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一般投稿欄

子ども劇場運動について >あきらんさんへ

2001/2/8 マスゲーム白井、40代、生協職員

<この投稿は「子ども劇場・おやこ劇場は今」(1/25 あきらんさん)に対するレスを主目的とし、併せて共産党の路線転換を評したものであります。>

序 バブル期生協の「文化協同」方針と子ども劇場・おやこ劇場

 大企業と同じく各生協も好況に沸いていたバブル時、日生協(日本生活協同組合連合会)は大店舗化構想を打ち出し、またそれに付随して、信用(金融)事業への進出も検討していた。この時期は他方で、生協が地域文化の拠点となるべく「協同の理念を文化にも」との佐藤一子・埼玉大教授の提唱もあり、いわば生協版メセナとして子ども劇場・おやこ劇場運動への援助が模索された時代でもあった。
 その頃私は、子ども劇場・おやこ劇場運動と生協との橋渡しを考えるべく指令され、短い間だったが子ども劇場のキャンプや例会を手伝い、また共済業務のノウハウを交換したことがある。また、このたび共産党を離れ民主党から参院に立候補する、渦中のT氏と私は共通の大学を出ていることから、今回、あきらんさんの投稿を読んで以来、各種の伝手をたどって情報を集めてみた。以下は、子ども劇場・おやこ劇場関係者複数(党員・無党派双方)やT氏の学生運動時代を知る人の話を集約し、自分の見聞を加えたものだが、伝聞が含まれるため当事者についての記述は少々ぼかしているので御容赦願いたい。また各県の「子ども劇場・おやこ劇場」も、特定を避けるため「子ども劇場」とつづめる。

1 S県「私党」の子ども劇場運営とT氏

 90年代初め、関東S県の子ども劇場組織が開く夏のキャンプに、参加を拒否された親子がいた。親は前年に他県から転入してきた共産党員で、前居住県でも子ども劇場の熱心な会員であったが、S県子ども劇場の運営は異常にみえた。「いまどき、会計報告が『防衛上の理由』で開示されないなんて.......しかもこのような大衆団体で.......」と。確かに考えてみれば、S県子ども劇場の役員は共産党員で占められ、党員でないと役員に登用しないという噂もある。
 その親は不審に思い、党員の権利を活用して党中央訴願委員会に宛て、S県子ども劇場役員党グループの組織運営が非民主的であり、これでは末端無党派層の信頼が得られない旨、したためた。
 一方、子ども劇場の全国センター代表として、以前からS県組織のワンマン性に疑問を感じていたT氏は、キャンプ参加拒否の一件を機に、S県の運営に改善勧告を出した。T氏は、学生時代から学内の紛争に明け暮れるタイプの共産党員ではなく、地域の児童文化に関心を寄せ、苦労しながら子ども劇場の組織を拡大してきた人物であり、柔軟な発想と人当たりの良さで人望もある。
 しかしながら93年、S県子ども劇場は全国センターを割って出てしまった。

2 子ども劇場党グループの葛藤

 今回白井に話をしてくれた一人、Aさんは93年春、東京・代々木オリンピックセンターで開かれた「子ども劇場関係党員会議」に出席した人物である。さて、党員会議でT氏ら全国センター役員の党員は、S県組織の分裂は非常に遺憾であり、非民主的運営もまた許し難いという態度を崩さなかったが、党本部から出向いた文化担当者は、優柔不断な姿勢で、全国センターとS県双方の党員に「配慮」した物言いだったとのことである。私が思うに、大衆団体に「介入」しないのはいいが、これでは双方とも、少なくとも共産党本部の「指導性」に疑いを持つのは当然である。最近の国労問題に似た「ガイドラインを示すことすら放棄した姿勢」であろう。
 子ども劇場の状況に目を転じると、不況が色濃くなったこの時期から会員数にも頭打ちの傾向が見えて来る。少子化であればなおさら、商業で言う「客単価」を上げなければ、専従者の生活もおぼつかない。したがって、例会の頻度をあげ、事業内容の密度を濃くする方途が必要とされる。共済にも乗りだし、余剰金を確保すべく、全国センターでは真剣に研修していた。
 さらにもう一点、法人化の課題が子ども劇場関係者に持ち込まれた。そりゃあ任意団体であるよりは、NPO化に踏み出した方が社会的認知度も向上するわけで、子ども劇場の交流誌「げきじょう」には毎号、NPO法人格取得の特集が載っている。
 一般に、大衆団体におけるこれら二点の経営的課題は、共産党は公式にはほとんど解明していないし、NPO法制整備政策に関しても、どちらかといえば民主・社民・さきがけ等他党が進んでいる。
 また悲しいかな、どんな既存団体も草の根型運動で行政を引きずり出すのではなく、議会で集約し行政にお百度参りして陳情する手法を取り、団体のエスタブリッシュを図るものである。NPO政策が似たようなものであれば、議会でより大きな勢力を持つ政党に働きかけたほうが効果的でもある。ならばもはや、子ども劇場全国センター役員の共産党員としては、自分が党員であることが足かせになる。なぜなら、たとえ党中央からの「介入」は不破・志位時代になって以降無くなっても、末端で子ども劇場に関わる党員から、全国センター役員党員が「党員としておかしい」、独断的である、などと、たとえ形式のみでも「訴願」が寄せられる可能性があるからであり、実際若干出ている。分裂して出ていったS県子ども劇場の件は、いまや全くの他人事ではないのである。
 ならば簡単な話で、民主党にでも入っちゃえば末端から「民主党員としておかしい」などとは言われはしまい。

3 共産党を「右に辞める」か「左に辞める」か

 私白井は、T氏にはちらっとあいさつしたのみで、同氏の評判しか知らない。ただ、今回ささやかながら「取材」を試みるなかで、割と党中央に疑問を持たないタイプの共産党員Aさんが5年ほど前は「草の根タイプの党員だ!」とT氏を賞賛していたのに、民主党から立起すると聞くや一転して「Tは出世主義者だ!」と、唯物論者にあるまじき、個人の資質に還元した決めつけをするのには、正直マイった。
 Aさんらは今後、民主党T氏の集票マシンとして子ども劇場が活用されることを防ぐために奮闘するのだろうが、個人の出世主義では解明できない問題が横たわっていることに気づいて欲しいと願う。
 子ども劇場の話はここまでである。最後に指摘しておこう。生協運動のなかにいる私にとって、「右に辞める」共産党員など、この10年見慣れた存在である。彼ら生協幹部党員は、一種の左版会社人間であり、所属団体のエスタブリッシュが、自分の俸禄アップと直結していると信じて疑わない。彼らは、共産党はもっともっと牙を抜き、もっともっと協同組合化を基盤に置かないと、時代に乗り遅れるなどと説く。私にいわせれば、それは単に自分の利害から言っているのである。大量失業者をどうするのか? 経営難に陥った地域生協の幹部は、今まで通り、放漫経営の責任追及をしないのか? そんな声に、彼らは答えられない。保身を旨とする者たちに過ぎないから。
 私見では、共産党中央の社会主義曖昧化や、現状追認路線は、「右に辞めていく」党員を少しでも引き留めるための手段でもあろう。しかし、必ずそれは失敗する。――右に辞めるならば、T氏のようにあっけらかんと民主党に入ってしまえばいいからである。