今回の東京都議会議員選挙の結果は、最低最悪の選択といわざるを得ない。
自民党の亜流政党の一つである自由党が議席を獲得しなかったのは救いであるが、国政や都政で長年に渡り悪政・失政を続けてきた自民党の息を吹き返させ、愚かにも躍進させたばかりか、自民党とともに悪政に与してきた偽宗教団体の傘下の政治団体である違憲政党・公明党の現有議席数の維持さえ許したのである。
この世界にも国内にも恥ずべき結果は、この国の首都の有権者の政治レベルと民度が著しく低いことを証明し、また民主主義がこの国で機能していない看板だけのものであったことを証明したと言えよう。
不思議でならないのは、頻りに口先だけの「改革」を唱える政治家を、その「改革」が自分にどの様な影響を及ぼすかを知ろうとせず盲目的に支持し毒されている者がこの国にいかに多いかということである。そのような「改革」を唱える政治家がナショナリズムに傾倒していることは多い。
ここで述べるまでもなく、東京都知事の石原慎太郎も、自民党総裁にして内閣総理大臣の小泉純一郎も、ナショナリズムを思想として持つ者である。自民党の躍進と、自民党に追随し、自民党の議席の補充の役割すら果たしている公明党の議席数確保を愚かにも許したことは、この国のナショナリズムを加速させ、都知事不適格者にして和製イェルク・ハイダー・石原の悪政・失政・愚政を更に推進させることを許す憂うべき事態なのである。この最悪の選択によって「信任された」石原与党(同じく「改革」の速度を競うだけの、自民党の亜流の一つである民主党も含む!)の議員たちと、和製ハイダー・石原は程なく問題発言や不祥事を起こすであろう。もし石原が失脚した場合、同時に都議会も出直し解散して選挙をやり直すことが、この国の首都の歪んだ政治を改める最善の方策と信じるが、「改革」という幻想に踊らされて、自民党と公明党の跳梁跋扈を許し続けたこの国の首都の大多数の、無知な有権者たちは、自らの愚かな選択をとくと悟り、恥じるがいい。
ところが、この国の新聞・テレビ等の大マスコミは、この憂慮すべき事態を無批判・無表情・無節操・無機質・無神経・無責任に垂れ流すばかりで、石原や小泉の問題点や、彼等が何をしてきたかを正面切って指摘し、批判しようとさえしないのである。大マスコミの画一的な報道は、奇怪を超えて、寒気と怒り、悲しみすら感じてしまう。それは社会の木鐸としての責任すら投げ捨て、権力や多数派に無批判に付き従う、「権力の応援団」に成り下がったとも言えるのである。特に石原には、無批判に付き従う芸能人・似非文化人の「石原親衛隊」たちがいて、石原御用テレビ局・MXテレビの石原御用番組でタイコモチを務める見下げ果てた者さえいる。
以前に大橋巨泉氏が、自民党が議席を増やすことで、この国は沈没するという趣旨の文章をある雑誌で述べていたが、私も同意見である。7月下旬には、参議院選挙が行われると聞く。私は外国人であるが故に、不幸にして投票活動には参加できないが、今回の最低最悪な結末が、参院選に反映され、またしても自民・公明・保守政権を信任する結果になることは、この国にとって決して賢明な選択ではないことを断言しておく。東京だけではない、この国すべての有権者に声を大にして、目覚めよと申し上げたい。小泉の語る「改革」は、疲弊したこの国の経済を破壊し尽くし、国力を激しく減退させるだけの愚策に過ぎないのだということを、冷静に認識するよう強く望みたい。それでもこの国に蔓延しようとしている小泉・石原の両ナショナリズム政権の存続を許すならば、この国の経済的・国際的信頼は一挙に失われ、タジキスタン・ネパール・バングラデシュ・アフガニスタン以下の最貧国となり、IMFや世界銀行からも見放され、国際的にも孤立するという最大最悪の悲劇が待ち受けているであろう。その様な結末に陥ったならば、政権政党である自民党・公明党・保守党だけではない、無批判に権力報道を垂れ流すだけの大マスコミも同罪であるし、またそれらに毒され、いいように操られたとはいえ信任を与えた選挙民の罪もまた決して軽くないという自明の理をしっかりと認識すべきである。<間違いだった「是々非々論」>
