拝啓
晩秋の朝は肌寒く今朝から石油ストーブをつけました。投票の前日君から電話で共産党に入れてほしいといっていましたが、私は断りました。それで気を悪くしているんじゃないかと思い、40年の友人を失いたくないので手紙を差し上げる次第です。
君はこの選挙に敗れれば憲法が改正されるんだよといっていたのですが、そのことは百も承知です。しかし今度の綱領改定案を読むともう日本共産党とは名ばかりで実体がなくなったと思いました。
その中には労働者と言う文字は1ヶ所しかありません。天皇制容認、自衛隊容認、安保条約凍結。これが共産主義者の党といえるのですか。革命と言う目標はどこに消えたのですか。民主主義革命、笑わせてはいけないよ。封建制の制約からブルジョアジーが解放されるための革命、つまりブルジョア革命を民主主義革命と言うのですがそのようなものは明治維新で終わっているよ。
ルールなき資本をルールあるものにする。資本にルールなんかないでしょう。資本主義とは弱肉強食の世界でしょう。私はこの社会の改良を求めてなんかいないのです。ブルジョアジーを打倒しプロレタリアートにこの国を支配させ、それを経て共産主義社会を到来させたいのです。
今何よりも重大な問題は戦争と平和の問題です。共産主義者は帝国主義打倒のために戦いの先頭に立たねばならない。ユーゴ、からアフガン、そしてイラクへ、次には朝鮮へと帝国主義の侵略戦争は世界に広がってゆきます。あるいは世界戦争の入り口に入ったのではないかと僕は考えています。
一体イラク戦争の開戦から今日まで日本共産党は何をしていたのですか。開戦が近づくににつれ僕は非常にあせりました。開戦と聞いて僕は矢も立てもたまらずアメリカxx館にいったんですよ。そこにはすでに300人ほどの人々がつめかけ抗議の声を張り上げていたのでしたよ。しかし、言っちゃ悪いが共産党はいなかった。世界で2000万人もの人々が「イラク戦争反対」、「NO WAR」と叫んでいるときに日本共産党は評論を書いていたのかね。君はデモに行ったというけれど僕が問題にしているのはそんなことじゃないのだ。党中央は何をしていたのか。全党を挙げて反対しなければならないときに、そうすれば何十万の人々が立ち上がるというこんなときに臆病風が吹いたのか。何をしていたんですか。
そして今日まで、自衛隊がイラクに派兵されるとか有事法案が可決されるとか、それに対してどうせ多勢に無勢負けるしかない国会で反対投票をして、院外闘争はまったくしない。何ですかこれは。アリバイを作っているだけでしょう。
これを民主主義というならば、僕はどぶに蹴飛ばしたいよ。君達は選挙のためだけにこき使われているだけでしょう。君だって35年以上共産党員でしょう。マルクスもレーニンも少しは読んでいるでしょう。こんなやり方で社会主義がくるとどこに教えているのですか。選挙によって社会主義社会ができるなんてそいつは幻想ですよ。選挙結果は惨憺たるものでした。どうでもいいじゃありませんか。共産党を本当の党として再建してくれ。
でなければ革命は直接、労働者が人民とともにもたらすしかないね。前衛不在のままで。
議会主義にしがみついて選挙でたった9議席しか取れないで、一体いつになったら労働者の天下がくるのでしょう。
革命は永遠のかなたに消え去って、
街にはブルーテントが点在し
冬がくるというのに
失業者たちがうつろな目で歩いている
労働者達はリストラにおびえている
そして戦争がやってきた
それなのに
街に
赤旗
一本
はためかず
結局、こんな手紙になりました。付き合えるか。
お元気で,再見。 敬具
天邪鬼