はじめまして。
日頃から貴党の誠実・清潔な活動に敬意を表す次第であります。私は、河川事業にたづさわる労働者であり、日曜版の一読者です。
さて、今回の長野県知事の不信任関連の記事に対して疑問を感じたためメールいたします。あくまで私個人としての経験と考えですので、その点ご了承願います。
はじめにお断りしておきますが、私自身、是が非でもダムを進めようという考えはありません。
長野県民がダムがいらないというのであれば、それはそれで下流の流域までの治水・利水上の代替案さえ出していただければ、水源地としての責任を果たしていると考えられますので、住民の考えを尊重したいと思います。
ただ、住民の考えというものが、正しい情報から判断されているのかが疑問なのです。
赤旗ともあろう新聞が、私から見てかなり偏った情報を流していると感じます。
以下にピックアップして記載いたします。
1.「ダムは無駄で自民党などに政治献金をしている大手ゼネコンのためにある」という旨の報道
確かに大手ゼネコンは自民党をはじめとする政治家に毎年多額の政治献金をしています。しかしそのような政治家を当選させたのは国民です。
ダムの是非とは別問題であり、たとえ共産党が政権を執ったとしても国民の命と財産、環境を守るためにダムは必要と考えます。
ダムが無駄ではなくダムの働きを以下に記します。(すべてがダム乗りしていないこともあります)
1.洪水調節
日本の地形は急峻でなおかつ梅雨前線や台風の影響を受けやすいため、あっという間に降雨が海まで流れ出ます。
その際、河川水が堤防を越えたり破堤する洪水が発生したり、内水被害といって、河川の水位が高くなり、降った雨を河川に流せず住宅等に浸水し被害が出ます。
それらの被害を軽減するために、ダムは流入量より放流量を小さくして貯水池に降雨をため込み河川の流量を調節します。
赤旗に「雨が降っているさなかダムが放流した」とか「ダムがあるため災害が起きた」とよく報道されますが、洪水調節中にダムが入ってきた水より
多く放流することはありません。
これは間違った報道で、ダムがないときと比べるとずっと少ない流量にしています。
この流量はそれぞれの河川の整備計画から決まってきます。
また、たとえダムを計画した洪水量を超えた場合、(例えば100年に一度の降雨で計画していたダムに、500年に1度程度の降雨があった場合)でも、ダムは入ってきた水を上回る放流をしなくてもダム自体を守ることが出来るため、ダムによる被害というのは間違いです。
しかし「ダムが完成しても洪水被害が起こる」ことも事実です。これは河川整備が遅れているからです。やはりこのような安全に関わるところに予算配分すべきです。
共産党が容認してしまったお助け隊としての自衛隊を活用するよりも、災害を未然に防ぐことが先と考えます。
「徳山ダムでは防げなかった災害」というのはあまりにも短絡的です。
2.正常な流水の維持
これは逆に雨が降らずに渇水になった場合です。川に水が無くなると川は川でなくなり、生活ざっぱい水や下水(特に地方都市は二次処理しかしない廃水)の流れるどぶになります。
このような環境では動植物等の環境によい影響を与えるはずはありません。
よって川の流れによる環境を守るため、ダムにためた水を渇水時も河川に放流しています。
田中知事もおっしゃっている緑のダムも必要なものと考えますが、渇水時は木々が水を消費するためマイナスに働きます。
そもそも、日本の森林面積は大きく、(66%)それらも計算に入れてダムの基本計画がつくられています。(野田氏がおっしゃるように針葉樹を広葉樹に変えれば、治水、利水ともに安全率は上がりますのでいい意見です。)
やはり日本の治水を考えた場合、森林、ダム、堤防のバランスが大切です。
2.発電
水力発電は、放射性物質も出さず、二酸化炭素も出さず元でもいらないクリーンな電気です。ためることの出来ない電気を水の位置エネルギーという形で取り出す自由度は高いです。もちろん節電も大切で、その分火力を減らせます。
3.水道
主に足りないのは都市用水です。今時どこも水洗トイレですしお風呂も洗濯も毎日でしょう。節水に心がけ雨水タンクを推奨することも大切です。
(それだけ異常渇水に対する安全率が上がります。)トイレに飲み水を流すのはもったいないと考えます。
