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一般投稿欄

不況と消費税再考

2001/9/1 平山薫、20代、会社員

 土地転がしというギャンブルに手を出し、必要ない土地にまで手を出し、皆で回し合って、少しずつ値段をつり上げていく。狭い範囲で、同じ人間が何度も親になり、子になりネズミ講を行っていくのに近い状態が繰り返され、個人が手に入らないところまで土地の値段を、企業同士がつり上げていき、土地取引において、国民不在ともいえる状態を作ってしまった。それを受けて、政府が土地取引の規制を実施して引導を渡したというのが正しいであろう。
 元々は、国策によって生み出された不況である。しかし、国策の範囲を超えて、深刻な不況になってしまった。一気に土地に対する投機熱が醒めてしまった。企業は、投機目的で取得した土地を持て余し、価値が下がった。元々実体のないお金の動きであるから、損失は幾重にも重なる。後始末のつけようがない。企業から活力を奪うには充分すぎる打撃であった。マイナス思考の赤字解消路線が日本中に蔓延した。人件費の圧縮を、リストラという名の首切り人減らしと能力給の実施という方向でしたので、経費の削減は確かに行われた。しかし、同時に、この実施方法として、技術、経験を持つ中年層をターゲットにしたため、年功序列、愛社精神というものを、日本人が大事にしていたものまでも壊してしまった。

 春闘等でも「ベア」と言うが、社会全体が、常にベアの前提、つまり、賃金は上がるものという前提で運営されていた。少なくとも、等級の昇格により賃金が上がることまで疑い、賃金自体が下がることを想定していた人は殆どいなかった(出世までの期間は企業差があるが)。ここに、住宅ローン、教育費の見込み等の、個人の負債を計画するときの大前提があった。
 土地神話の崩壊によって、企業が、損失を被り、社員の賃金を常に上げ続けることが不可能になってしまった。企業の損失の増加に伴い、サラリーマンの給料も下がり、社会不安は増加する。全体的に増加して、購買意欲がなくなる事により、現在の不況は生まれた。
 よって、一番重要な要因は、社会不安である。

 ここまでの部分に関しては、表現の違いはあれ、言い古されたバブル景気の総括である。

 私は、現在も、この側面においては、バブルの残骸を引きずっていると認識している。だから、欲しい物が無くなったからデフレであるという評価は、消費者サイド、つまり労働者サイドにおいては間違っていると評論したのである。

 もし、欲しいものがないだけで不況が始まり、今の不況においての主たる要因であるのならば、賃金は貯蓄に回る。銀行は収益を挙げるのだから、貸し渋りはなくなるはずである。返されていない借金が、沢山先延ばしになっているので、銀行は懐が寒く、貸し渋りをする。貸し渋りをされることにより、借金を返す積極的な事業展開の出来ない会社が増える。
 その為、業績の悪化をいつまで経っても引きずっているのである。銀行の経営悪化、企業への貸し渋り、企業の減益、リストラ、競争力の低下、銀行への預金の減少。これらの悪循環が続いているのである。従来の価値観の崩壊に伴う、資金運用の根本原則が覆されて、暗中模索である事が、社会全体の不況感、停滞感を煽っている。しかも、銀行自体もマイナス思考になっている為、積極的な資金援助が出来ていない、という意味において、銀行業界の景気回復こそが最優先課題である。

 中年のリストラ、社会全体の高学歴化等、必要とされる金は多くなるが、入ってくる金に何の保証もない。貯蓄に回すとはいうものの、10年前の預金金利は年利6%程度であったのが、現在は0.1%以下である。銀行は、無料の金庫であって、もはやお金を増やすところではない。
 その為、ハイリスクの投資で株屋と取引をする。あぶく銭を当てにするしか増やす方法はない。この方法でしか増やせないという現実から生まれる何となく不安という心理。ハイリスクという認識から、どこか疑心暗鬼。しかも、株に対してあまり興味の無かった一般投資家は、当然、素人であるから、最後には金が吸われていく。生活水準で求められるものが増えるが、資金繰りの見込みが、長期的な視点においては全立たないので、個人には大きな不安を与える。更に、高齢化社会による、公的年金、各種民間の保険に対する不安。払い込んだものと、支払われるもののバランス。振り込んだ総額の額面割れ。これも、かつては、貯蓄的な側面のあったものであるが、現在はどうであろうか?

 こういった、複合的な不安が重なり、消費の低下が起こっているのであり、欲しいものがない、という単純な理由は、高額所得者の考え、あるいは、世代間の将来に対する不安感の差であるというのが印象である。
 購入に意欲がないのではなく、購入する裏付けがないので、必要な物しか買えないのである。買いたいものと買える物のギャップは大きく、必然性(絶対的なものではなく、社会的に求められるものも含めて:携帯電話など)のあるものしか買えないと言うのが現状である。

 だから、最優先課題として、銀行の懐を暖める事が重要、という所は、政府と同様の結論である。しかし、私は、消費税減税を選んだ。国の借金を増やさないで、リスクを少なくして銀行の懐を暖める唯一の方法であると同時に、国民の購買意欲を多少は掻き立てる、根本問題の両方の側面にアプローチできる唯一の方法であるからである。

 財源は、不要である。消費税の減税分と、このまま際限なく資金注入をするのと、どちらが多いか。また、不要な支出を抑える事でも、若干の支出削減は可能である。支出の削減を軸に計画を立て、必要なら、歳入を補う事を考えればよい。それだけの、直接・間接の、銀行に対する支出を、既に政府は行ったが、一向に改善されていないのが現実である。

 なお、過剰生産という、しろうさんへのご意見への回答としては、原因の一つである、というより、上記問題から発生する結果の一つであるという見解で、宜しいでしょうか。
 リストラを優先課題としている、企業側の都合により、海外進出が出来ていないということです。過剰生産は、海外でのシェア拡大で解消できると考えるし、まだ、その意味で世界中の需要が飽和点に達しているとは考えていない。