共産党の敗北の一番の原因は、日本の将来に対するビジョンの不明確さでしょう。
従来の共産党が議席を延ばしていた時期と今回の敗北の一番の違いは、この一言につきるでしょう。
共産党の述べている経済政策が、将来の日本をどの様に導くかを述べることが出来なかった、という事でしょう。
消費税を3%に戻す事によって何が変わるか。何も変わらない。消費税の減税分は、貯蓄に回る。
生活型公共事業を重視し、大規模公共事業を減らす事によって何が変わるか。財政赤字が減少する。同時に、社会資源の整備により、福祉が充実する。施設を作ることによって、恒久的雇用が創出される。
サービス残業を規制することにより、他業種の雇用も拡大する。
今更消費税が下がっても、貯蓄にしか回らないのであれば、銀行が当然、体力を付けるでしょう。しかし、このことにより、不良債権の処理を焦らずに済むでしょう。企業に追い込みをかける必要性は少なくなり、倒産する企業も少なくなるのではないでしょうか。消費の拡大に結びつかないとは言うものの、多少は結びつくでしょうから、一部の企業においては、業績が改善されるでしょう。それを突破口に、消費不況は若干改善するのではないでしょうか。現在、銀行は、一行のみでは対応できずに、合併、グループ化を繰り返しているのですから、これが止まるだけでも良いことです。金融不安は若干改善されます。
財政赤字を減少させるのは、福祉施設です。現在、需給バランスが極めて悪いですから、まだまだ公共団体の責任で作っていく必要があります。これであれば、事業として独り立ちしていく事も可能です。確実に採算性が取れるものです。長期的には徐々に赤字は解消されます。堅実すぎるビジネスですから、画期的な効果はあり得ないでしょうけれど。また、福祉は暗いイメージがありますから、この方向を望む人も少ないでしょうけれど。
新規に作られた施設には、就職する人が採用されるわけですから、雇用は拡大されます。従来型の公共事業が、雇用の創出が一過性のものであったのに対して、福祉施設の場合は、恒久的な雇用の創出が可能です。よく耳にする意見として、福祉労働者のみ雇用が増えても意味がない、専門家は少ないのだから、という意見がありますが、これは、専門知識を持っている人全てが、専門性を生かした仕事に就いているという前提です。専門性を生かさずに別の仕事をしている人の現職に人が補充される、事務職、調理職などにも人が補充される。また、サービス残業を規制すると、少なくともパート雇用は増大します。仕事が終わらないという現実に直面して、残業代を払ってまで仕事させるなら、パートを増やした方が安上がりだからです。雇用の拡大としては、確実に効果があるのがこの方法です。
これを、統合した、全体的な方向性は、過去への逆戻りであり、日本は改革する必要はない、ということになります。昭和の時代のように、直間比率を消費税減税で、直接税のウエイトを高くするのですから、努力した高額所得者には不利でしょう。福祉施設を手厚くし、公共団体の業務量が増えるのも、民間委託の方向性ですから後退でしょう。
私個人としては、この方向性に賛成です。こういうビジョンだからこそ、まだ、党員として頑張れるのです。何故なら、将来、全ての人がそこそこの金持ちで、大金持ちも少ないが、貧乏人も少ないという、高福祉の国になるからです。この点を確認することにより、将来に対する不安が消え、消費は本格的に復旧するでしょう。これでやっと根本的に消費不況は解決するのです。
時代を巻き戻す事への抵抗感というのは根強いですから、恐らく、現時点では、国民の大多数は反対するでしょう。しかし、不良債権の処理を、その場しのぎで実施しないで、根本的に改善する必要のある今の時期に、こういう政策は必要なのではないでしょうか。 このまま改革で日本が突き進んだら大変なことになる、という認識を持っている日本人は、一定数はいるのでしょうから、今回もそこそこの議席は取れたはずです。ここまで酷かったという事はないでしょう。
こういう未来図に対して予想される反対意見に共産党自身が気を使いすぎて、政策の先を述べる勇気を持てなかった、ということが敗因です。展望があるのに述べなければ伝わらないし、場当たり的なものではなく、全体像のあるものなのだという事を認識してもらう必要があるのです。赤旗の個別の記事を合わせて全体像を作り上げて解釈するなどということは無理です。だったら赤旗を拡大しなさい、会議を充実しなさい、と言われるのが関の山でしょうが、選挙を通して伝えられないと言うのは、戦術面の失敗です。
チラシを見ただけで、共産党の路線では失業者を出さないということ、共産党路線が雇用を生み出すこと、経済再生を行えるということまで認識できる人は更に少ないでしょう。
小泉ブームで負けた、苦しい状況下で戦った、今後も更なる拡大が必要、と、ピントのずれた分析では意味がないでしょう。