不審船というお芝居第三幕・引き上げの茶番(3の上)レールと機関銃の虚構
2002年12月6日、海上保安庁は “九州南西海域における工作船事件の捜査状況について”を、発表した。その内、
(5) 後部甲板上には、【2本の鉄製のレール】が引かれており、この幅が、【2連装機銃】の台座に設けられた車輪の幅に一致することから、同機銃は、このレールの上を滑らせて引き出せる状態で、後部船橋に格納されていたと推察される。
とあるが、何故、引き出したと言わないのであろうか。
14.5ミリ2連式固定機関銃を戸外に引き出さなければ、10月4日に発表された、巡視船あまみから回収されたという14.5ミリの弾頭は、ポケットからでも転がり落ちたことにもなり、又、巾1メートル以上、総長さ40メートルにも及ぶ“脱落”した鉄鋼板の部屋壁は見つからないのに、海底泥から見つかった14.5ミリの空薬きょうは、“ててなしご”になってしまう。
これまで【機関銃をレールで甲板に引き出し】とか、【14.5ミリ2連式固定機関銃など実際に使われたと断定した】(読売)とか、黒子を使って盛んに流してきた情報を、正式発表では、曖昧模糊の作文にしたのは、良心の咎めからなのか。
何故、正式には言わないか。
それは、引き出すことが、不可能だからである。
操舵室は、写真から計測すると、巾3メートル長さ3.5メートルほどで、床の高さは、3段ほどの足掛けを利用して出入りするから、他の部屋の床
とは、1メートル以上も差がある。
操舵室に置いてあるという2連式固定機関銃を、今引き出そうとすると、1メートル以上何らかの方法で降ろし下げることになる。
だが下ろした所には、レールは無いのである。
そこは本来機関室なのだが、エンジンが無いということで、次の厨房室と同じ高さの床になっているが、機関室の2.43メートルほどはレールが無く、レールは厨房室から始まって船尾方向に延びている。
従って、厨房室まで転がして行き、それからレールに乗せることになる。(レールの存在そのものが、茶番なのである)
3.64メートルほど厨房室内を進むと、今度は、出口の所でレールの右側が壁に突き当たるのである。
厨房室の出口は、どうなっているか。
今、逆向きに船首方向を向いて厨房室の戸口に立ったとする。
3メートル部屋巾の左壁は約1メートル、右の壁は75センチほど、引き戸は、右手から左へ開く片戸で、戸巾75センチくらい、戸高は、1.3メートル程である。(構造上、実際の出入り巾は、75センチ以下になる)
写真写りが良い航行中の長漁3705の操舵室の出入り口を、見ると判るように、住宅の2枚戸と違って、船は1枚戸で引き込み側は、壁となっている。
機関銃を載せるためのレールというのは、部屋巾3メートルを三分したような、1メートル巾なので、船尾方向へ進むと、レール間の真ん中辺から右側(船の左舷)は、壁に閉ざされているのである。
やむを得ずレールから外して、戸口に向かったとしょう。
機関銃の銃身の長さは、約1.5メートル(九州読売)ということで、斜め角度から写した機関銃を計測すると、本体の横巾は50~60センチ、両袖の弾帯ロールを合わせると、1.2メートルほどの巾がある。
縦巾は不明だが、向きを変え砲身を真上にしても、(砲身を立てると2メートルを超える)部屋の高さは、約2メートル、足元は30センチほど波よけ壁で制限されて、戸高は、1.3メートル程しかないから、斜めに倒してということにもなる。(後で述べるように、台座と機関銃本体が連結された構造なら、出すことは、全く不可能なのである)
仮に外へ出たとしよう。
今度は、船尾に積んでいる荷物を片付けなければならない。
沈没までには、間に合わないという、落語のオチがつくことになる。
操舵室の出入り口は、巾51センチほど、高さ1.15メートルほどの所謂“くぐり戸”で、厨房室の戸口より更に狭い。
そこへ、2メートル強×1.2メートルを、押し込むというのである。
成体の機関銃は当然入らないから、入れるなら分解というになる。
所詮、固定式機関銃を、船橋(操舵室)に置くというのは、ドラマ作者の狂想でしかない。
単なる問題として考えるならば、★出口近くに置いておくというのが、初歩的な知恵であろう。
エンジンが船の心臓部なら、船橋は頭脳である。
船務の妨げになる重量物に、室内の四分の一を占有されたり、レールの常置で居住や船務を阻害される愚かしいことは、する筈がない。