私の考えは、がんばれない共産党員さんと、共通することが多いと思っています。
しかし「北朝鮮という国家とどう付き合うか」という点において、大きく違っているように思います。
私は、がんばれない共産党員さんに、どうしても御質問したいことがあります。
「金正日政権を、経済制裁や場合によっては軍事力によって、打倒するべきだ」という主張には、賛成でしょうか。
私自身は、この主張には反対しています。
まず第一にこの方法では、悪政やテロ行為の責任者以外に、大きな犠牲を生んでしまうからです。
「金正日はもっと沢山の餓死者や粛清の犠牲を出している」という意見がありますけども。
しかし金正日が殺す人間と、経済制裁によって死んでしまう人間とは、必ずしも同一人物ではない事は、わかってもらえると思います。
それは、両者の死者数のバランスをとったからと言っても、死に追いやる行為が正当化されることではない、ということを意味しているのだと思います。
「この国の政権はもはや正常な権力ではない」という言葉は、その通りだと思います。
しかし私は、だからこそ国交を結ぶべきだと考えています。
危険な国は、孤立すればするほど、その危険さを増すと考えているからです。
私は前から考えていたのですが、独裁国家が独裁国家でいられる条件とは、「情報鎖国」が成立していることだ、と思うのです。
独裁政権に対し、国民が民主化のパワーを突き上げるようになるためには、国民が自国のおかれている状況を、客観的に知る必要があると思います。
ですから金正日に限らず独裁者は、他国からの情報を遮断し、「我が国はこんなに素晴らしい」という宣伝を行うのでしょう。
日本においても、戦中の大本営発表などは同じ意味を持っていたと思います。
北朝鮮をまともな国家にするためには、私は中国やロシアの歩んできた道を、なぞらせる事が一番良いのではないか、と考えています。
両者共、いまだに抑圧的な政治を行っているとは思いますが、改善への道を歩んでいると思います。
戻りたくとも戻れない、民主化への不可逆の道を歩んでいると、私には思えます。
例えば中国は、文化大革命のようなことが、再び出来ない体制になっていると思います。
それは経済の自由化によってもたらされたと、私は考えています。
経済の自由化によって、外国からの情報も自国からの情報も、国境を越えて行き来するような状況が生まれた、とは言えないでしょうか。
これが独裁の成立する条件、「情報鎖国」を崩してきているのだと思います。
私は北朝鮮に対しても、この方法論で対処するべきだと考えているのです。
がんばれない共産党員さんの
日本に帰りたい日本人妻(夫)を即座に返せ。
日本に帰りたい在日帰国者をすぐ帰せ。
拉致被害者とその家族をすぐ返せ
政治犯強制収用所を解体せよ
という主張は、全く正しいと思います。
しかしそれらが「金正日政権を打倒せよ」という主張に収束してしまうと、私はまずいと考えています。
それは理由の第二になりますが、行きつく先に何がもたらされるかを考えた時、私は「戦争」という2文字が、どうしても頭に浮かんでしまうからです。
以前にも書きましたが、経済的圧力をかけたからといって、金正日は「拉致は私がやった」とは言わないでしょうし、拉致被害者全員を帰す事はないでしょう。
身代金誘拐のような、人質を帰す事を前提にしてないケースなので、全員が生かされている可能性が極めて低いからです。
拉致の全容を明かし、責任を認めるということは、金正日にとって破滅を意味している、と思います。
ですから「拉致被害者を全員帰国させるまで圧力をかける」ということは、「金正日政権を倒す」という領域まで踏み込んでいる、と思います。
そこまで踏み込んでしまった場合、本当に戦争になってしまうのではないか、という危惧が私にはあります。
やぶれかぶれになった金正日が、拉致被害者や政治犯を殺して証拠隠滅を図るのではないか、という危惧もありますが…
しかし私の方法論だと、北朝鮮がまともな国になるまでには、長い時間を見込まねばならないでしょう。
拉致されて生存している日本人が、生きている間に全員帰れる可能性は、かなり低いと言わざるを得ません。
その点では、「見殺し」と言われてもしようがないと思っています。
ただ、党員でもない私の考えと、共産党の考えが、同じかどうかは分かりませんけども。
「拉致を許さない」という世論は、むろんのこと必要です。
しかし「金正日政権を倒せ」という世論はどうなのか、私は疑問に思います。
がんばれない共産党員さんの、金正日政権への対処の基本的な考え方を、伺いたい次第です。