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paul氏と浩二氏へ

2001/6/27 しろう、40代

 先ず、paulさんへ。

「「刑法総則の基本書を読みなさい」と言った手前、自分も読みなおさなければ!と思いながらついつい。」

 ちょっと驚きました。あまり嫌味を言うのも何ですが、もう少しだけ言わせて頂きます。他人の発言に対して「理論水準を疑われる」とまでおっしゃる方が、今になって、基本書を読みなおすのに時間がかかって、などと言われるのは納得できませんね。
 それはさておいて、paulさんの受け止め方は分かりました。
 「正当防衛」と「緊急避難」のくだりは、枕として述べたもので、多分この点を問題としているのではないかという想像はついていました。混乱しているという誤解を与えるような書き方だったかもしれません。
 しかし、私が問題を提出している段落では、「故意」「過失」と「心神喪失」とを比較して述べていて、「正当防衛」と「緊急避難」には何ら言及しておりません。もちろん、違法性阻却事由と責任要素とを直接比較することは適当ではないからです。
 ところが、この、「故意」と「過失」とを「心神喪失」と比較した点について、「混乱」であるとおっしゃっている点は、全く予想外でした。わが国では多くの学説が客観的違法論をとっていると思いますが、そこでは、「故意」「過失」は、「責任能力」と共に責任要素だと理解されています。この点については、中山研一「刑法総論」などお読み下さい。

 次に、浩二さんへ。

「刑法第39条の実際の運用が必ずしもこのとおりになっていないのが問題でしょう。」

 つまり、運用が妥当でないから心神喪失規定を削除するということですか?
 それとも、「精神障害によって許されるか否かを判断する能力がない人」など存在しないということですか?
 このうち、後者だとすると、私には判断能力がありません。そのような人は存在しないとあなたが言われても、そのような人がいるという法律の立場や、学説の立場を現在では支持します。理由は、説得力の比較です。法律や学説の立場を覆そうとするなら、大変な実証的研究が必要になるように思われます。
 前者だとすると、心神喪失中の行為が犯罪となる可能性がありますが、そうすると、心神喪失者の行為を罰することが、故意や過失を犯罪成立要件とする刑法の立場と整合するのか、が問題となると考えます。

 次に、次の点についての感想です。

「心身喪失がいかなる状態なのか、心身喪失による犯罪とはいかなるものなのか、だれが聞いても納得できるレベルまで、司法はその判断を正確にする義務があると思います。」

 しかし、学者が長い時間かけて観察しても意見が対立するような事柄では、そんな一義的明瞭性を求めるのは難しいのではないでしょうか。だからといって、そんな不明瞭なことは止めてしまえというと、心神喪失者が刑罰を科される可能性が生じます。心神喪失者の存在を認め、その可罰性を否定する立場をとるなら、不明瞭だからといって止めてしまえというわけにはいきません。