ところで、日本共産党は都議会第2党として26議席を有していたが、この国の首都の無知で愚かな選挙民たちによって11議席を失い、都議会第4党に転落するという東京にとって最低最悪の悲劇が起きた。日本共産党に落度はなかったのか? 答えは否である。最大の原因は、「是々非々論」という石原の悪政・失政・愚政に対する間違った対応である。確かに、大銀行への課税、ディーゼル車の排ガス規制は評価すべきであろうが、それ以外のナショナリスト・石原のしてきた悪政の数々を考慮に入れたならば、決して石原の悪政に対して「是々非々」で臨むことは決して許されるべき賢明な方策ではなかったはずだ。むしろ、石原の本性やしてきたことを全て告発・検証し、今回の選挙は敢えて石原や石原与党と全面対決し、石原を辞任に追い込む足掛りを作るためのものであると位置付けるべきだった。にもかかわらず、今回の弱腰な「是々非々」的対応は、これまで日本共産党を支持してきた人々を裏切ったばかりか、無所属層に対しても日本共産党の存在意義を失わせ、他党、例えば「石原与党」の中心である自民党、自民党の補充勢力にして違憲政党の公明党やその亜流政党である民主党に得票や議席をみすみす渡してしまったことになる。
日本共産党は、昨年の衆議院選挙での議席後退以来、自民党やその亜流政党、権力御用マスコミ、そしてそこに寄生する似非文化人どもに迎合するために自衛隊の存在を容認し、「革命」を放棄するという愚行に出た。しかし、支持増大には到底至るはずもなく、今回の都議選でも大幅な議席後退という悲劇さえ起きたではないか。この行為が、昔からの支持者を裏切り、存在意義を失わせるだけの愚策であることがわからないのか。
私は、かねてから中国や旧ソ連の『共産党』にはっきりと物を言い、筋を通し続けた日本共産党の姿勢や政策の的確さを評価していたし、選挙権は持てないながらも陰ながら応援していた。しかし、自衛隊の容認、「革命」の放棄という愚行を犯して以来、不安と疑念を不本意ながら持つようになっていた。和製ハイダー・石原という知事不適格者が不幸にも知事の座につき、都議会がオール与党化した今日、日本共産党の役割は大きいものがある
はずだ。しかし、繰り返し述べるが、今回の選挙では石原悪政に対する「是々非々論」という間違った方針が、都議選議席後退の悲劇を生んだ最大要因であると声を大にして断言しなければならない。
全国の都道府県や市町村、そして国会で、日本共産党が躍進しない限り、この国に真の未来はない。今、日本共産党がなすべきことは、政権政党とその亜流政党や、権力寄りの御用マスコミ、そして彼等に寄生する似非文化人に迎合して自衛隊を容認し、「革命」を放棄することではない。ましてや、綱領を変えることでもない。今回の選挙の惨敗の原因を一刻も早く究明し、中央委員会や都委員会、そして民青同盟などの選挙に関わった周辺団体の幹部を含めた全体の責任問題を追及した上で、革新の原点に立ち返り、かつ外部や周辺団体と風通しのよい関係や環境と、活発な批判や意見交換ができる環境を極めて早急に作ることである。「さざ波通信」や「JCP-watch!」などのホームページの掲示板に、日本共産党への批判・諌言を寄せた党員を除籍するという、まさに「忠臣」を斬り捨てた行為に出たことは、愚の骨頂と言わねばならない。これらの批判や諌言に、謙虚に、虚心坦懐にかつ冷静に耳を傾けなければ、日本共産党に真の未来はないし、この国の政治の正常化もあり得ないことを声を大にして強調しておく。
このままの体勢で参議院選挙に臨むならば、日本共産党は苦戦を強いられるばかりか、更なる議席後退は必至で、この国に蔓延するナショナリズムの流れの中に日本共産党は飲み込まれ、かつての日本社会党やイタリア共産党のごとく、消滅の憂き目を見るであろうし、この国自身も社会的・経済的・国際的信頼を失い、物笑いの種になるだけである。