「雑草」が「さざ波」投稿者の諸氏に提起したいのは、「もし、せめられたらどうするのか」という問いに対する反駁をどうするかということについてである。共産党がゆらぐなかで、かつて右派・保守派しか使わなかったこの文句が、今後左翼陣営の中でもイデオロギー的な正当性を得る状況がうまれつつあるからである。以下、「雑草」なりの反論を:
そもそも、第二次世界大戦以降から冷戦終結期までの戦争の性格をどうみるかである。1950年の中国革命によって、ほぼ冷戦東西陣営の政治ブロックは完成した。その後おきた戦争・紛争の特徴の第一は、この両陣営を抜けようとした国家を侵略したことにある。資本主義陣営からのベトナム・キューバ(侵攻)、アルジェリアなど、ソ連からのアフガニスタン、チェコ、ハンガリー、など、基本的に両陣営内部で戦争・紛争がおこなわれた。第二は国民国家内に両陣営の対抗がもちこまれたもの、ニカラグア、ベトナム、アンゴラ、チリ、朝鮮半島、など、第三は中東地域にみられるように、新興国家(イスラエル)の樹立が、紛争の火種になったもの、第四は民族紛争である。
この大雑把な類型の中で、日本が侵略される可能性は見出しうるか?第二、第三、第四はありえない。問題は第一である、つまり自国が属する勢力圏から脱しようとすることが、侵略される唯一の可能性である。つまり第二次世界大戦以降、日本を攻める可能性があったのは、「アメリカ」である。実際冷戦期においてソ連・中国や朝鮮が日本に攻めてくると本気で考えていたのは右翼ぐらいである。防衛庁ですらそんなこと考えていなかった。確かに70年代には、かの上田耕一郎大先生が当時暴露したような、ゲリラ戦訓練などを自衛隊は行っていたが、それは世論に批判されればすぐやめるていどのものでしかなかったのである。
では冷戦以後の場合はどうか。その多くは民族紛争であり、日本は関係ない。唯一の侵略戦争は湾岸戦争である。しかしこの戦争は、冷戦下でアメリカが散々軍事的な肩入れをしたイラクが、アメリカを嫌いになってクウェートに攻めこんだものである。故にこれはアメリカの勢力圏からの離脱であり、先に列挙した第一の類型にはいるものである。
そもそも先進国・軍事大国が、経済力がかけはなれた国家から侵略されるなどという例が歴史上どれほどあるのだろうか。一九世紀までの傭兵中心の戦争形態ならともかく、国力が勝負をきめる総力戦戦争形態のもとでは、より強い国家を攻めるなどという馬鹿な真似をしたのは、日本位のものではなかろうか。その日本にしてもアメリカ本土には一歩も足を踏み入れることはできなかったのである。
つまり歴史的また現代戦争のあり方からして、先進国に発展途上国の軍隊や経済的に疲弊した国の軍隊が攻めこんでくるなどということはありえないのである。また現在のグローバル化した資本の要請が、領土の囲い込みではなく、自由市場の拡大にあることからしても、資本主義国家同士の、また資本主義国家への侵略などは必要なくなっている。可能性があるのは、自由市場から離脱しようとする国家への侵略である。
したがって「万が一」という問いに答えるとすれば、それは日本が安保条約を破棄した時がやばいということである。「前衛」氏は「安保よりも自衛隊をなくすようが大変だ」といったが、現在のように自衛隊がアメリカの指揮系統下に入っている以上、安保破棄と自衛隊解体を同時期に行わないかぎり、それこそ「侵略」されてしまう可能性があるのではないか。つまり「万が一」に答えるためにも、自衛隊は即刻縮小・解体されなければならないのではないか。