米国での卑劣で残忍なテロ事件から早くも1週間がたとうとしています。そして、犯行声明や証拠もなく「イスラム原理主義の犯行、軍事的報復。イスラム原理主義を支援する国も報復の対象だ」と米国より声高に宣言されています。不思議なことに、小泉首相は「同盟国としてできるだけの支援」を早々にうちだしています。
救難復興のために多くの方が力を合わせる、テロを断固ゆるさず、厳正な捜査への国際的協力および報復を含めこれ以上のテロを起こさせないこと、そのために宗教観を超えてテロの再発を許さない世論を高めること、そのことを通じて各国政府や一人一人に平和を取り戻すための行動を広げることが、最も重要ではないでしょうか。日本の場合、新日米防衛協力指針関連法の拡大解釈による発動(公務員や医療スタッフの動員)を許さないこと、この事件を奇貨とした「有事法制」立法や「集団的自衛権」正当化という、他人の不幸につけこむけしからぬ動きを封じることでしょう。
なお、テロ対策では、日本にはその良い前例と悪い前例があります。良い前例とは、1989-95年のオウム真理教による数々のテロ(坂本弁護士事件から多数の信者および親族の殺害、2回にわたるサリン事件)に対し、教祖を含めた犯罪者を警察により逮捕し、オウムの蛮行を許さない世論を高めること(1995春以前はマスコミや一部の宗教学者がオウムをもちあげていた)、同時に脱カルトの努力も続けたことです。その結果、松本智津夫教祖逮捕の後、都庁内爆発傷害事件が発生した以外、テロを封じ込めています。
悪い前例として、15年戦争中の「神風特攻隊」の開発、1970年代には、パレスチナと連帯すると自称する「日本赤軍」が各地でハイジャックや人質事件をおこすと、その要求に屈して「超法規的措置」で獄中の「赤軍」メンバーらを野に放してしまったことです。
わたしどもは、この日本のテロ対策の経験に自信と反省をもって思い起こすべきでしょう。
さらに、「犯行に関与」と米国により断定されたビンラディン氏が、潜伏するとされるアフガニスタンの周囲は、パキスタン、中国、旧ソ連諸国、インドを含め、米国・イスラエルとともに事実上の核保有国が多いことも、憂慮すべきことと思います。あまり、このことを論じる人はいないようですが、これは人類の生存の危機にかかわる問題と思います。