さざ波通信による『日本共産党の80年』の分析のお骨折り感謝いたします。過去の年史と比較検討することによって本当に色んな問題点が抽出できるものと驚いております。大まかに言えば共産党も社会主義革命政党から資本主義社会における改良政党に、天皇制についても認め、軍備についても自衛のためなら認める、というふうに変身しつつあるようです。ただのその変質の仕方が姑息で、過去の総括をやって改めるのでなく、コソコソといつの間に変身したのか分からないようにやっていこうという意志がよく感じられます。
さざなみ通信の『80年史』の分析で国の自衛の問題に触れた点が私の気を引きました。『80年史』で憲法制定時に共産党は新憲法の採択の際に反対しており、その理由の一つは新憲法が自衛戦争をも否定し、戦力の保持そのものを否定していたことでした。このことを今回の党史から明記しているとのことで、それは今までの党史には書かれていませんでした。憲法制定時に共産党が自衛戦争を肯定していたことについては、党の支持者でも案外知らない方が多いのではないでしょうか。
改憲派の憲法学者西修氏の『日本国憲法はこうして生まれた』(中公文庫)を読んでいると、憲法制定時の共産党のことが書かれています。すなわち、帝国議会での新憲法の審議の際、共産党の野坂参三議員は自衛権との関係で次のような質問しました。「戦争には我々の考えでは、二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。これは日本の帝国主義者が満州事変以後起こしたあの戦争、侵略の戦争である。これは正しくない。しかし侵略された国が自国を守るための戦争は、我々は正しい戦争と言ってさしつかえないと思う。一体この憲法草案に戦争一般放棄という形でなしに、我々はこれを侵略戦争の放棄、こうするのがもっと的確ではないか、この問題について我々共産党はこういうふうに主張している。……」と質問している。ちなみにこの質問に対する吉田首相の答弁はまるで今の護憲派の主張を述べているようです。詳しくは本書をお読みください。
この様に共産党は憲法制定当初は自衛戦争には賛成しており、そのことを今回の党史になって初めて記載したのでした。このことについては、私の考えでは自衛戦争には賛成することが正しいことと思いますので、その意味では共産党はより良い方向に向かっていると思います。ただ、今まで党史で伏せておきながら今になってそのことに触れるというのが、なんとも勝手でおかしい気がします。