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ミクロメディア・マクロメディア

2003/3/18 菅井良、40代、自由業

 JR新宿駅東口(地下)を出て、地下鉄丸の内線へ下る階段のすぐ手前にFOODPOCKETと看板の出ている軽食街があって、そこのBERGというコーヒー屋の入り口に赤黒二色で「戦争反対!」と大きく書かれた手書きの看板が出ていた。近づいてみると、わきに「写真集イラクの小さな橋を渡って」と書かれていて、下には日本人の名前が二人あった。その写真集の文と写真の作者であり、その本のメッセージであり、そこでその本を売っている(1000円)のだった。
 コーヒー屋で本を売るというのも珍しいが、それが新宿駅地下で反戦ともなると、格別だ。そのコーヒー屋では店内の壁を利用して、さまざまな作家の写真展を1ヶ月単位で開いていて、イラクのこの写真集も2月に1ヶ月間写真展としてやっていたものだった。今3月は、別の写真家のアイルランドの写真展になっているが、これも、コーヒーを飲みながらながめていると、なかなか気持ちがよかった。
 1000円という単行本にしては手ごろな値段は、かつて買って読んださまざまなパンフレットのことを連想させ、1冊買った。去年の10月29日から2週間に渡ってのイラクの旅行記に写真がふんだんにのっていた。「もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった。」という書きだしで、イラクの男、女、子供たちが、町が村が、たくさん写っている。
 コーヒーを飲んで出ようとしたとき、出口の床に置かれた、「ワールドピースナウ3.8」と書かれた黄色いプラカードが目にはいった。3.8の4万人日比谷デモのときのものだ。目立ちもしないが、隠れているわけでもなかった。
 「都市の空気は人を自由にする」という言葉があり、今の日本ではおよそ実感のない言葉だが、新宿はそれに近い状況があった街だ。近くをとおる方は立ち寄ってみてもよいかもしれない。立ちのみも可能なコーヒーは一杯200円から。ドイツ風のソーセージ、ハム、ビールなどもおいしい。
次にマクロのメディアについて。
JRのキオスクで「ブッシュ・帝国の野望」なるサンデー毎日の緊急増刊号を見つけた。270円のパンフスタイル。安い! そこには、アメリカに追随する日本の分析こそないものの、ことアメリカの行動に対しては、<「大義」「正義」の片鱗すらない軍靴の響き>と、みもふたもない。「テロに対する正義の戦争」も、「大量兵器を所有する無法国家への懲罰」も本当の理由でないこと、本当の理由は石油であると率直に語られている。
ただ、アメリカの力の強大さも、その兵器のハイテク化のありさま、イラクに向けて展開されつつある部隊や艦船、兵器が豊富な図や写真を含めて具体的に述べられていて、この横暴はとめがたいという気持ちを引き起こす。宿命論を通じてのアメリカ容認を引き起こすかもしれないが、でも、この具体的な記述はブッシュや シラク首相などの発言をつらねるだけよりも、はるかに読むものに戦争の緊迫を感じさせ、この冊子のパンフとしてみたときの優れた面だと思う。他の要因を新たに付け加えるなら、歴史の帰趨についての判断は変わるかもしれないが、反戦運動の消長や経済情勢や何よりも体制の危機をむかえると、あっさりとひっくりかえってしまう現状追随主義のメディアとはちがう。
 現代日本のマスメディアの配置の中で、今、毎日新聞社のこの分裂を支持したいと思う。「赤旗」と他のメディアとの間ではない。

 追記 3月17日発売「サンデー毎日」(320円)は<総力取材・独善的ブッシュ イラク戦争の欺瞞 一挙40頁>という特集を組んでいる。冒頭グラビアから、破壊された地下街の写真である。「命奪われし者たちの叫びーイラク・アメリア・シェルターの悲劇」、湾岸戦争時、多国籍軍の爆撃で400人以上が犠牲になった防空シェルターのものだった。買った。よく味読してみたい。マスコミについても、選挙で支持を投票できるなら、私は「サンデー毎日」に1票である。
 みなさんも手にとってごらんになりませんか?