2001年6月23日付、しろうさんの『paul氏へ及び心神喪失規定について』に対してです。
刑法第39条は、「精神障害者」の行為を罰しないとは規定していません。「心神喪失者」の行為を罰しないと規定しています。したがって、精神障害者であるから当然に心身喪失者であるということにはなりません。また、精神障害者でなくても、一時的精神障害によって心神喪失者に該当することもあります。刑法第39条は、「精神障害者」を特別扱いしているのではなく、「心神喪失者」を特別扱いしているのだという点を正確に理解しておく必要があると思います。
刑法第39条の実際の運用が必ずしもこのとおりになっていないのが問題でしょう。
精神障害者=心神喪失と規定し、無罪放免や刑罰軽減を求めているのは弁護士ではないだろうか。またそうした弁護士の言論に押されて明確な判断を下せない裁判官に責任はないだろうか。そして、心神喪失を正確に規定できない弁護士と裁判官が作り上げた判例にビビって起訴をためらう検察官に責任はないだろうか。
司法全体が、精神障害者=心神喪失という短絡を許す実態に陥っているものと思います。
心身喪失による犯罪を無罪放免するのが妥当であるというなら、心身喪失がいかなる状態なのか、心身喪失による犯罪とはいかなるものなのか、だれが聞いても納得できるレベルまで、司法はその判断を正確にする義務があると思います。
高速バス乗っ取り事件の犯人は心神喪失だったのか? 違うでしょう。てるくはのるは心神喪失だったのか? 違うでしょう。
心身喪失による犯罪だから無罪放免する、刑事事件としてさえ扱わない、起訴すらしない。そうした事例が、いったい、ほんとうに心身喪失だったのかどうか、私は全然納得できません。
私はJCP-Watchでも同様の議論をしていますが、どなたでもかまいません、「こういう事例こそ、心身喪失による犯罪であり、無罪放免が妥当である」というのを提示していただきたい。「分裂病者による犯罪が心身喪失による犯罪だ」などというデタラメな現状をそのまま許すなら、それは分裂病者のみならず、分裂病以外の精神障害者、健常者にとってもまことに不幸なことだと言わざるを得ません。