そこに、そば屋「きょうさん庵」があるとしよう。
それも“通好み”の手打ちそば屋だ。
看板メニューは「ざるそば」。
この創業80年の老舗は、戦後間もなく、
国際チェーンを目指していた
外食産業グループ「おろしあ」に
乗っ取られそうになったが
すったもんだの結果、店を死守。
「和の道」一筋を守った。
そして1961年。
現在の「お品書き」(綱領)を定めた。
高カロリー洋食全盛期には
質素、実直な味がかえって人気となり、
自慢の「ざるそば定食」目当てに
勤労者、学生らが行列を
つくったこともあった。
当時の店長にあやかり
お品書きを「みやもとメニュー」
と呼ぶ人もいた。
ところが、である。
最近はどうも客足の伸びが悪い。
何とかならんかと
この「お品書き」を
これまでに4回ほど一部改定。
特に94年の改定では
「頑固一徹では通らない世だ」と
不破店主(当時の店長)の英断で
「そば・焼肉ランチ」
「お子さまそばセット」
など一般メニューを載せ、
玄関先には
「おろしあ・グループの倒産は
歴史的巨悪の解体!」
との張り紙も出した。
しかし。腐心した割には
客の入りは今ひとつだった。
そして2003年。
新聞、雑誌を見ると
何と、
「そば屋からパスタ店に大変身?」
「実態はすでにパスタ」
「店長は、そば屋存続を強調」
などのグルメ見出しが踊っている。
6月21日。私はできたばかりの
お品書きを取り寄せた。
そこには、確かに
「今後もそば一筋」(共産主義へ)と
書いてあることは、書いてある。
確かに店舗は白壁、のれんは藍染めだ。
どころが、だ。
メニューを見て我が目を疑った。
「おかめそば、ペペロンチーノ風」
「かるぼなーらそば(みそ味)」
「ズッキーニ入り天ざる ベスカトーレ風」
一体、どうなってしまったのか。
不破店主は「ソバの基本は変わらない」と説明するが、
どうも、食い合わせが悪そうだ。
まず、そば粉(革命)がほとんど入っていない。
主要材料は、ことごとく小麦粉(改革)。
しかも、あのオリーブオイル(天皇制)や
何と、タバスコ(自衛隊)まで
「国民合意が得られるまで」使うらしい。
それでいて、昆布(安保廃棄)と
鰹(反独占資本)も使い続けるという。
これで本当に、
「そば一筋」の常連さん(党員、支持層)を
引き留められるのか。
一方で、パスタブームで舌の肥えた街の若者、
ファミリー、カップル(無党派)を呼び込めるのか。
「二兎を追う者は一兎も得ず」
という言葉がある。
共産党が今回の綱領改定で
商売繁盛と相成るのかかどうか、
私は確証が持てない。
以上、理論を知らない一無党派の
綱領改定に関する素朴な感想である。