郵政民営化のことについて考えてみました。
ニュースステーションなどのメディアは全面賛成の立場を取っているようですが、私は胡散臭いものを感じずにはいられません。
一つにはそういった番組が、クロネコヤマトなど宅配会社のCMをばんばん流しているのが「公正な報道なのか」と疑わせる要因なのですが。
まず、郵便事業について。
「宅急便で成功してるんだから手紙だって大丈夫」みたいな論理は果たして成り立つのでしょうか。
私が気になるのは、宅急便と手紙では配送コストが大きく異なるのではないか、という疑問です。
宅急便は最小の荷物でも600円、ハガキは一枚50円均一。
この料金の差がありながら、同じように上手くゆくというような論理は成り立たないのではないでしょうか。
都市部やダイレクトメールでの儲けを過疎地に回すという話も聞きますが、不況や企業間競争などで業績が落ちこめば、それを理由に「赤字部門切り捨て」が行なわれるのではないかという不安があります。
私は民営化そのものに反対ではないけれど、公共性が損なわれないためのルールはしっかり作っておく必要があると思います。
そして郵便貯金、簡易保険については私は民営化反対です。
この2つからの資金が財政投融資にまわされ、それが無駄な公益法人をのさばらせているという指摘がありますが、その指摘自体は正しいのだと思います。
しかし私が非常に胡散臭く感じるのは、「だから郵政民営化で無駄な公益法人への資金をストップする」という論理です。
なぜ「無駄な公益法人がある」と言うのなら、直接そこを政治力で潰さず、そんな間接的なやり方をするのでしょうか?
私はそこに、隠された別の(おそらくは非常に悪質な)目的の存在を感じます。
これがその目的かどうかは分からないですが、政府は預金者保護の責任を放棄したいのでは、と疑っています。
ペイオフ解禁で普通の銀行預金者は、貯金することのリスクを考え始めたと思うのです。
政府は銀行が潰れて預金者が騒いだとしても、「そこに預けたあんたの責任」という論法で済ますつもりなのでしょう。
しかし郵貯や簡易保険の顧客に対しては、その論法は通じません。
そこで民営化して自らの責任や義務を放棄する、そういう目的があるのではないでしょうか。
あるいは、ペイオフのリスクから逃れようと銀行口座から郵貯へと資金が移動する傾向があるのだとしたら、郵貯を民営化してリスクを平均化して、資金をむしろ銀行側に移動させようとしてるのかもしれません。
私達庶民にしてみれば、唯一残った安全な貯金先を潰されることになるのではないでしょうか。
私は財政投融資の無駄は、そこから資金を得ている公益法人の会計を全部公表し、どこが無駄なのかをハッキリさせた上で政治力で潰せば良いと思います。
「郵政民営化で無駄な公益法人への資金ストップ」という論理には、それ自体に胡散臭さを感じます。
落とし穴は、「全ての財政投融資が無駄に使われてるのか」「郵政民営化でそこから資金を得ている全ての公益法人が潰れるのか」という点にあると思います。
分かりやすいように単純なモデルを考えます。
例えば財政投融資から資金を得ている公益法人が100あるとします。
その内の50が無駄な「悪玉法人」で、残りの50が公共性のある「善玉法人」とします。
郵政民営化で財政投融資の資金がストップ、資金不足で公益法人の数が100から50へ減ってしまいました。
しかしその残った公益法人の内わけは、悪玉法人が40、善玉法人が10というものでした…
あくまでも例ですが、これでは「改正」とは言えません。
むしろ福祉や社会保障を減らすかっこうの切り口として、郵政民営化が叫ばれてるのかもしれません。
民営化が福祉を減らすための口実として行なわれた前例として、介護保険があります。
私達は、今回の「民営化」もそうなのではないか、と疑い監視することが重要だと思います。