではミサイルをミサイルで打ち落とすことはできません(可能性は低い)。
こうしたことを考えていくと、「急迫不正の主権侵害」への対応は、①陸軍上陸に対応するための自衛隊の活用②ミサイルは打ち落とせないので、外交努力を行う(打ち落とすための研究開発は避ける→軍縮)、ということが大筋ではないかと思います。実際、ミサイルが落され、東京が壊滅的な打撃を受けた場合、相手国の首都にも同じ打撃を加えるという発想から、軍備増強を図るならそれこそ「段階的解消」は遠のくでしょう。
ただ、どういう議論を行なうにしても、もう少し具体的な「急迫不正の主権侵害」の内容を議論する必要があると思います。私自身は、「ひとつの中国」を理由に台湾を切り捨てた共産党が、「段階的解消」などを議論すること自体、危険性を感じます。