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一般投稿欄

私は真相を知っているわけではありません(大歩危さんへ)

2001/4/27 中村大輔

 大歩さんは、「もちろん、政府、自衛隊、感染研は、仮想外国やテロ集団からの生物戦争や生物テロリズムへの「防衛研究」だと弁明するでしょうが、「防衛研究」がただちに「攻撃研究」に転嫁することは歴史の教訓です。」をわたしの意見として引用していますが、これは「予研裁判の会」のホームページの作者(おそらく先日亡くなられた私の恩師の芝田進午氏ー予研裁判の会前団長)の書いた文章です。芝田氏の友人の話では、この文は自衛隊の広報紙の「朝雲」に掲載された記事を下に書かれたのではないかとのことです。その友人は芝田氏から貰ったその記事のことは覚えてい るが、今は捜しても見つからないと言うことです。したがって、真相はわかりませんので「推測」をするしかないのです。
 ところで、あなたは4/25の投稿の中で、「防衛と攻撃という正反対の事象を同一視されては、議論になりません。」と述べていますね。たしかに「防衛」と「攻撃」は正反対の事実です。しかし、これまでの侵略戦争(攻撃とはここではスポーツ等が問題ではないので軍事的侵略と同じだと思います)はほとんどすべて「自国の防衛」の必要を口実にして起こされてきたというのが歴史が語る真実ではないでしょうか。抽象的な論議で「防衛は攻撃と正反対の事象である」などと言っても現実では通用しませんよ。
 また、あなたは上記の言葉に続いて、「また『防衛研究』がただちに『攻撃研究』に転化できるという記述は、現在『防衛研究』しか行っていないことを中村大輔さん自身が暗に認めており、おそらく中村大輔さんはよくご存じではないでしょうか。」と述べています。しかし、生物兵器禁止条約を批准しているアメリカやロシアが「生物兵器に関しては、生物兵器の攻撃から自国の国民を守るために生物兵器に対する防衛手段の研究しかしていない。」と言っても誰が信用しますか。「生物兵器の攻撃から自国の国民を守るために生物兵器に対する防衛手段の研究」をしているというのは表向きの言葉で、現実には「生物兵器の研究を密かに行っている」と推測する方がこれまでの両国の戦争と平和に対する姿勢からすれば自然ではないでしょうか。こういう事実については、私は読んでいませんが、例えば、ケン・アベリックの「アウトブレイク」やマンゴールドとゴールドバーグ共著の「細菌戦争の世紀」(原書房)が詳しいようです。後者の本については2000年の11月14日付けの「しんぶん赤旗」の「書評欄」で故芝田進午氏が紹介しています。その書評には、次のような記述があります。

 「旧日本軍の<七三一部隊>による生物戦争の研究とその実践への応用は、敗戦とともに過去のものになり、封印されたのではなかった。むしろ、それを継承して、アメリカ、イギリス、旧ソ連・ロシア、南アフリカ、イラク、北朝鮮等が大量の恐ろしい生物兵器を開発し、貯蔵してきたし、それらを廃棄したと言う証拠は存在しない。
 著者はイギリスのジャーナリストで、ドキュメンタリー風で手堅い本書を読むと、その叙述の信頼性は疑うべくもなく、読者をして慄然とさせないではおかない。とくに旧ソ連における生物兵器の開発は狂気の沙汰というべきもので、「ソ連社会」とは何であったのかと考えさせる。
 たしかに「生物兵器禁止条約」(一九七二年調印)が発効しているが、防衛手段の開発は禁止されていない。だが、基礎研究・防御手段の研究と応用研究・攻撃手段の研究を明確に区別できないことが生物兵器開発の特徴であり、前者は容易に後者に転用されうる。」

 また、台湾生まれのアジア系アメリカ人の生化学・分子生物学者のアンソニー・T・ツ博士は、『別冊宝島495号・生物災害の悪夢』のなかで次のように述べている。

「細菌やウィルスは培養で簡単に増やせますから、特に細菌の場合には、菌株さえあれば大量生産はいくらでも可能です。したがって、ほんのわずかの菌株さえ持っていれば、けっこうな脅威となることも、生物兵器の特徴です。逆にいえば、生物兵器は隠しやすいということにもなります。アメリカとロシアの保存する天然痘ウィルス(このウィルスはすでに根絶されたとWHOは認定しているー中村)の廃棄が問題となっていますが、破棄できない理由もそこにある(つまり、破棄してしまえば、敵国の天然痘ウィルスを使用した攻撃から国民を守るためのワクチンの開発・生産ができないことになるからであるー中村)のです。」(同書p.9)

