スイス政府が編集し各家庭に一冊ずつ配っているという「民間防衛」という本があります。原書房から日本語訳されており、私も地元の京都市立図書館の一般書架にあったのを借りて読みました。読んでいてその内容の恐ろしく現実主義的なことに愕然とさせられました。8月27日付けでミカヅキさんの投稿でスイスの民間防衛についてふれられていましたが、その文面の内容を読んで、この「民間防衛」に書かれているスイス国防の驚くべき理念については恐らくご存知ないと思われました。
そもそも不破氏に対し田原氏が「共産党が言ってるのは外国が攻めてきたら一人一人が竹やりを持って、ボランティアの軍隊で国を守ろうとすることだ」言ったとあります。しかしそのような個人的自衛行為は戦時国際法の観点からスイス政府は国民に禁じています。「孤立した軍事作戦は何の役にも立たない、それは無用の報復を招くだけである」とされています。「戦時国際法は、軍服を着用し、訓練され、かつ上官の指揮下にある戦闘員のみに対して適用される」とのことです。ちなみに一般市民が侵略軍に対し戦闘して捕まった場合、正規の軍人ではないので、戦時国際法による捕虜の適用は受けられません。ですから処刑されても文句は言えませんし、恐らく侵略軍もそのような反抗者は処刑してしまうでしょう。
「民間防衛」の本によるとスイスの平和観は「わが国の安全保障は、我々軍民の国防努力いかんによって左右される」「自由と独立は、絶えず守られねばならない権利であり、言葉や抗議だけでは決して守りえないものである。手に武器を持って要求して、初めて得られるものである」とあります。
そして他国から侵略を受けた場合の対処が長々と時間系列で書かれています。生活必需品の配給割り当ての実施。国境は閉鎖され、侵略者の役に立ちそうな道路沿いや各地域の標識はすべて取り除かれる。鉄道従業員の一部は武装、特定の道路の閉鎖。そして死刑制度の復活! これは「スパイや妨害行為によって国の安全を害し、兵士や民間人の生命を危うくするものは、すべて死刑に処せられる」となっています。
そして敵の謀略放送などが始まり、国内での敵の同調者の謀略活動も起こり、この本のストーリーでは何とスイスは侵略されてしまい敵の軍政下に入ってしまいます。そうなってしまえば今度は、占領軍からの弾圧を受けないようなレジスタンス活動を取るように呼びかけられております。スイス政府はその時分には友好国に亡命し、そこからスイス国民に臥薪嘗胆を呼びかけます。数年の後に占領国が国外で敗れだし、スイス住民たちのたくさんの銃殺刑や強制収容所送りの犠牲のもとに国内では抵抗運動が勝利を収めていく、という筋書きとなっています。
とにかくこういう思考の国もあるということで一読願いたい。