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私は、このさざ波通信では、無差別テロの権力性・暴力性への原理的認識の問題以外は、具体的には議論しないつもりです。だから市民を無差別に殺傷するテロの背後にある社会構造について、たとえばテロ実行者のイデオロギー、社会的存在基盤、経済的・宗教的諸関係などを具体的に議論しようとは思いません。いや、その力はありません。しかし、＜米帝 対 （民衆の解放闘争を行っている）テロ組織＞というような、ナイーブで単純すぎる構図をイメージとしてお持ちになっている方が予想以上にいらっしゃるので、少しだけ言わせてください。
他のところでも述べたことですが、１）民衆が抑圧されているからといって、その抑圧に抵抗する方法が、市民への無差別テロしかないわけではなく、その方法を選択する組織の責任があります。２）また、無差別テロを否定する社会の変革・民衆の解放の考え方と、無差別テロを肯定する社会の変革・民衆の解放の考え方は異なります。
この一般論を具体的に考える一材料に過ぎませんが、たとえば、イラク共産党は8/29の時点で国連本部へのテロ攻撃やシーア派市民へのテロ攻撃を非難しています。
http://www.iraqcp.org/framse1/0030902icp.htm
パレスチナ人民党も、インティファーダの立場から、イスラエルのパレスチナ抑圧を引き出し、イスラエル市民の反戦活動を妨げシャロン政権を利することになる、イスラエル市民への攻撃を停止するように主張しています。
http://www.palpeople.org/2002%20English/22-6.htm
それぞ一党派の見解にすぎませんが、「絶望した民衆がテロを行っている」等の単純な図式に基づく、感情論は事実と隔絶していると思います。
確かにロシアがチェチェンで行っている非人道的行為は許せませんが、そこで無差別テロを行う組織を誰が育て上げたのでしょうか？サウジアラビアへの米軍駐留は、米国の中東支配とサウジの支配者の利害によるものですが、ではそれに反発して反米テロを始めたアルカイダへの資金は誰が出した（ている）のでしょうか？パレスチナで無差別テロを行わせている組織の、若者をテロに誘導する方法やテロに反対するパレスチナ人に彼らが行っていることの問題はどうなのでしょう。その組織の資金の50％以上を出しているとも言われるサウジアラビアの支配者たちは、その金銭をどうやって手に入れたのでしょうか？
私は陰謀論を好む者ではありませんが、そもそも無差別テロを行わせて得をするのは、いったい誰なのでしょうか？
問題なのは、具体的な事実や疑問点に目をつぶって、＜「反米」を表面的に掲げていれば民衆の味方だ＞というような、乱暴で観念的な議論が横行していることだと思います。
具体的な事実に基づく理性的な判断のない感情論は危険です。