 敵国が生物兵器を持っていれば、自国もその生物兵器の対策だけでなく、自らも生物兵器を持つことが当然だと考えることは、大国・中小国の核兵器保持の論理を考えれば、容易に想像がつきます。また、「別冊宝島編集部」によると、アンソニー・T・ツ博士は「生物兵器防護の専門家として、日本の治安・防衛関係者からも相談を受けている」(同書p.10)そうです。そういえば、平成12年の「防衛白書」にも生物兵器に関する記述があります。第1章第1節の3に「核兵器」の項に続いて「生物・化学兵器」の項目が設けられています。その全文は以下のとおりです。

「生物・化学兵器は、核兵器に比べて安価かつ製造が容易であるため、途上国なども保有が比較的容易であり、アジアや中東、北アフリカなどの国においても製造・保有されているものとみられている。
 なお、95(同7)年3月に東京で起きた地下鉄サリン事件は、化学兵器の製造が比較的容易であり、その使用が武力紛争に必ずしも限定されないことを印象づけた。」

 ここでいうアジアの国とは北朝鮮のことであろう。であれば、自衛隊が国民を敵国の攻撃から守るという限り、仮想敵国である北朝鮮の日本への生物兵器攻撃に対策を練ることは容易に想像がつきます。また、生物兵器の特徴が芝田氏の言うように「基礎研究・防御手段の研究と応用研究・攻撃手段の研究を明確に区別できないことが生物兵器開発の特徴であり、前者は容易に後者に転用されうる」ならば、たとえば、自衛隊と感染研は安保条約で軍事的同盟・協力関係にあるアメリカから生物兵器研究の依頼を受けている、つまり、感染研はアメリカの生物兵器研究機関の下請けである可能性も否定できないのである。
 最後に、大歩氏に言いたい。あなたは、自衛隊が「生物兵器の研究はしていない」と言えば、そのままそれを信じるつもりですか。情報公開法が4月から施行されても「防衛庁」に「不開示情報」がある(「防衛庁のHPを見よ)かぎり、その言葉をそのまま信じてくれといわれても、自衛隊と防衛庁に国民に開示できない秘密情報があるならば、それは無理な話だというものです。あなたの「自衛と攻撃」に関する言葉を読んでいると、あなたは、戦争を起こす者の口実の言葉をそのまま信じているのではないかと疑いたくなります。それが杞憂ではなければいいのですが。例を挙げれば、日本には「非核3原則」というものがあって、その一つに、「核を日本国内に持ち込ませない」という日本国民への約束があります。日本政府は常々これを堅く守っているといいますが、あなたこれを信じますか。私は信じません。というのは、横須賀に寄稿する最大の核保有国であるアメリカの原子力潜水艦や空母に核兵器が搭載されていないなどと誰が信じますか。日本政府はアメリカの言うことだから信じてくれと国民にいいますが、おそらく政府のこの言葉を信じている日本人は少ないでしょう。また、総じて、これまで戦争を起こしたり、侵略行為をしたりした国家は、「これは正義(この言葉は使いたくないが)の戦争だ」とか、「当該地域の平和を守るためだ」とその戦争行為の口実を述べてきたが、こういう言葉を額面どおりに信じるほど世界の人々は馬鹿ではありません。あなたは、これらの国家の当事者と大同小異の防衛庁や日本政府の言葉を鵜呑みにするのですか。それともそうではないのですか。あなたのこれまでの投稿文全体を読んで、私は前者ではないかと想像しますが、どうなのですか。これは侵略戦争に関わる歴史認識の問題だと思います。西尾幹二が中心となって編集した、日本のアジアへの侵略戦争を美化する「つくる会」の教科書が検定を通りましたが、あなたはまさかこのような教科書の歴史観に共鳴なさるわけはないですよね。この点ついては、この「一般投稿欄」を拝見している人の意見も知りたいです。是非どなたか発言してください。私や大歩さんだけの問題ではないはずです。