自衛隊に関する議論において、日本が侵略を受ける危険性についてはかなり低いとの見解を示す方が多く見受けられますが、その危険認識は日本の国土が直接攻められることを想定しているように思われます。太平洋戦争で沖縄に米軍の攻撃を受けたような、現在で言えば敵の侵入に対して、陸上自衛隊が防衛出動しているようなイメージです。私も現時点では、このような最悪の状態に至る可能性は殆どないと考えます。しかし、広義の国防(主権の侵害)という観点からすると侵略を受ける可能性はかなり高いものがあります。それは領空や領海の侵犯です。日本は南北に広大な領海をもち、今我々がパソコンに向かっている現在も、海上保安庁や海上自衛隊が24時間態勢で領海を警備し、国籍不明の情報収集船や調査船の監視活動等を行っています。また、領空に関しても航空自衛隊が24時間態勢でスクランブル待機し、国籍不明機等の領空侵犯に対応しています。東西冷戦の頃に比べると少なくはなっているようが、それでもかなりの国籍不明機が我が国の領空への接近し、その都度自衛隊機がスクランブル発進して、国籍不明機に対し警告を発するとともに監視を行なっています。
「自衛隊は災害派遣の時は便利だけど普段は役に立たない」等のご意見も見受けますが、大変失礼な意見だと思いますよ。
ところで、安全保障に関する疑問(1月30日)という拙文で、自衛隊を解消し憲法を守る意見を「無責任」と申し上げたのは、国防は一刻の空白も許されない性質のものであると思うからです。未だに返還の目途がたっていない北方四島にしても、太平洋戦争末期における国防力の低下とまさか不可侵条約の相手国が攻めてくることはないだろうとの空白を突かれたといえます。表現が良くないかもしれませんが火事場泥棒の印象です。私は、国際社会のモラルは決して高いとは思っていません。自衛隊解消論者に、改めて次のことについてご意見をお伺いしたい。日本が自衛隊を解消し、安全保障条約も破棄し、世界に向かって平和憲法の実践を宣言(外交努力)すれば、日本に対する領空や領海侵犯等はなくなると思っているのか、そうでないとしたら少々の侵犯は大目に見るつもりなのか、または新たに国境警備隊的な組織を創設するのか、それとも国連軍に守ってもらうのかあるいはその他のお考えがおありなのかということを。