山下さんから、私が1月20日付けの『しんぶん赤旗』の荒堀報告について紹介した内容についてご質問があった。私は共産党の政策を説明する立場ではないので、この記事をお読みいただく以外にないが(また、共産党に「なり代わって」「解説を買って出る」などと皮肉を言われてしまうので<笑い)、今回の荒掘報告についての私の見解を述べておきたい。
質問その1について
共産党は民主集中制を組織原則にしているので、党中央の方針や政策がハッキリしている問題については当然、その方針に基づいて、それぞれの党員が活動することになると思う。選挙などで「地方自治」が問題になるのは、個別自治体の政策はその自治体の党が責任を持つ(中央の自治体政策に基づいて)ということであろう。
国労の問題については、昨年の8月19日・20日の『しんぶん赤旗』でN.Sという労働局の方の「個人論文」が出ているが、これは、党としての「正式」の決定ではなく、あくまで個人論文の形をとって、中央の基本的考え方を「代弁」しているものである。もし、これが中央の正式な決定であるとすれば、当然、上村革同のとった「4党合意」推進の立場は党の決定に反する「反党的」なものと認定される。
私自身は、明確に「4党合意」を否定する立場をとって欲しかったと思っているが、争議団の立場も「分かれ」、国労内に「人道的救済」を期待する声(や動揺)もあり、一票投票の結果も問題は多いものの(規約にもないし、デマ宣伝・世論誘導・脅迫行為も行われた)、「一応」「4党合意」が多数を占めた、というような「事実」から、国労内の党の「判断」に任せざるを得ないという立場であったと理解をしている。また、国労内の党の対応も「4党合意」推進で全て統一されていたわけでもない。
今回の党と大衆団体との関係以前から、こういう場合に政党の立場から大衆団体に介入することはしていないと理解している。
従って、今回の問題で、共産党に期待されていたのは、「4党合意」の本質について明確にし、「国鉄闘争」及び争議団の闘争に関する勝利への展望を解明することであったと思う。「介入」をさけつつ、見解を発表することは可能である。
質問その2について
荒掘報告を見ると、大衆団体内にある党のフラクションを通じて、その大衆団体の政策や方針を「誘導」「指導」することはしない、と読める。これは、大衆団体内に党の組織が存在する場合である。具体的にいって、全労連や全教などの共産党のグループに対し、その方針を事前に「点検」したり、内容に指示を与えたりはしない、ということになろう。党の一般的な方針や政策を「踏まえて」、大衆団体の性格なりに大衆団体レベルで方針を策定するようになる(大体、以前からこういうことであったが、時として、方針等にイチャモンがつくことがあったと理解している)。
そこで、党と大衆団体の関係は、正式に懇談を申し入れて、正面から共産党の見解を明らかにし(例えば、党の大会決定の立場から教育問題で全教と懇談するなど)、全教の方針で党と異なった点があれば、これについて「オモテ」から問題を指摘する、ということになるのであろう。これまでは、「ウラ」から「指導」して事前に方針の齟齬がないようにしていた(まあ、体制に余力がないので、きめ細かくはやれていなかったと思うが)。
党のグループがない、連合などの組織については、その分野の一般的な方針や政策を党が出して、その影響の下で(職場などにおいて)、そこに存在する党員が支持を拡大したり、政策を広めるという運動を行うというパターンになるだろう。
従って、特に大衆団体に党の影響力が少ない場合、党の役割は理論と政策、一般方針。「実行力」はその組織にいる党員ということになる。
質問その3について
有体に言って、共産党の影響下にない、様々な市民団体やNPOなどが全国的に叢生してきており、党の強い組織まであれこれ「面倒」を見切れないという「実践的」な問題も背景にあると思う。大衆組織の党員が党の一般的な決定や方針を良く理解できていないと、「慌てふためく」ことになる<笑い。大衆団体の中にグループ或いは支部があれば、ここで大衆団体の問題を議論して決めることになるだろう。党の「指示」を一々仰いでいるような水準では、21世紀の早い時期に民主連合政府を確立することなど「夢」という理解であると思う。
「突然発表」されれば、民主集中制なので、その決定の線で全党員が活動するのがスジということでしょう。これまでは、結構「こういう方針がでるから、事前に勉強して慌てないように」などという「お達し」があったように思う<笑い。例;教師聖職論など。
私自身は、党の各分野での政策や方針づくりに、末端の党員がどう民主的に参加できる体制を確立するかに関心をもっている。中央は政策を出す人、末端は「やる人」という役割分担は時代にそぐわない。この点については、荒掘報告は何もいっていない。
民主集中の「民主」の方はどうなっているの?と聞きたい。
質問その4について
例えば、憲法改悪反対とか諸要求貫徹実行委員会、消費税廃止各界連絡会など、共産党が一団体として「加入」している組織がある。民主連合政府レベルでは、これらの組織が政府を支える統一戦線組織として機能することになるが、共産党が「ウラ」から全組織を「指導」しているのでは、実のある統一戦線組織にはならない、ということだ。
平たくいって、「引き回し」はしないことを組織論として打ち出しつつあるということであろう。
これまでも、一団体として共産党が出てくると(出てきた担当者が寝ぼけた人間だと)そこで決まったことが後から党の「指導」と称して、「訂正」されたりすることがあったが、そういう「理不尽」なことはしないということと理解する。また、そうして欲しいものである。
党が大衆団体をウラから指導している状態で、その大衆団体と党とが対等の戦線を構築できるとは思われないので、そいういう意味で、大衆団体のウラからの引き回しをしないということは統一戦線を前進させる前提になると考える。
荒掘氏は「自由にやってくれということだ」と述べたそうであるが、大衆団体の構成員がもしこれを聞いたら、「今までは自由にやれてなかったのか」ということになる。結構、際どい話ではある。
ということで今回の方針「転換」?を前衛党規定の削除と一面的に連動させて議論することは避けなければならないが、「国民的な政党」となる方向を示している点からみると、大衆団体を党員への「指導」で事実上引き回すことは大衆団体の発展にも長期的にみて寄与しないということであろう。
実際にこういう線で、党と大衆団体の関係が構築できるかどうかは、見守るほかないが、中央と末端党員のインタラクティブな政策・方針策定という、民主主義的なプロセスが前進するかどうか、こういう点も見落とせない。
民主集中制度のもとで、中央と党員が対立することは構造的にあり得ないのであるが(決定の実践)、上のような関係であるのと、一方的な決定を実践するのでは、180度異なる内容になると考えるものである。
まあ、党の政策や決定を十分に身に付けていない党員の場合、大衆団体でシクじって、ハムレットの心境になることもあるかもしれない<笑い。