しかし、安定したおいしい水を供給できるのは日本のよいところと考えます。今後、人口が減るといっても、それは過疎といわれる地域で、都市の人口は減らないと予測されます。当然水道の供給もままならない過疎地域には若者など住まず、崩壊は目に見えています。
4.農業用水
日本の農業は右肩下がりで、食料は輸入に頼っているのが事実です。
唯一自給に近いお米は水田で栽培され水を沢山使います。食料を輸入するということは水を輸入していると同じです。結局外国の水資源を使っています。
世界人口は爆発的に増え続ける現在、いつまで食料を売ってもらえるのでしょうか。食料はなるべく自給すべきという方針は共産党も一緒ではないですか。
渇水年にダム感謝祭という事実を幾度も見てきました。
5.工業用水
工場が海外に行き、空洞化が進み失業者が増えています。安ければいいのでしょうか? 本当の豊かな日本になるには、我々のような労働者階級が豊かになり、安定した生活を送ることが出来る環境が必要と考えます。
6.人々の憩いの場
多くの人は水辺を求めます。何もなかった所にダムが出来ると多くの人が集まります。これも事実です。
これらのことから、けしてダムが無駄とはいえないはずです。渇水と洪水のニュースが流れない年はないのですから・・・。
ダムの代替案として堤防を高くするとか、堤防を引く引堤という技術もあります。
しかしこれは大変な金と労力がかかります。まず川に架かる橋を全部架け替えなければなりません。当然鉄道橋やも含みます。引堤の場合はそれプラス家屋の移転が必要です。
何にせよ可能は可能ですが、せっかく降った淡水を金と労力をかけて海に流す努力をした場合、利水には全く使えないものとなります。
やはり治水・利水を効率よく行うのはダムが最適と考えます。
あと、田中知事の治水安全率を下げる案について
日本の河川は既往最大か100年に一度の洪水を考慮して整備計画されていますが、それを下げるというのは下流の流域も含め、水害に弱い地域になります。(100年確率というのは統計学から出ます。科学的です。)
長野県民をはじめ下流域の住民がこの事実を知り判断しているのならば、行政は何もいえないはずです。降れば溢れ、照れば干ばつ・・・これが一番自然なのですから・・・・
2.「海外ではずっとダムは少ない」という旨の報道
今週の赤旗でも野田知介さんがおっしゃっていました。
3.「ダムは100年で土砂が貯まり使えなくなる」という旨の報道
確かにダムの堆砂容量を決めるときは100年という数字を使います。でも、土砂なんて浚渫すればよいではないですか。そのような技術はいくらでもあります。4.「ダムは金がかかりすぎる」という報道
先日7月11日の台風は岩手県の北上川でカスリン(S22)・アイオン(S23)台風を上回る既往最大の出水とききました。その時の死者行方不明者はカスリン101人、アイオン473人だったものの今回の被害の少なさはやはりダムを含む河川改修のおかげです。5.「ダムは環境破壊」という旨の報道
確かに季候のいいときはさらさら流れていた川をせき止め、湖にするわけですから環境に変化を与えているのは事実です。
湖になるのは河川の数百メートルから十数キロ。水位の上下の際、裸地ができるダムもあります。(裸地化対策は技術として取り組まれています。)ブラックバスが在来種の魚や虫を食い荒らす被害も出ます。(これに関してはブラックバスを放す人間が悪い)
しかし、水鳥もやってきますし、湿地性の多様な植生も発生します。
マイナス面だけ強調されますが湖という新たな環境の創造とも考えられます。
車や工場のように出来たあとに排気ガスを出すわけでもなく、それでいてエネルギーを消費するわけではないし・・・。
最近のダムでは湖が出来る前後で自然環境の調査を行い、きっちりデータで話し合う委員会などももたれています。
6.「活断層の上にダム堤体を造る」という旨の報道
いくら何でも日本のダムでは、これはありません。ダムの堤体の位置選定ほど数々の調査を行い慎重に検討するものなのです。ちなみに神戸淡路地震の時でも決壊したダムはありませんでした。
2002.7.20 0:45
河川行政に携わる労働者より
PS.赤旗編集部にもこの旨のメールで反論しましたが。まあ、私一人が騒いでもどうなるものではありません。