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イラク特措〈派兵)法案が通った翌日ーー巷では

2003/7/27 長壁 満子、40代、金融

 団地のクリーン作戦ーー今日は朝から草とりである。
 いつもは、9時からなのだが、夏場は一時間繰上げて、8時から。
 同じ階の、会社員の女性に、階段下りながら聞いてみる。
 「どんどん、怖い世のなかになるわねえ。徴兵制のはじまりだもんね」
 「えっ! なんで?」
 「しらない? 自衛隊のイラク法案が、通ったでしょう」
 「ああ、それ・・でも、私等には、関係ないもの」
 「えっ! あなたの娘さん、将来看護婦さんでしょう。職業柄、真っ先に、現地にいかされるわよ」
 「ああそうか、でも、なんだか、よくわかんないまま、決まるでしょう」
 「だからこそ、わたしたちが、きちんと、反対していかないと、声をあげていかないと・・・」
 「難しいですよねえ」
 「そんなこといってるから、どんんどん、悪法がごり押しされていくんでしょ。」
 「でも、なんか、ピンとこなくてね」
 「ピンとこないようにするのが、政府のねらいでしょう。みんなが、ほんとのこと知ったら、戦争なんて、できないもの。私たちの生活も、どんどん、戦争に圧迫されていない?」
 「でも、普通、生活していると、意識できないですよね」
 「ほら、今いった飛行機をみてよ。前は、こんなのとおらなかったでしょ。それに、三万人の自殺やら、おどろおどろしい事件やら、今の世のなか、おかしくない?」
 「そうねえ、だったら、選挙でおとせばいいじゃない」
 「でもね、敵はずるがしこいから。自由党や民主党なんか、今回、テレビの映像では、派手に反対していたようだけど、前回、有事法案賛成したんですからね。忘れちゃだめよ。結局、またみんな、選挙になると、忘れて自公民にいれるんだから」
 「わたしは、大丈夫ですよ。いつも、選挙はいってるし」
 「あなた一人がいってもだめなのよ。現に、いま、戦争に  ついてピンときてなかったじゃないの、み~んなそうなのよね。戦争なんて、特別なことでなく、さりげなく、さりげなく、生活にはいりこんでくるんだから。」
 彼女には、劣化ウラン弾の被害少女の写真集をみてもらったり、有事法反対の署名をしてもらったり、したこともあるのですが。どうして、こうして、みんな、自分のことと切り離してしまうのでしょうか。高齢者も多くいて、少なくとも、私よりは、戦争を身近に知るひとはいるはずなのですが。「戦争は二度といや」とおっしゃる方も、国のなすがまま。多くの日本人ていうのは、民主主義の根幹である、基本的人権のひとつ、意義申立てという言葉も、もしかしたら、ご存知ない?
 こうした、ゆで蛙群像は、人畜無害でなくて、確実に私の子どもを、摩滅させる存在なのです。

 雨の後、草取りもはかどります。6,70代の女性たちは、「やれ、腰がいたいだの、薬がどうだの」世間話に花がさきます。日常の身の周りのことに終始。誰一人、戦争のせの字もでてきません。
 2時間弱のクリーン作戦で、「緑」はきれいに、茶色の大地になりました。草を埋める空き地の囲い(針金)に絡みついた昼顔の花も、風邪に揺れる草花たちも、根こそぎ掃討されていきます。なんでも、万が一のとき、使えるように、サラチ?にしておく決まりだそうです。せっせと、とり草をうめるための穴堀をする男たちに、わたしは、戦死者埋葬の像がだぶってきます。有事法案には、「公園」の墓地利用が明記してあるの、ご存知ですか?