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不審船というお芝居第三幕・引き上げの茶番(5)浮沈タンクのウソ

2003/3/16 本間正勝、60代以上、なし

 九州読売は、10月31日、次のように伝えている。

船内に浮沈タンク 小型舟艇を出し入れしやすい船体構造(02.10.31)

 鹿児島県・奄美大島沖で引き揚げられた北朝鮮の工作船が、格納した小型舟艇を出し入れしやすいように、船体の浮沈調整用の大型タンクを装 備していたことが30日、第10管区海上保安本部(鹿児島)と鹿児島県警の合同捜査本部の調べで分かった。
 船底には海水を吸引するパイプが付いており、捜査本部は北朝鮮が工作活動のため特殊な船体構造を考案し、新たに工作船を建造したとの見方を強めている。
 調べによると、タンクは長方形で、船体後部の小型舟艇格納部の両わきにあった。計数トンの容量があるという。外部からは見えず、陸揚げ後に 進めていた船体の検証作業で確認した。
 タンクとつながっている吸水パイプは、プロペラ後方の船底の両端から1本ずつ中央に向かって延び、直径約10センチ、長さ約2メートル。
 通常の航行時はタンク内を空にして、小型舟艇を格納部の台木上に置く。出動させる際はタンクに海水を吸入し、船尾側を沈めたうえで、小型舟艇を浮かして船外に出していたとみられる。

 この浮沈タンクについては、他の報道機関で見かけないスクープのような情報であるが、黒子を使って一部の機関に情報を流しながら、正式発表では全く触れないこのような海保の卑劣さは、至るところでみられる。

 扉を開けることに依って海水がなだれ込む勢いは、船底と海水面との差が大きいほど激しいものとなる。
 海水との落差を大きくするための装置など、馬鹿げていることは小学生でも気付くウソであろう。
船尾側を沈めるという迷想は、観音扉の底辺が、海面より上にあるような錯覚を込めている。

 片面タテ2.7メートル、ヨコ2.3メートルもの観音扉は、約1.1メートルが海面下なのである。

 機関室と小船を収容している境の隔壁は、ほぼ船の中央部に位置する。
 その前半の船底型は∨型で、後半は┗┛型であるから、その容積は4対6にもあたる。
 航行していた長漁3705の中央喫水線と甲板との乾舷は、20~25センチほどしか無く、その下1メートル強が船の自重である排水トン数となる。
 貨物船なら、乾舷マークを計測表示して、喫水の危険度の目安にしているが、自重で20~30%の浮揚力しか無い船体容積の60%に、しかも後半 だけに海水を引き入れるというのは、自殺行為にあたる。

 “小船収容庫”の容積は、長さ15メートル、巾5メートル、床から天井(甲板)2.5メートル。
 丸みなどを勘案して、15×4.5×2.0=135立法メートル………と、130トンもの海水が流れ込むことになる。

 小船を出そうとして開いた扉からなだれ込む水流は、忽ち船尾を海中に沈め、厨房室の入り口からも海水が浸入し、鉄鋼物の浮揚力率をマイナスにしてしまうだろう。
 大量の海水を取り込んだら、強力な排水装置が必須となる。
 船体構造の解明に臨んだ90人もの調査官が、半年かけても排水ポンプが見つからないのは、沈む船では必要が無いからか。 

 仮定として、深く船尾を沈めても浮いているとしょう。
 小船が収容されている状態は、10月7日船尾を開いて公開した写真を基に

 計測すると、12月6日の海保発表での小船の深さ1.2メートル(船尾底から甲板までと解して)として、台木が47センチ程、小船のデッキから“収容庫”天井の間は、87センチ程である。

 扉を開けると同時になだれ込んでくる海流は、小船を奥に押し込み、浮力で天井に押し上げられ身動きもとれなくなる。
 魚でない乗組員たちは、酸素補給の潜水具使用が必須となり、何らかの方法で小船に海水を取り込み、満水にしてもFRP製(一部は木製……海保発表)の素材では、浮力抵抗は残る。
 出口である船尾に向かうほど深みが増し、浮力抵抗は更に強まる。
 ともすれば、子供の遊具である浮き輪ですら、その浮力に翻弄されることあるが、天井に押し付けられている長さ11m巾2.5m深さ1.2メートルの浮力体を、人力での移動は不可能であろう。

 観音扉を開いた写真で、小船の甲板と天井の間が87センチある………と述べたが、12月6日に海保が発表した“九州南西海域における工作船事件の捜査状況について”で【後部甲板が上方に向けて膨張していた】という状況を航行時に戻せば、甲板と厨房室の床の高さは同じなのであるから、60センチほど下がっていたことになる。
 小船は、甲板上の両舷に、45センチほどの[波よけ]が付いているから、“膨張”以前の状態では、[波よけ]が潰れることになる。
 つまり、“膨張”そのものが、ウソなのである。

『観音扉を開閉する動力装置も無い』、
『大量に取り込んだ海水の排水動力装置も無い』
そして
『エンジン室への出入り口が無い』
『15人の乗組員の居住室も無い』
『船底部分にカキ殻などが全くついていない(防衛庁関係者)』という、このユーレイ船に出入りする小船は、部外者を阻む厳重な監視の中、何処からか現れては人前に姿を見せるのである。
 海保は、このユーレイ船の正体を解明するのを拒み、或いは解明されるのを恐れて、目をそむけている感がある。