アメリカで発行されているニュース雑誌『TIME』の7月28日号に、「The sky is falling」なる記事が掲載された。ここでは中国の女性が現在置かれている深刻な状況を詳細に紹介している。それによると中国の最近の改革開放路線、資本主義の急速な導入は、女性がこれまで獲得してきた権利を奪っているというのだ。例えば生産性の向上のために国営企業がリストラをおこなうとき、まず解雇されるのが女性であるという。また地方分権が進んだせいで、かえって地方の男性のボスが権力を握ることになり、女性が地位から追放されるケースが目立っているとのことである。さらにショッキングなのは、農村地域で女子が誘拐され、さらわれた子が売春施設で働かされる事件が頻発している。(北朝鮮の拉致事件を想起させる)。これには警察や地方党幹部も一枚かんでおり、誘拐を告発したり、マスコミに訴えたりした人が逆に逮捕されてしまったこともあるという。
もちろん記事の中身をそのまま信じることはできないが、昨年の党大会で選出された約200名の中央委員の内、女性はわずか5名にすぎず、これは建国以来最低の数字であること、また中国は女性の自殺率が男性を上回る唯一の国であり、18歳から34際までの女性の死亡原因のトップが自殺であることなどは、かなりの裏づけがあるといえる。
かつて毛沢東は「女性が天の半分を支える」と主張し(この記事のタイトルはここから来ている)、社会主義政権の下で、封建的な呪縛に苦しんでいた多くの女性に社会的な権利や機会が与えられ、仕事やスポーツなどの分野で多くの女性が活躍できるようになったのは事実である。そして我々がよく「社会主義の優位性」を主張するとき(今ではもう誰も言わなくなってしまったが)、かならず触れるのが「男女差別が解消された社会」ということだった気がする。しかし中国の資本主義化は、同時に社会主義のもとで保証されてきた女性の権利が奪われる状況をも生み出す作用を持つということは、我々にとっては一つの盲点であり驚きを禁じえない。
そしてこのような憂うるべき中国の状況を「市場経済をふまえての躍進の息吹を実感させる新しい発展が、たいへん印象的でした」などと称して全面的(盲目的)に賞賛しているのが、日本共産党不破志位指導部である。困難な中で懸命に闘っているこれら中国女性の目から見て、このような中国共産党への全面的賛美は一体どう映るだろうか。すでに「さざ波通信」で何人もの方が触れているように、90年代前半、日本共産党は、自民党や社会党と友好関係を持った旧社会主義国政府に対し、内政干渉であるとまで述べたことがある。もしその論理が正しいなら、中国女性から見れば日本共産党は大変な内政干渉をしていることにならないか。この記事を読んで日本共産党指導部の親中国路線の限界とその破綻を見た気がする。