第一部 日本の植民地支配の合理化(9月30日) 第二部 金正日の売国的屈辱外交(今回分) 第三部 日本共産党の引っ越し論
北朝鮮側にとっては、日本の植民地支配を合理的なものと認めてしまうと、自国の存在理由さえ主張できない矛盾に陥ります。
金正日の父君の金日成の対日パルチザンなるものは、単なる山賊的な犯罪行為となります。南はアメリカのかいらい政権であり、自分達こそ金日成の解放独立運動を継承した正当なる朝鮮半島の統治者だという建国神話を否定することになるのです。
90年の金丸訪朝団の「毒まんじゅう」に噛り付いた以降も、北朝鮮は、日韓基本条約の方式による国交回復には強硬に反対しておりました。
しかし、報道によれば、昨年の初めごろの日本側との接触のなかで、北朝鮮側は、どうすれば経済援助をしてくれるのかと、ほぼ全面降伏の状態だったと言います。その結果が昨年の日朝平壌宣言です。そこでは、植民地支配への補償はなし、財産権の相互放棄・経済援助という日韓基本条約と同じ形になりました。植民地支配の合理化という日本側の目標は全朝鮮半島についてほぼ実現したのです。村山発言の北朝鮮バージョンとして、一部謝罪の文言が入っただけです。
「朝鮮の北の政権は(南朝鮮に樹立された政権とは)根っこが根本的に違う。共和国政権は偉大な金日成主席によって組織展開された、革命闘争に直接参加した革命闘士を中核にして建てた国家であります。その共和国に対して、南朝鮮と同じような態度で接して、それが通用するでしょうか。」
北朝鮮の外務省巡回大使チョン・テファ氏が雑誌「世界」(02年7月号)に寄せた文章です。舌の根も乾かぬ内にとはよく言ったもので、それから三ヶ月足らずで、「通用する」はずのないものが通用したのです。一体このような、態度をどう表現すればよいでしょうか。
在日作家の金石範(キム・ソクポム)氏は、
「北が犯した拉致の罪は重い。平壌宣言の夜は眠ることができなかった」と吐露。日韓条約と同じ経済協力方式で妥協した金正日政権を「売国的屈辱外交をした」と批判。同時に「拉致報道ばかりで戦争責任に触れないマスメディア」を含めて「日本は歴史的健忘症だ」。(アサヒコム(02/10/27)
と述べています。
まさに、的を射た指摘ではないですか。とくに、金正日政権の「売国的屈辱外交」のくだりは注目したい。北朝鮮にも金氏と同じ思いで、売国的屈辱外交を批判している人々がいるに違いありません。本当は、そのような人たちが自らの力で現政権を打倒して、まっとうな政府を作り、日朝交渉は改めて仕切り直しでやるというのが最善です。大体、あの拉致のような国家的犯罪を認めてしまえば、外交交渉は猛烈に不利になります。通常の国であれば、政権交代をして、外交交渉に臨むはずです。それでなければ、とても国益など守れません。
かつて、日中国交回復時において、中国は、賠償を放棄してまで、日本に二つの中国を絶対に認めさせませんでした。これが国のあるべき姿ではないでしょうか。
ゴルバチョフは西ドイツからの経済援助の見返りとして、西ドイツによる東ドイツ併合を容認しました。その結果は、ソ連邦の崩壊、そして、彼自身の失脚へと繋がりました。しかし、そのゴルバチョフですら、小沢自民党幹事長(当時)が画策した北方領土の買収工作には乗りませんでした。それに乗ったら、彼の失脚はもっと早まったでしょう。
外交関係、特にお金が絡む問題では、筋を通すことは重要です。窮してお金を受け取ると身の破滅が待っています。歴史の教訓からすれば、金正日は失脚しても可笑しくありません。アメリカの圧力のもととは言え、同様な売国的韓日基本条約を結んだ朴と同じ運命が待っているかも知れません。皮肉なことに、拉致問題のために、経済援助の話が進まないことが、彼を延命させることになるでしょう。
とても実現は無理としても、日朝交渉のあるべき姿を描いてみましょう。先ず、売国的な金正日が退場することです。新しい北の政権は韓国との連帯を図りつつ、日本に対しては正面切って植民地支配の補償を要求します。これは恐らく難航するでしょう。しかし、世界には過去の植民地支配によって被害を受け、満足に補償などされてない国が沢山ありますから、かならず支持は集ります。それで困るのは、日本の現在の支配層と退場させられる金正日一派だけです。