「民主集中制」について思いをめぐらすうちに気になったので、有田芳生さんのウェブサイトにある「共産党」のページを再読しました。私は、有田さんを全面的に信頼している訳ではないし、彼の主張の全てに納得している訳でもありませんが、こと、「共産党」のページに関する限り、そのうちのかなりの部分が言葉足らずの私の言いたいことを代弁してくれていると感じました。この場に参加されている皆さんの多くが既に読まれているでしょうから、ここで「民主集中制」を擁護したいのなら彼への反論があってしかるべきと思います。過去の投稿でそのような反論やコメントがあったらどなたか教えて下さい。
私は、『日本共産党への手紙』を出版直後に読んで、大変勇気づけられたのを思い出します。編者の有田さんについて知ったのは、ずっと後のことですが、彼はこの本の出版が契機となって2度目の査問を受け、党を追放された訳です。ところが、有田さんによると、戦後の共産党が分裂を克服して統一を回復する過程では、『日本共産党への手紙』よりももっと徹底して、広く国民に知恵を拝借して、どうしたら共産党が国民に信頼される党に生まれ変わることができるのかを模索する企画が、当時の『アカハタ』紙上で展開されていた。その一つが「文化人から党への言葉」と題された企画で、共産党員ではない「文化人」が、共産党に対して腹蔵ない批判、提言を語るという趣旨だった。そこに記事を寄せた執筆陣のリストを見ると、実に幅広く、蒼々たるメンバーです。有田さんは「「党の統一」と再出発へ向けて、党を変えようという刷新の息吹がみなぎっていた」と書いています。
私が党員だった70年代後半は、日本共産党の躍進が続き、党勢がピークをむかえようとしていた時期でした。今ふり返ると、それまでの共産党の「躍進」は、50年代後半の「刷新の息吹」の余禄のお陰であったのかと思い至ります。その後、「新日和見主義者」査問事件に象徴される硬直化と歩調を合わせるように、党勢は衰退の一途をたどることになります。その過程で、かって真剣に共産党へ提言を寄せて下さった方々のうち、少なくない方々が失望し、共産党からは「反共勢力へ転落した」と名指しで攻撃されることになりました。こうして、ますます反共の闘士を増やすという悪循環に陥ったのではなかったでしょうか。丸山真男さんに対する批判もそうですが、古在由重さんの追放なども悲しいできごとです。
『日本共産党への手紙』を編集・出版したことで有田さんが党を追放されたと知って、そこへ「手紙」を寄せて下さった方々はどう思ったでしょう? 党は、衰退の原因を「反共攻撃の強化」のせいであると主張しますが、その種をばらまいたのは日本共産党自身であり、とりわけ、党中央の「唯我独尊」と揶揄されても仕方のないような硬直した態度にこそ本質的な原因があるように思います。有田芳生さんの中にしばしば垣間見えるある種の「歪み」のようなものも、彼自身の査問体験と無関係ではないでしょう。