最近の世論・メディアの様相に落ち着かぬ日々をおくっている。
2月27日朝日夕刊に、在日イラク人の祖国を憂える声が掲載されていた。首都圏在住の男性は、湾岸戦争直後、イラク軍が反乱自国民にむけた砲口をみて、独裁者の下で暮らしていけないと国を出た。そして、彼は、日本のイラク攻撃反対のデモをありがたいと思いながら、フセイン批判がないのを問い、「このまま独裁が続けば、国連による経済制裁も続き、人々の生活は苦しいままだ。米軍の圧力でスマートに政権が変われば、流される血は少ない」と結ぶ。
ここでは、フセインの決めつけと、流れる血の対象から自分は圏外である。武力攻撃をとなえる日本人を代表しているイラク人である。もっとも、私はこのセリフの真偽を疑ってはいるが。
彼の論法でいけば、天皇制軍部の下、何千人もの反政府主義者が虐殺されているが、それらを知っている日本人はすべて日本をでなければならないことになる。ちょうど、脱北者のように・・・
2月28日、朝日朝刊「声」欄、久々に「子供の血流す国益は望まぬ」と、歯切れのよい見出しで、ミサイルで吹き飛ばされる子供のことを思うべきである、とむすぶ。
同時に、「大学行きたい なぜだめなの」と、大学入学資格、民族学校卒認めぬ方向」の日本政府に、疑問を投げかける小学生陳明範くんの切実な投書を採用している。
そして、本日3月1日ついに、石原都知事登場、再出馬を期待するかのような堂々のレイアウト。一時期の石原の差別発言、その非人間性を検証するスタンスはどこにもみられない。
「声」欄は、またまたびっくり、この後に及んで、米支援是か非かーである。恐ろしく幼稚な両論併記。
支持派は
我が国がピンチに陥ったとき、頼りとするのは米国のみという冷徹な事実と、新宿・歌舞伎町の雑居ビル火災を例に、東京消防庁による査察結果を無視し続けた業界になめられてはならぬーーと、イラクの査察と結びつけ攻撃を支持。彼らは、六十代男性であるが、終戦の年は4歳と9歳、戦後の貧しさも身内の悲惨も、ある程度理解できる環境のはずであるのだが。
対する非支持派
人道的な側面と最悪の結果を招くことになる攻撃に明確に反対するが、中東地域を混乱させ、テロリスト集団だけが喜び、米国民にとっても最悪の結果になりかねませんと結ぶ。
どうやら、この国には、人間と非人間、そして、すべての原罪を背負わされてしまう魂とが混在しているようです。
『攻撃前なのに復興支援とは」の大学生の、人間を殺したいのか、生かしたいのかーーに答えようとする視点など、残念ながら、日本政府には微塵もありません。