イラクでの治安の悪化はますます深刻となり、日本人外交官とイラク人運転手が銃殺されるという
事態にいたっております。そんな折、共産党10中総で総選挙の総括とともに「イラクへの自衛隊派
兵ーこの歴史的暴挙をくいとめる行動に立ち上がろう」という国民へのアピールが決まりました。
「イラク自衛隊派兵に反対」の一点での大同団結の意義を疑うつもりはありません。
ただし、それが米英軍らによるイラク侵略の容認の立場か、米英軍の即時撤退を求めるかによっ
て、アピールを伝えられた側の判断は異なるはずです。最も重要な点は、国連に事態の解決能力があ
るとみるのか、それとも国連安保理では米英が常任理事国となっており国連による枠組みづくりその
ものに多大な困難と時間をともなうことを認識するのか、それによっても判断は異なります。
その点で、11.25の衆議院予算委員会での共産党赤嶺議員の主張「国連の枠組みができるまでは米
英軍が治安維持の責任を負うべし」という質問が、実は上記のアピールで決定的に追認されてしまい
ました。すなわち、アピールの最も主要な部分には「国連中心の枠組みによる人道復興支援にきりか
えること、その枠組みのもとでイラク国民もすみやかに主権を返還し、米英軍を撤退させることーこ
のことこそ道理ある解決の道筋です」と書かれています。
イラクの復興支援は、①なぜ国連の枠組み(米英が決定的な権限を握る)でなければならないの
か、他の選択肢、例えば、②イラク人自身による立て直し、②アラブ連盟による再建、③独仏露中印
などの米英派兵に不同意な諸国の仲介による国際的な支援ではだめなのか、一切説明がされておりま
せん。さらにどの選択肢でも、米英軍の駐留を容認したままでは発効しないという点が最も重要なの
ではないでしょうか。
同党赤嶺氏の奇怪な国会質問および、2日後の同党穀田国対委員長の「国連の枠組みづくりが重
要」「米英軍の撤退は国際的な問題となっていないという赤嶺発言は誤り」という釈明は、単に共産
党の本音を早くはっきり言い過ぎた、というレベルのものと解されます。そして同党第10回中央委員
会総会は全会一致で赤嶺質問を追認した、というわけです。これは、参議院選挙での挽回のため、党
利党略もくてきでイラクの悲劇を使うという、共産党の誤った情勢認識と思えてなりません。
くりかえしますが、私は「イラクへの自衛隊派兵には断固反対」という一致点で小泉政権や他の政
党に呼びかけることは賛成です。しかし、どうして反対なのか、と、人びとに質問された時、赤嶺氏
の国会質問のような理屈で答えることは私にはできません。皆様のお考えをうかがいたくおもいま
す。