共産党が今月(3月)23日に発表した「日本経済の危機打開へ--3つの転換を提言する」について、朝日、毎日新聞(24日朝刊)はいずれも、1段見出しの小さい記事で紹介したが、その中に見落とせない記述がある。
「…財源としては公共事業の削減など、『歳出のムダ削減』を掲げたが、志位和夫委員長は記者会見で『ある程度のつなぎの国債はやむを得ない』と述べた」(毎日)
「…景気対策に必要な財源の『つなぎ』として一時的な赤字国債の発行も容認している」(朝日)
「赤字国債」容認は、24日の赤旗記事には全く触れていない。おそらく一般紙記者に質問されて、やむを得ず答えたのだろう。しかしこのことは、共産党の経済(あるいは財政)政策の整合性に関して、重要な問題点を示している。
今回の政策提言の第一の柱は消費税の2%緊急削減であるが、これは国庫分だけで約2.5兆円の収入減となる。これに対する収入増要因として「大企業・高額所得者優遇の不公平税制の是正」を挙げているが、具体性はない。
一方、国庫の支出減としては、例によって「ムダな大型公共事業費を削減し、段階的に半減」「軍事費の大幅削減」「大銀行支援の70兆円もの公的資金の枠組み廃止」を挙げている。しかし、公共事業費や軍事費の削減が、「よりまし政府」でもどれだけ実現できるのか、また仮に実施した場合の経済的なデメリットをどう評価するのか、心もとない。さらに、預金保護目的も含む金融関係の公的資金枠(全額国庫支出の意味ではない)を「大銀行支援」の一言で「廃止」してしまえ、と片付けるのは現実性を欠く。ちなみに、共産党のこの種文書では「大銀行支援70兆円」「公共事業費50兆円」など、大雑把で無定義な数字が使われて、著しく信頼性を欠いているのが、特徴である。
半面、国庫支出の増加要素としては、「社会保障負担増の凍結」(約3兆円)をはじめ、「介護保険の保険料、利用料の減免制度」、「予算の裏付けを持った中小企業への対策」を挙げている。
このように見てくると、果たして収支つぐなうのか、新聞記者が疑問を持って前記の質問をするのは当然であり、「赤字国債容認」の答えもやむを得ないだろう。それも、この政策では志位委員長が言うような「つなぎ」「一時的」ではなく、現状と同じ構造的な赤字国債になる恐れが多分にある。今回政策には「景気回復と財政政策を両立させる道をきりひらく」「景気回復の状況をみきわめながら、歳入の在り方--税制の民主的改革、安心できる社会保障体系づくりに取り組む」「景気回復と財政再建を両立して進める道を、国民的討論と合意でつくりあげていく」とある。景気頼みと、自信の無さを表しているとしか言いようがない。
経済の現状打開策は、どの政党にとっても容易でないことは理解するが、「赤字国債容認」という嫌なことを、機関紙から隠すような姑息なことはやめるべきだろう。