不破氏が最近、中国社会科学院にて「レーニンと市場経済」と題する講演を行ないました。その中で、氏は次のように述べています。
後者の市場経済の前途にかんしては、「なかなかほかの方式では間に合わせられない効用をもっている」として、需要と供給を調節する作用、生産性や企業活動の成績を測定したり比較する点で重要であることを指摘する一方、旧ソ連では、重さで企業の業績をはかることをしていたため、使い物にならない重い家具や機械が作られていたというエピソードを紹介すると、会場から笑い声があがりました。不破議長は、マルクスが共産主義社会でも「価値規定」が残ると言っていたことも指摘しつつ、「市場経済の代用物を探すのは難しい」とのべました。
氏は、市場経済と計画経済の結合→社会主義への移行というプロセスを展望しているようですが、共産主義社会でも「価値規定が残る」、つまり市場経済は残るし、「代用物」を探すことの困難さを訴えています。
日本共産党は、これまでも相当長期にわたって市場経済は「残る」という言い方をしてきました。今回の講演では、①共産主義社会でも市場経済は残る②代用物を探すことは難しい、という点からより積極的に市場経済を評価したようです。①は、マルクスの引用に依拠し、②は、レーニンの「ネップ」における試行錯誤の過程を念頭に置いて「難しさ」を訴えたのでしょう。
ただこの論理では、現状の中国の”社会主義市場経済”の問題点よりも、現状中国を肯定するだけの論理に終始しているようにも思われます。レーニンの研究から、市場経済の意義と重要性を見出し、中国も”ネップ”に値する実験をやっているなどと絶賛しているだけでは、アジアにおける日本共産党の役割は小さなものにならざるをえないでしょう。